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三、変わったこと
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緑色の草木をかき分けてかき分けていくと、大きく開けた所に出る。
そこにあるのは、ぼろぼろの神社。ずいぶん前から誰もこないせいで、こうなっちゃったらしい。
神社につづく石の階段も、木の葉と土に埋もれてしまっている。
その横に、木でできた小さな家がある。私としろちゃんの家だ。
しろちゃんはその家の前で、丸太を半分に切っていた。白い刀がきらきらと光って、丸太をさくさくっと切ってしまう。
「しろちゃーん、しろちゃーん」
私が駆け寄ると、しろちゃんは手を止めた。
「見てこれ、このお花、きれい!」
私はしろちゃんに、山の中で見つけた桃色より濃い色をした花を見せた。
「それはアマクサだな」
「あまくさ?」
「根が薬の材料として使われる。家に『薬』っていう本があるだろ」
「読んだよ!」
「お前はなんでも読むな」
しろちゃんに誉められた。にへらと笑う。しろちゃんはあきれたように笑った。
「そうやって知識を深めていきゃいい。百聞は一見に如かずだ」
しろちゃんは私の頭を撫でた。その手が、そっと左目のそばに触れられたのを感じる。
しろちゃんの優しさを感じて、私は笑顔を浮かべる。両の目でばっちりと、しろちゃんを見る。
「大丈夫だよ、しろちゃん。もう全然痛くないよ」
「……そっか」
しろちゃんはそっと手を離した。
▽
確かにあの時左目を潰されたと思っていた。だけどあの後目が覚めると、まるでそんなことは無かったかのように、私の左目は治っていた。
「しろちゃん、何かした?」
そう聞くと、しろちゃんは私の目をじっと見た。
「……何も」
私はその返事を受け止めることにした。そして日常に戻っていった。
▽
ただ、ひとつ、戻れていないこともある。
「俺はふもとに行ってくるから、大人しく待っていろよ」
そのしろちゃんの言葉に、私は体を強ばらせた。左目がひどく痛み出し、嫌な汗が流れる。
しろちゃんの袖を強くつかんだ。
「だめ! しろちゃん! 殺されちゃう!」
山のふもとに行く、それはつまり、人の目につく所に行くということだ。
私はあれ以来、人をひどく恐れるようになった。思い出すだけで左目が痛くなって、体の震えが止まらなくなる。
私に向けられた言葉が、いまだに私にぶつけられるようで、すごくすごく、怖い。
しろちゃんがあんな目に遭うのは嫌だ。私には、しろちゃんしかいないのだから。
しろちゃんは私をじっと見た。そして安心させるように、私の頭に手を置く。
「俺は大丈夫だ。すぐ帰る」
さっきまで感じていた、体の震えや目の痛みがなくなった。
私は小さくうなずいた。しろちゃんは戸を開け、外へ出て行った。
そこにあるのは、ぼろぼろの神社。ずいぶん前から誰もこないせいで、こうなっちゃったらしい。
神社につづく石の階段も、木の葉と土に埋もれてしまっている。
その横に、木でできた小さな家がある。私としろちゃんの家だ。
しろちゃんはその家の前で、丸太を半分に切っていた。白い刀がきらきらと光って、丸太をさくさくっと切ってしまう。
「しろちゃーん、しろちゃーん」
私が駆け寄ると、しろちゃんは手を止めた。
「見てこれ、このお花、きれい!」
私はしろちゃんに、山の中で見つけた桃色より濃い色をした花を見せた。
「それはアマクサだな」
「あまくさ?」
「根が薬の材料として使われる。家に『薬』っていう本があるだろ」
「読んだよ!」
「お前はなんでも読むな」
しろちゃんに誉められた。にへらと笑う。しろちゃんはあきれたように笑った。
「そうやって知識を深めていきゃいい。百聞は一見に如かずだ」
しろちゃんは私の頭を撫でた。その手が、そっと左目のそばに触れられたのを感じる。
しろちゃんの優しさを感じて、私は笑顔を浮かべる。両の目でばっちりと、しろちゃんを見る。
「大丈夫だよ、しろちゃん。もう全然痛くないよ」
「……そっか」
しろちゃんはそっと手を離した。
▽
確かにあの時左目を潰されたと思っていた。だけどあの後目が覚めると、まるでそんなことは無かったかのように、私の左目は治っていた。
「しろちゃん、何かした?」
そう聞くと、しろちゃんは私の目をじっと見た。
「……何も」
私はその返事を受け止めることにした。そして日常に戻っていった。
▽
ただ、ひとつ、戻れていないこともある。
「俺はふもとに行ってくるから、大人しく待っていろよ」
そのしろちゃんの言葉に、私は体を強ばらせた。左目がひどく痛み出し、嫌な汗が流れる。
しろちゃんの袖を強くつかんだ。
「だめ! しろちゃん! 殺されちゃう!」
山のふもとに行く、それはつまり、人の目につく所に行くということだ。
私はあれ以来、人をひどく恐れるようになった。思い出すだけで左目が痛くなって、体の震えが止まらなくなる。
私に向けられた言葉が、いまだに私にぶつけられるようで、すごくすごく、怖い。
しろちゃんがあんな目に遭うのは嫌だ。私には、しろちゃんしかいないのだから。
しろちゃんは私をじっと見た。そして安心させるように、私の頭に手を置く。
「俺は大丈夫だ。すぐ帰る」
さっきまで感じていた、体の震えや目の痛みがなくなった。
私は小さくうなずいた。しろちゃんは戸を開け、外へ出て行った。
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