紅葉かつ散る

月並

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十四、帰郷

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 お付きの人をひとり連れていくことを条件に、お兄ちゃんは里帰りを許可してくれた。5日後に出発すると決める。
 小林君にもそれを伝えた。小林君はそれまでに、母親からの許しをもらうんだとはりきっていた。





 出発当日。
 家の前で、この旅の付き人となった護衛兼案内担当の五十嵐いがらしさんと、小林君を待った。
 まだ朝も早い。そろそろ冬の足音が聞こえてきそうなこの時期は、底冷えのする寒さを感じる。

「お待たせ!」

 そんな寒さも飛んでしまうような朗らかな笑顔で、小林君がやって来た。

「お母さんは説得できたの?」
「うん、まあね」

 小林君は苦笑いを浮かべた。何か引っかかるものがあったけど、気のせいだと思うことにした。





 小林君の体調を考慮して、時々駕篭を使いつつ私たちは歩いた。


 14日の後、私たちは、目的の場所に着いた。しろちゃんと私が暮らしていた山。
 久しぶりに、足を踏み入れる。

 赤や茶色の草木を掻き分けて掻き分けていくと、大きく開けた所に出る。
 そこにあるのは、ぼろぼろの神社。ずいぶん前から誰もこないせいで、こうなっちゃったらしい。
 神社につづく石の階段も、木の葉と土に埋もれてしまっている。

 その横に、木でできた小さな家がある。はずだった。

「……何にも、ない」

 家がなくなっていた。しろちゃんの遺体も、血も、そこで私としろちゃんが暮らしていた跡も、何もかもがなくなっている。
 呆然と立ち尽くす私を、小林君が心配そうに見る。

「ふもとの人が片付けたんじゃない?」
「それは、ないよ。だって、ここは、しろちゃんと私と、お兄ちゃんしか知らないもの」

 家が自然にきれいさっぱりなくなる、なんてこともない。
 ならば、答えはひとつだ。

「小林君が言った通りだ。しろちゃんは、生きている。私とお兄ちゃんが山を下りた後、家を片づけたんだ」

 冷たい風がすり抜けていった。

「探そう、田辺さん。白鬼を」

 小林君の提案に、私は目を見張る。

「白鬼は、綱吉様の頃からこの山にずっといるんだって書いてあった。何か理由があってこの山にずっと住んでいるのなら、まだいるかもしれない」

 それを聞いた瞬間、私はその場を飛び出した。

「しろちゃん! しろちゃんどこ!? しろちゃん!」

 赤や茶を掻き分けながら、私は必死にしろちゃんを探し求めた。
 葉や枝が、頬や手に当たって痛い。お兄ちゃんに買ってもらった着物や草履は、走るのに邪魔だった。

 いつのまにか、裸足で土を踏みしめて走っていた。
 葉っぱに付いていた水が手を濡らす。足は、泥で汚くなった。それでも私は走った。
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