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本編

方針決めた

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 晩のディナーもスルー。そのまま三日間、療養と称してゴロゴロした。
 腹に入るのが昼過ぎの軽食だけだと物足りなくはあるが、あの牢獄でのひもじさから考えれば十分恵まれてる。

 引きこもり中、家族は誰一人として見舞いには来なかった。様子を伺う素振りも無さそうだ。
(仮病ってバレてるってより、わたしに興味ないんだろね)
 好都合だ。
 夢で見た事を参考に、今後の自分の身の振り方を考える。

 王太子との婚約は成った。
 実情は、王権の確立のために後ろ盾としての侯爵家を必要としてる、王太子側の都合での誓約だ。

 実は中立派ながら、正統王家を重要視していない王弟派に近しいフェアネス侯爵は、国王からの要請に娘を出すのを惜しみ、わたしを指名したのだ。


 そうだった、わたしは正確には、ここの子じゃなかったんだ。

 フェアネス侯ロジェールは、死別した先妻との間に二人の男子、のちに過去の知り合いであるわたしの実母と再婚した。
 実母は人格破綻の屑伯爵と婚姻させられていたが、逃げ出して侯爵家に保護され、侯爵の尽力で伯爵と縁切りが出来た。

 しばらくして、わたしが誕生した。


 最初は侯爵家の長女として愛されていたが、3年後に男子と女子の双子が誕生し、両親の愛情はそちらのみに注がれるようになった。

(まぁつまりは、わたしは侯爵ではなく伯爵の子だったわけね)

 フェアネス家の中は、わたし以外の家族仲は睦まじく、領民の評判も高い理想的な優良貴族だ。
 夢で知った内情だけど、今までのわたしのフェアネス家の中での扱いを思い出しても、物凄く筋が通ってる。


 王と王太子は侯爵家を引き摺り込みたいが、侯爵家は巻き込まれたくない。
 わたしなら、いつでも切り捨てられる。

 それに気づかず王太子に縋りついてしまったわたしの考えの無さが、最終的には侯爵家の怒りを買ったわけね。納得。

 その上で、あの男爵令嬢。大貴族に対抗する新興勢力として伸びてきた商工業を主力にした新参で、要は王太子は、後ろ盾をこちらからあちらに切り替えた。
 王太子にとってみれば、頼りにならぬと判断した侯爵家の役立たず令嬢が、存在自体邪魔になっても当然だろう。


 ならわたしがすべきは、穏便な婚約解消。しかし何ら瑕疵の無い今の状態では、王家は侯爵家を手放さない。
 時期がくるまで保留し、男爵派が台頭してきたタイミングで引き継ぎをする。

 それには国家機密に関わる仕事をしてはいけない。幽閉されるなんてまっぴらだ。
 王妃教育にも時間をとられたくない。
 見込みのない凡人としてふるまおう。

(変に認められたくて頑張って擦り減るなんて、馬鹿のする事だわね)
 夢の内容で混乱してた思考が、三日ゴロゴロしてなんとか整理がついてきた。さぁ、ディナーに行こう。





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