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終章

襲撃

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 気づいた時には、気配に囲まれていた。


 そろそろプレ晩餐会の宴もたけなわなはずだ。あちらが盛り上がってるタイミングで、こちらに人間が集まっている…。

 これは何事か?と、警戒ビンビンで息を殺す。

 伝わってくるピリピリとした空気感は、晩餐会の出し物で緊張している楽団、なんていう生優しいものでもなさそうだ。こいつら一体、何者たちだ…?

 晩餐会会場を襲撃する曲者か?いや、会場入り口から離れたこんな場所に、十数人?の気配が固まってたむろうのはおかしい。襲撃者が隠れて待機するような位置ではない。


 会場まで知らせに行くべきか?少なくとも警備の衛士に伝えておくべきだろう。

(フィーユたちが心配だ……)
 何かに巻き込まれたら、たまったもんじゃない。この日このタイミングでは、国王も王妃も王太子も、まとまって一箇所に居る。まさか王弟一派が、しょーもない事を企んだとか無いよね?

 なんて、壁の向こう側の様子を伺っていたら、


(いや、この部屋を包囲している…?)


 一気に、心拍数が上がる。

 サササッと息を殺して移動する気配は、玄人ではなくとも、訓練された者たちの動きだ。
 それが、わたしひとりで待機してる客間の前後を、囲むように展開している。

 宮殿で、大人数にそんな事をさせられる権力者なんて、限られている。


(わたしが貴族位の令嬢だから、付き人、使用人の控え室でなく応接の間にわざわざ通してくれて『気が利くじゃん♪』なんて思ってたけど、)
 わたしを隔離するのが目的だったのか。
 そんな事する理由はなんだろか?誰かに何かを疑われてる?


 わたしはフィーユの付き添いという名目だ。
 なら、フィーユやアンバー、エルサの身も案じられる。

 フィーユが何か良からぬ事を企んで王太子に接近しようとしているのではないか?という、入学初期からの疑惑で警戒していたまんま、王太子派はこの日を迎えたというのだろうか?
 その一味と見做された?
 どれが正解か分からない思考に迷い、集中力がまとまらない。シンプルに、今なにをすべきだろうか?


 三人が心配だ。けれどもまずは、自分の身の安全確保だ。

 どんな容疑をかけられたのか、それとも私怨か、なんなら口封じとかも考えられる。なににせよ、包囲を抜けて状況把握と対策を練れる態勢を整えなければならない。
 ━━わざわざこんなめでたき日に捕り物をやろうなんて、どうかしてる。


 わたしはラフネス伯爵家令嬢として、護身術のたぐいは一通り学んできている。だけど実用に耐えうるほどのもんでなし、どうにかして逃げの一択するしかない。複数人の男性、ましてや訓練された衛士などに敵うわけ無いのだ。
 スキを窺い、あるいはこちらから奇襲を仕掛けてでも、脱出を計る。


(入り口の扉を開けられたら、即座に反撃して全速力で逃げてやるぞっ!)
 ヒールの低いドレスシューズにしてきてて良かった。近くの椅子を手元に引き寄せて、身構える。

 と、部屋の外から窓を叩かれた。


 ん?と、ついそっちに注意を引きつけられた瞬間、
(しまった…っ!)
 部屋の入り口から人が雪崩れ込んできて、あっという間に腕を掴まれ、引きずり倒され、複数の男の手で床に押さえつけられた━━━━。









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