自分が読みたいタイプの追放悪役令嬢のやり直しモノ

じょるでぃ

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終章

御披露目

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 プレ晩餐会は閉会し、内部生上位者たちによるサロン社交に移行していた。

 選ばれた人間しか入れないそのサロンへ、わたしは丁重に案内される。



(っていうか、まるっきり連行みたいじゃん……)

 前後左右を、トップクラスの地位の貴族子女に挟まれてる。一体どういう顔をしてたらいいのか、分からない。

 先導はネイト執政官と王太子の側近レジオン・ド・ヌール卿。ついでレグノ王太子殿下の少し後ろにわたしが並び、残りの子女たちがその後につづく。


 わたしは引き攣った愛想笑いを貼り付け、すれ違う宮殿の執事たちに最敬礼で見送られた。
 まるで悪夢での時の末路と似たシチュエーションだ。
 妙な気分になって、顔をしかめてしまう。



 サロンの専用室は、晩餐会会場を見下ろす桟敷席になっていて、豪華な調度品が揃えられている。
 フィーユたちはそのサロン室の中心で、幾人かのご令嬢や貴公子たちと談笑をしていた。酷いことされたような様子は無さそうなので、ホッとする。



 席を外していた王太子殿下や侯爵令嬢が戻ってきたのを見つけ、彼女たちの表情がパッと明るく笑顔になった。直後、わたしに気づき、不信感に表情が曇る。

 アハッ、アハハッ……、と強張った笑いを向けたわたしに、どういう事?どういう事??と戸惑うフィーユやアンバー、エルサたち。
 控え室でのんべんだらりと待機してたはずのわたしが、王太子殿下や執政官、衛士たちに囲まれて連れてこられたのだ。
(大丈夫?!何があったの!?)ってなって当然でしょ。


 そのフィーユたちの横に、無表情で紅茶を啜るコーニー・チージー嬢。

(コイツかぁ……)


 フィーユの監視役に王太子派の手の者から付けられていた彼女が、わたしの存在をチクッたんだろう。でもなけりゃ、彼女の身分でサロンに入れてるわけがない。
 余計な事しやがって……。




「ずっと長い旅に出られていた敬愛する聖女アンネセサリー様が、我々のもとに還ってきて下さいました!」
 リヴァル侯爵令嬢がサロンにいる令嬢令息たちに向けて、正体不明のわたしを大々的に紹介してしまう。

 サロンの先輩方などから、「え、誰?」とか「おお、本当か!」「彼女が噂の……っ!」などと、驚きと感嘆の声が洩れ、侯爵令嬢や伯爵令嬢たちは感動に打ち震えてる。


「この素晴らしい再会を、先輩方にも祝っていただきたい。ここから我が王家は、繁栄を約束されたのだ!」
 言葉を引き継ぎ、レグノ王太子殿下がグラスを掲げ、高らかに宣言した。

(おいおいおい、何言ってんだよ王太子っ!)
 わたしの了承もなく勝手に話をすすめるな!
 というか聖女(笑)って何だよ!わたしは『サリーラフネス』だっつってんでしょっ!!

 どんどんと外濠を埋められ、立場が窮地へと堕とされていって、冷や汗が背中にべったりと浮きあがった。


「ちょっ…、ちょっとサリーっ!どういう事?!大丈夫!?」
 同じく事態を飲み込めてないアンバーが、囚われのわたしに事情を問いただしてくる。
 ひーんっ、アンバー、エルサ、フィーユ!助けて~っ!わたしも正直、ついていけてないのよ~!


「王太子殿下!非礼ながら御注進申し上げます!サリー嬢はわたしたちと同じ地方貴族の娘です!何か誤解があるようですが、彼女に変な義務を課さないでください!」
 誰よりも貞淑なエルサが、わたしのために声を上げてくれた。
 下手したら不敬で咎められかねない。けど、とても黙ってはいられないって顔で、わたしを守ろうとしてくれる。持つべきは友達だ。嬉しい。


「いえ、それは仮のお姿です」
 コーニー・チージー嬢が一歩進み出、そのエルサの前に立ち塞がった。
「彼女こそが、フェアネス侯爵家の御息女、アンネセサリー様。そして、王国の小太陽レグノ・ロワイヨーム王太子殿下の婚約者、未来の王后陛下にあらせられます」
 左手を胸に当て、騎士の作法でわたしに最敬礼の姿勢をとる。
 うおぉぉい、手前ェ!何勝手に暴露してくれてんじゃい!!限られた空間の中とはいえ、当人に無断で個人的な秘密をバラすな!



「え、あの幻の婚約者と言われてた王太子殿下の想い人が…?」
「サリーなの??!」
 絶句するアンバーとフィーユ。

 いやいやいやいや、違う違う違う違うっ!
 慌てて否定したのに、
「そうだ、我々が恋い焦がれ、待ち望んでいた聖女だ」
 訳の分からない事を言って、王太子が周りにわたしを見せつけるように肩を抱く。つい驚きで身体が硬直してしまう。だからわたしの意志無視して話進めるなって、マジで!


「殿下、おやめください!サリーが怖がっていますっ!」
 驚いた事に、王太子の覚えを良くしなければいけない立場のフィーユが、一番感情を露わにしてわたしを王太子の手から奪い取ろうとしてくれた。
 わたしも王太子の真横に立ってるのは居心地悪過ぎる。ちょっと皆さん落ち着いて下さい!と、殿下の手を振り払って、距離を取った。代わりにすぐ、フィーユとアンバーとエルサが、わたしを守るように囲ってくれた。


「あぁもう認めます!確かにわたくしは八歳まで、とある侯爵家の育みを受けてた皆さんの幼馴染です!しかしそれも10年近くも前の話!今はラフネス伯爵家の人間です!もはや過去の自分とは一切の関わりはありません!」
 だから今更フェアネスの権勢を利用しようとしてるとしても、無理なんですって!わたしは政治的には無価値なんだって!

「というかここ何年もの間、特に何も研鑽などは積んでないので、今王太子殿下や御歴々の皆さんに褒め称えていただいたような人間にはなっていないんですよ、ホント!」
 明らかわたしに対する誤解がありそうな貴公子たちに、必死に弁明する。今更侯爵家令嬢扱いされても迷惑なだけだ。聖女?誰だよそれ。


「あなたはあなた、それだけで我々には何ものにも替え難い悦びがある。もう一度私たちの手を取り、導いて欲しい」
 王太子が優しげな声音でわたしの前に跪こうとする。手に接吻する栄誉を貰えないか?とか言い出す始末。だーかーらー、無茶言うなってばー!聞けよ、話をよ!


「アンネ様、やはり私たちを見捨てるというのですか…?」
 今度は不安気に、泣きそうな顔になってるリヴァル侯爵令嬢やラドゥジエム伯爵令嬢。情に訴えられて、「うぐ…っ」と言葉に詰まる。

「ドリーもケイティもニッキーも大好きよ?また会えたのはわたしだって嬉しい!だけど貴女たちに求められてる役目はわたしには重すぎて、ホント無理なんだってば!」
 今更王太子妃候補なんて絶対無理。必死になって言い訳を並べてると、

「そんな事ない!サリーは凄い人よ!」
「あんたはどっちの味方よっ!!」


 フィーユの裏切りに、思いっきりツッコミ入れちゃった。






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