HEAD.HUNTER

佐々木鴻

文字の大きさ
46 / 75
Trash Land

 completely impossible V

しおりを挟む
【Don't get angry.〝Capelthwaite〟】

「怒りたくもなるわ! 一体お前はこの俺になんの恨みがあるんだよ!! 此処のシステムの構築に、一体どれくらい時間と金が掛かったと思っているんだ!?」

 マイクに向かって絶叫する彼を他所に、再びキーが動く。そして画面に映し出された文字は……。

【It sympathizes】

「いらんわ、そんなモン!」

 言い放ち、別のキーボードを持ち上げてキーを弾く。システム内に〝エクスキューショナー〟が無数に排出された。
 だがそれは、人形――E・ヘッドの植え付けた〝カンサー・セル〟に呑み込まれるだけだった。

「とっととあの迷惑な野郎を連れて帰れ、A・ヘッド!」

【Do so. But I'm wondering if I should let him play a little more】

「冗談は止めてくれ。これ以上あいつに遊ばれたら、俺は真剣に転職先を考えなくてはならなくなる」

 溜息をひとつ、だがキーを打つその手を止めずに彼は言う。

 彼が――カペルスウェイトが現状で出来る手段。それは〝エクスキューショナー〟を排出し続けて少しでも〝カンサー・セル〟の侵蝕を食い止め、バックアップされていないデータを守ること。

 だがそれにも限界がある。〝エクスキューショナー〟を侵蝕した〝カンサー・セル〟は、自己増殖を繰り返して肥大化する。

 幾ら大容量の記憶媒体を搭載していても、放っておけば一秒間に50Gbも増殖するそのウイルスに対抗出来る筈もない。

【Kk】

 その文字が画面に映し出され、そして一瞬だけだがコンピューターが暴走した。

 そしてその結果、排出された〝エクスキューショナー〟は元より〝カンサー・セル〟までもが消失した。

【They are electric appliances after all. can't beat electricity】

 画面にその文字が羅列され、そしてそれは更に続いた。

【Would have played enough. About time let's go home】

 それは、その事象に戸惑っている人形――E・ヘッドに向けてのメッセージであった。

『いヤだ、ボクは帰らナい。久しぶリに外へ出られタんだ、もっとモっと遊んでイく!』

 システム内の人形――E・ヘッドが、自らの頭を掻き毟りながら激しく首を振る。

 それは、駄々を捏ねる子供のようであった。

 そして何処ともなく見詰め、

『お前は良いヨな、ずっト外に出らレていて。ボクはいツでも、なにカの中だ。ソう、決して外ニは出られナい』

 それは怨嗟のようであり、またそれ以上に、願望でもあった。

【……Each=Uisge】

 その文字が画面に表示された瞬間、人形の姿が白面のピエロに戻る。

 名を呼ばれたのだ。

 A・ヘッド――御主人様に。そしてそれは、絶対に贖えないこと。逆らえば、自分の人格が修正されてしまう。それは自分が自分でなくなるということであり、また新たなE・ヘッドを作り出すという脅迫でもある。

【Clever boy】

 電流の触手が白面のピエロ――E・ヘッドを優しく撫でる。

 それを見たカペルスウェイトは一言、

「相変わらずの子煩悩だな」

 ただのプログラムなのに。そう呟き、システムの復旧をし始め――だが、再び画面に文字が打ち出され、その手を止めた。

「そうか……時間を忘れていたよ。もうそろそろなんだよな」

 画面が数回点滅し、それが事実だと告げた。そして更に時刻が表示される。

「16.59タイムか……まぁ、システムの復旧は後にしよう」

 呟き、自分の椅子に座る。そしていつものように大股開きで仰け反ってモニターを見詰めた。

 そんな全て終わったとばかりに余裕綽々よゆうしゃくしゃくな様に、研究員が慌てて駆け寄る。

「そんなことをしていると、ウイルスが増殖してしまいます! なんとかして下さい!!」

 悲鳴じみた絶叫を上げる研究員を鬱陶しげに一瞥し、カペルスウェイトはシステム内を映し出しているモニターを指差す。声を出すのも面倒といった様子だ。

 そしてシステム内には、ウイルスは元よりその痕跡すらなかった。

「所詮ウイルスもプログラムも、電化製品なんだよ。電気がなければ作動しない」

 E・ヘッドの放ったウイルスは、A・ヘッドの〝能力〟である〝エレクトロキネシス〟によって消滅したのである。

 それが事実であっても、俄かに信じ難いのもまた事実なのだが、カペルスウェイトがそう言うのならば、自分に出来ることはなにもない。

 そう思い、自分を納得させる研究員だった。

 それでも釈然としないのは、人として当然だが。

 なにしろ事情を話してくれないのだ。頭では解っているが、どうしても納得いかない。

「……おい、一体どういうことだよ!?」

 そんなことを考えて勝手に悩んでいる研究員だったが、カペルスウェイトが突然大声を上げたために思考を中断した。これほど慌てている彼を、今まで見たことがないからだ。

「ど、どうしたのですか!?」

 慌てて訊く研究員に、彼は絶望の表情を浮かべ、ただ無言でモニターを指差した。

 そしてそれを見た研究員は――

「お、おう」

 呆れを通り越して力が抜けてしまった。

『本日は予定を変更しまして、特別番組をお送りします――』

 モニターから、そんな声が聞こえて来る。

 そう、実はカペルスウェイトもまた――

『まぁぶる物語』のファンだった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...