10番目の同級生

ジャメヴ

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一ノ瀬球児

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ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ……

「どうだ!  結構回るか!」
「そうだな!  25ぐらいかな!」
「こっちは30いかないぐらいだ!」

  至近距離であるにも関わらず、俺達は大声で会話した。パチンコ屋の店内はかなりうるさい。顔を近付け、大声で叫んで何とか聞こえる。2人ともまだ19歳だというのに、もう3年以上パチンコを打っている。元同級生の五木は騒音に慣れているようだが、俺は全く慣れていない。因みに法律的にパチンコは18歳からなのだが、2人とも元野球部でガタイが良く、顔の彫りも深いので、未成年には全く見えず、1度も入店を断られた事は無い。だからと言って18歳未満でも、パチンコを打って良いという理由にはならないのだが……。
   騒音対策の為、俺は百均の耳栓を購入して着けていた。たまに、パチンコ玉を耳に入れている人を見かけるが隙間だらけで全く防音効果は無い筈だ。プラセボ効果を狙っているのだろうか?
  プラセボ効果とは、実際には効果が無い事でも本人が信じていれば少しだけ効果が出るという一種の暗示の事だ。
  耳栓をしたら会話が出来ないじゃないかと勘違いする人がいるが、そんな事は全く無い。耳栓をしても全く聞こえなくなるのでは無く、全ての音を小さくする効果がある。その為、うるさい場所では耳栓をしている方が、会話はしやすい。
  パチンコ店の騒音対策は耳栓で対応出来たとして、目に入るフラッシュも相当気持ち悪い。昔、ポケモンショックとかいう光過敏性発作が話題になったが、発作にならないかと心配になるぐらいだ。
  俺と五木が会話した、25や30という数字は、1,000円で何回、中央のチューリップと言われるチェッカーに入るかという確認だ。この回数が多い程、勝つ確率が上がる。
  俺達が打っているパチンコ店『オリオン』は人気店で空席がほとんど無い島ばかりだ。島というのはパチンコ用語で同じ種類の台が並んでいる列の事。何故、列を島と言うのかと言うと、現在のパチンコ店は、パチンコ玉が自動供給されているのだが、元々は、店員が手動で補充していた。その補充をしやすくする為に、6角形で台が設置されていて島のように見えていたのだ。その名残で現在も島と呼ぶ。
  昼食休憩も取らずに俺はパチンコを打ち続けた。昼食はパチンコを打ちながらだ。朝来るときにコンビニで買ったお握り一つとお茶1本だけ。五木は店内に設置された、若者向けを狙って外している喫茶コーナーでパンとコーヒーを頼んでいるようだ。美人のコーヒーレディと話をするのが目的なのだろう。
  その日も2人共、夜まで打ち続けた。パチプロと言えど毎日勝っている訳では無い。だが、今日は2人共大勝だった。
  そんな中、俺は、ある人物に「すみません」と声を掛けられた。普通の声量で話しかけてきたが、耳に触れるほどの距離だったので聞き取れた。パチンコ屋には話しかけてくる人はよくいるので特にビックリはしない。パチンコを打ちながら振り向くと、真新しいジャージ姿で髪の毛をキッチリ整えた、そこそこハンサムな中年男性だった。俺は「何でしょう?!」と大声で返答した。中年男性は再度、耳に触れる距離まで近付き話す。

「1万円お渡しするので30分程お時間良いですか?」
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