10番目の同級生

ジャメヴ

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罰ゲーム

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「えっと……あの……」
十文字は六角の方へ助けを求めるように目線を合わそうとしてくる。それに気付いた六角は慌てて目をそらす。
「万引きだな、今、警察を呼ぶからな!」
「ごめんなさい」
「こっちへ来い!」
六角の予約の話をほったらかしにして、店員は十文字を叱る。本を棚に戻し終わった二岡は、それを横目に何事もなかったかのように店を出る。十文字は二岡の方は見ない。助けてもらえる訳が無いからだ。
  店員は自分のスマホで電話を掛けた。警察ではなく、取り敢えず、店長に状況を説明する。
  十文字は泣きそうな顔で本をカバンに入れる。六角は近寄って行き、防犯カメラに口元が映らないよう注意して、本を拾ってあげる感じで十文字に囁いた。
「大丈夫。店から出ていない」
そう言って、全部の本をカバンに入れ終えると、六角は店を後にした。
  十文字は六角が言った意味を直ぐに理解できなかったようだが、少し冷静になって意味が分かった。六角は、店を出ていないから万引きにはならないという意味で言ったのだ。今から買うつもりだったという屁理屈が一応成立する。ただ、状況が状況だけに無理だろう。
  十文字は全ての本をカバンに入れ、レジ横の机に置き、反省した面持ちで待つ。
「そうですか……はい……はい……分かりました」
店員は電話を切り、言った。
「中学生みたいだし、今回は警察に言わないから、今後はこういう事をしないように!」
「すみませんでした。本戻します」
十文字は、そう言って本を戻し終わると、もう一度「すみません」と頭を下げて店を出た。
  怒られるのは仕方ないが、逃げると仕打ちが酷くなると思い、十文字は渋々、二岡の家へ向かった。
  十文字は二岡の家に着き、インターホンを押した。だが反応が無い。もう一度押す。……反応が無い……。居るのは間違い無いと十文字は思ったのだが、怒って出てこないと思い、諦めて帰った。

翌日
  十文字が教室に入ると、二岡がニヤニヤしながら声を掛けてくる。
「おい、お前の罰ゲームを考えたぞ。ちょっと来い!」
十文字が二岡に近づくと、二岡は肩に手をまわしてきて言った。
「お前、七瀬の事が好きだったよな?  告白してこい」
「えっ!」
「えっ!  じゃね~よ。今日の昼休みな」
「無理だよ、そんなの……」
「お前、罰ゲームの意味知らね~のか?  昼休みだ!  分かったな?」
「う、うん……」
そう言うと、二岡は六角の方へ次のミッションを相談しに行った。

昼休み
「七瀬さん」
「ん?  何?  十文字君」
「ちょっといいかな?」
十文字は手招きする。
「ん?」
七瀬は十文字についていく。教室から10メートルぐらい離れたところの手洗い場で、人がいない事を確認して、十文字は七瀬に告げた。
「僕と友達になって欲しいんだ」
「えっ?!  えっ?!  もう友達じゃない?」
七瀬はニッコリ微笑み話す。
「もっと仲良くしよって事?」
十文字は黙って頷いた。
「良いよ良いよ。今日一緒に帰る?」
「えっ?!  良いの?」
「良いよ。じゃあ、放課後ね」

翌日の昼休み
  二岡は、いつものように昼寝をしていた。ふと、目を覚ますと七瀬と十文字が仲良く喋っている。二岡はすっかり忘れていたのだ。しかも、何やら良い雰囲気だ。二岡は七瀬の趣味を考えられないと思うと同時に、万引き失敗の罰になっていない事に激昂した。

放課後
「ちょっと来い!」
二岡は十文字の肩に手をかけ引っ張った。
「な、何?」
十文字が抵抗するので、髪の毛を掴んで引っ張る!
「い、痛い。何?  七瀬さん待たせてるんだけど……」
「関係無い!」
 
  七瀬は十文字が全く来ないので教室などを探したが、先に帰ったと思い1人で帰った。
  その日から二岡の執拗なイジメが始まった。何故か放課後だけのイジメ……。七瀬と帰らせない為なのか、皆に見られないようにしているのか……。七瀬は不審に思ったようで、十文字に問いかけるが十文字は答えてはくれなかった。翌週になっても、十文字の様子がおかしければ、三橋に相談しようと考えていたのだが、金曜のその日を最後に十文字は学校に2度と来る事は無かった……。◆
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