10番目の同級生

ジャメヴ

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野々村の推理

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「ああ、まずそうだろう。推測の域を出ないが、六角兄弟は五木に窃盗を教唆したのではないか?  『炎のティアラ』を盗んでくれたら何千万かで買い取るなどと仄めかして。五木を選んだ理由の1つは、後ろ姿が三男信孝に似ているからだろう」
「なるほど、有り得そうですね」
「そして、六角兄弟は五木に逃走経路として、その細い路地を指定したって事だ。殺人犯逃れのアリバイを作る為に過失運転致死の罪と窃盗の罪を被ったんだろう。しかも、窃盗の方は示談にしている」
「六角信雄を押さえますか?」
「いや、もう少し証拠が揃ってからで良いだろう。大企業の社長だ、逃げやしない。あと、五木の交遊関係を調べないといけないが、続けてもう1件の犯罪に移ろう。五木と六角が同級生なら何らかの関係があるだろう」
「では、目隠し殺人の件に移ります」
小牧はホワイトボードを裏返した。
「こちらは、先程の事件で車に轢かれ亡くなった五木を偲んで、同窓会のような集まりだったようです。そこに先程の三男、六角信孝がいます」
「全くの偶然なのか、意図的で恨みがあったのか、まだ分からないな」
「そうですね。同級生達に聞き取り調査を行ったところ、五木と六角は特別仲が良い訳でも無く、悪い訳でも無く、普通だったそうです。一先ず、資料に目を通して頂けますか?」
野々村は黙って資料を読み始めた。日吉も内容は当然知っているのだが、もう1度確認する。野々村はザッと読んで質問した。
「結局、この十文字ってのは生きていたのか?」
「生きていました」
「自殺情報はデマだったのか」
「ただ、イジメにあっていたのは事実のようです。本人に確認したところ、二岡のイジメが嫌で自殺を考えたが、親に相談したところ、自殺した事にして、引っ越ししようとなったそうです。学校には自殺したと嘘のファックスだけ入れて引っ越したので、自殺の噂が流れたみたいです」
「十文字にアリバイはあるのか?」
「本人は家にいたと証言していますが、証明できるものはありません」
「なるほど。あと、二岡に金属バットで殴られた痕は無かったとあるが……」
「はい。全員の証言では、かなり大きな金属音があったとの事ですが、致命傷となった殴打痕以外に、大きな傷やタンコブ等は有りませんでした」
「二岡、または、他の人物が病院で強めの睡眠薬をもらっている履歴はあったか?」
「そちらは現在調査中です」
「では、二岡単独犯説、二岡と誰かの共犯説、外部犯と誰かの共犯説、の3通りの可能性を考えないと駄目だな」
「八重樫はどうですか?」
「確かに、八重樫が共犯者なら簡単に解決するが……。これは、そんな単純では無く、六角家の問題が関係している様な気がする」
「と、言いますと?」
「二岡が殺された理由は置いといて、六角信孝が殺されたのは、先程の『炎のティアラ』窃盗事件と関係がありそうだ」
「コスモグループ社員への聞き込み調査で気になった事があるんですが、次男信雄は三男信孝に一目置いていて、後々は幹部にしたいというような話をしていたそうなんです」
「ほほう」
「それと、もう1点気になったのは、常務に昇進した熊谷って男は昇進する為には手段を選ばない男のようで、上司を何人か退職へ追い込んでいるようです」
「なるほど。お前が言いたいのは、目隠し殺人事件が外部犯であるなら、熊谷常務が関わっているかも知れないって事が言いたいんだな?」
「可能性の1つとして考えられるってところです」
「外部犯はそれぐらいにしておいて、内部犯の可能性を考えて聞き込みをしたい。今から1人ずつ話を聞きに行くか」
「はい!」「承知しました」
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