嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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時雨永遠 2

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  子供時代の俺は、勝てないと分かると負けたものをしないようになっていった。勉強やスポーツをする機会が少なくなっていき、全ての事で、刹那との差がどんどん広がっていった。そうなると、刹那とだけの話では無くなってくる。同級生相手でも、苦手意識が出てしまい楽しめない。俺は刹那の事が嫌いという訳では無かった。性格も良いので嫌いになる理由は無い。一緒に遊びたい気持ちはあるのだけど、何をしても負けてしまうので、拒否反応が出てしまっていた。
  
◆こんな寓話がある。とある寒い日、2匹のヤマアラシがお互いの身体を寄せあって暖め合おうとしたが、近付き過ぎると自分達の針が相手に刺さってしまうので近付けず、離れると体温が伝わらず凍えてしまう。
  永遠はヤマアラシの様に刹那に近付きたい気持ちと離れたい気持ちのジレンマに悩まされていた。◆

  刹那はとにかく正義感が強い。悪人を裁く為なら自分を犠牲にする。
  刹那が小学6年生の時、イジメをしている同級生に気付き、空手をやっているにも関わらず、イジメっ子をボコボコにしたらしい。その後、先生と両親からこっぴどく叱られたみたいだけど、反省などはしないと言っていた。正しい事をしたと思っているからだろう。今後、同じ状況があっても同じ行動をとるのだと思う。しかも、先生と両親も心の底では怒っていない筈だ。被害者の両親の手前、怒っているように見せているだけだと思う。被害者は劣等生、刹那は超優等生なのだから……。
  俺達の両親も、知り合いには、出来の良い兄と出来の悪い弟と紹介しているのを噂で聞き、ショックを受けた記憶がある。

  出来の良い兄が居たから、俺の子供時代は最悪だった……。

  刹那は進学校へトップの成績で進み、俺は最低ランクの公立高校に何とか滑り込む。俺は刹那と別の高校で鬼体育教師、佐野と出会った事により状況は一変する。俺が入学した吉谷よしたに高校では、クラブに無所属であれば、柔道部顧問、佐野の力で柔道部に入部させられる。辞めることは許されない。柔道場も特別広い訳ではなく、4面しかないので、1年生は筋トレがメインだ。だけど、実力主義なので、強ければ上級生も下級生も関係無い。素人でも無理矢理対戦させられ、順位をつけられる。俺は柔道部で気付かされる。自分が意外と強いという事を。それもその筈、柔道経験者以外は、ほぼ全員が元々帰宅部なのだから。しかも、俺はそんなに筋肉質でも無かったけど、180センチを超える身長と80キロぐらいの体重があり、1年生相手に連戦連勝。入部1ヶ月もすると、成績下位の者が1人ずつ退部していく。辞める事は許されないのじゃなかったのか?  と思うだろうけど、自主的に辞める事は出来ないのに、退部を命じられると辞めたくなくても辞めなければならない。
  完全順位制なので2年生や3年生の下位の人達とも戦うようになるけど、それでも連戦連勝。無理矢理入部させられた柔道部だったのに、俺は柔道が好きになっていった。柔道が好きになると、勝ちたい気持ちが強くなり、練習や筋トレの量も多くなる。俺は相乗効果で強くなっていった。さらに、意図しないところで下半身が強化されていた。それは通学だ。高校生と言えば、朝起きられず、毎日ギリギリまで寝てしまうものだ。俺も同じで、ギリギリまで寝て、必死で学校へ行く。吉谷高校はとにかく遠い。俺の家から自転車で1時間掛かる。その上、学校は山の上にあり、競輪選手並のトレーニングになるんだ。いつも、俺は体操服で通学し、毎朝、汗だくになりながら1時間目の授業を受けるのが通例となっていた。とは言うものの、徐々に経験者とも対戦するようになるので、さすがに負け始める。しかも、今年の新入柔道部員は粒揃いだ。全国区の選手も多数いる。

◆しかし、負けても脳が勝った時の事を覚えている。先に挙げた『部分強化』の効果だ。◆
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