嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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異様なボディーガード達

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  午後3時5分前になったので、俺は部屋を出る準備をする。
ガチャ……バタン
  俺は部屋を出て、階段の上から見下ろすと、ロマンスグレーの髪の男の他に私服でマスクにサングラスの男が5人居る。全員ボディーガードかと、階段を降りて、その男達を見る。
「!!」
俺はギョッとした。

  何だコイツら!!  ボクサーか?  殴られ過ぎだろ!

  マスクとサングラス越しではあるけど、ロマンスグレーの髪の男を除く全員の顔がボコボコに腫れあがっていた。アザだらけの男が5人も揃うと、さすがに異様な光景なので、緊張の為、鼓動が速くなるのを感じた。最近試合があったのか?  今日殴られたのか?  と俺が驚いているとロマンスグレーの髪の男が話し出した。
「皆様、改めましてこんにちは」
全員が会釈をする。
「今日は王の警護にお集まり頂き、ありがとうございます。今日集まって頂いたのは、先日、王の自宅の屋敷に脅迫状が送られてきたからなんです」
「!!」
俺を含めた全員が驚いてザワザワしだした。
「イタズラだとは思いますが、今日の24時……明日の0時に王を殺すという脅迫状が届きました」
「それは警察には?」
俺は質問した。
「言っていません。警察へ連絡するなと書いてありましたので、あなた達のような屈強な警護を雇いました」
「……」

  気楽な気持ちで10万円に飛び付いて来てしまったけど、意外と厄介な仕事なのかも知れない。他のボディーガードメンバーも異常だしな。うまい話には裏があると言うのはこれか……。

「取り敢えず、王に挨拶だけしに行きましょう」
ロマンスグレーの髪の男はそう言うと、1階の王の部屋であろうドアをノックした。
コンコンコン
「失礼します」
ガチャ
  ロマンスグレーの髪の男はドアを全開にし、1歩だけ部屋に入った。部屋の中央に大きなベッドがあり、王であろう金髪の人物が向こうを向いて、布団をかぶり寝ている。ドアの近くに消臭剤が4つ置いてある。消臭剤は全部屋に4つ置かれてるのかと俺は不思議に感じた。ロマンスグレーの髪の男は深々と頭を下げ、大声で話す。
「本日、6人で警護致します!」
王であろう男は、こちらを見る事無く返事もしない。
「失礼します」
バタン
  ロマンスグレーの髪の男は深々と頭を下げ、ドアを閉めた。

  えっ?!  それだけ?!  俺達を見る事もしないのか?  大企業の元会長と下々の者達……。これが普通なのだろうか?  社会に出ていない俺には理解出来ない。

  全員が玄関へ戻ると再びロマンスグレーの髪の男が話し出す。
「すみません、王は今日、少し体調が悪いみたいで……」
 なるほど、そういう理由もあったのかと俺は納得した。
「それでは部屋順に並んで頂けますか」
全員が2列に並ぶ。ロマンスグレーの髪の男を見て右側の先頭に俺は並んだ。
「では、このペアで3時から6時、このペアで6時から9時、このペアで9時から12時の警護をお願いします」
階段から近い順に左右の部屋の人がペアになるようだ。俺の部屋は3番目なので、9時から12時担当に決まった。
「このパイプ椅子に座って王の部屋の入り口を監視して頂けますか。ずっと座っておく必要はありません。あくまでも位置の目安です」
「すみません、質問良いですか?」
俺は軽く手を上げ、ロマンスグレーの髪の男に話した。
「何でしょう?」
「王さんの部屋の窓からは侵入されないんですか?」
「ああ、今日は念の為に防弾シャッターを下ろしています。侵入経路はその扉だけです」
「なるほど、分かりました」
「あと、一応、犯行予告時刻となる、日の変わる午後11時55分から0時5分までは全員で警護をお願いします」
「分かりました」
俺しか返事をしていないので、俺は少し心配になり、全員をチラッと見ると、皆軽く頷いている。
「私は基本そちらの部屋に居ますので、何か問題があれば呼んでください。では、宜しくお願いします」
そう言うと、ロマンスグレーの髪の男は王の部屋の、向かって右隣の部屋に入った。
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