嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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刹那対小山

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  全国ベストエイトの選手と普通以下の選手。どう考えても相手にならない。その上、小山は60キロ級、刹那は75キロ級。力差は歴然だ。刹那達のしている伝統派空手は基本的には寸止め。多少は当たっても良いが、強く当たり過ぎると反則になる。さらに危険部位への攻撃は禁止されている。金的だけでなく、細かい事を言えば間接への攻撃も禁止だ。ただ、この状況で競技空手にこだわる奴はいない。喧嘩なのだから。小山は顔面を殴るつもり満々の様だが、刹那は顔面を殴るつもりは無い。遠慮では無く、ある程度は空手の組手として対戦しようと思っていた。もちろん寸止めはしないし、頭部と金的以外は気にせず攻撃するつもりだ。刹那は前蹴りを得意とする。突進してくる相手に対して、前蹴りは非常に有効だ。小山に何もさせず、体重差で吹っ飛ばして倒れた所を殴り続けて終わらそうと考えていた。
  小山が正拳突きの構えをした瞬間、刹那の前蹴りがヒット……しない!  横から何者かに蹴られた!  ガードの上からだが、小山の正拳突きが刹那にヒットする。刹那がチラッと右を見ると粒浦(茶髪の男)が横から雑な前蹴りをしてきていた。
  刹那は小山に質問する。
「タイマンじゃないのか?!」
「聞いていなかったのか?!  何でもありって言っただろ!」
小山は攻撃の手を緩めない。仕方無いなと、刹那は顔面ヘの攻撃を解禁する決意をした。顎を殴って、1発で脳震盪狙いに切り替えた。粒浦の横からの前蹴りをかわし、小山の正拳突きをかわしてカウンターで顎を捉え……られない!  背後からタックルされ、そのまま羽交い締めにされる。刹那は前屈みになって後ろの人物と少しだけ距離をとった後、勢いよく後頭部を後ろの人物にぶつける!
ガツン!
「ぐうう……」
刹那の後頭部が後ろの人物の鼻面にヒット!  後ろの人物は、たまらず距離をとった。刹那はチラッと後ろを見る。大曲(黒髪パーマの男)だ。前からは、また小山の正拳突き!  それを屈んでかわし、カウンターでボディーへ正拳突き!
ドスッ!
「おおお……」
刹那は追撃をしようと振りかぶり、小山の顔面へ正拳突きを放った瞬間……左脇腹を蹴られて吹っ飛ぶ。さらに顔面への追い突き!
ガツン!
左の頬を強烈に殴られた!
ゴッ!  ゴッ!
ガードの隙間から、更に追い討ちを食らう!  刹那はたまらず膝をついた。そこへ回し蹴り!  何とかガードするものの、連打が凄すぎて立ち上がる事も出来ない。攻撃してきていたのは石黒(色黒の男)だ。さすがの刹那でも4人相手では無理のようだ。大曲が後ろから両手で刹那の髪の毛を掴み、動きを封じた。4人対1人の試合だが、この時点で刹那の負けが確定した。石黒が話す。
「おい時雨!  あんまり調子にのってると次はこの程度で済まさないぞ!」
「いやいや、今回もこの程度では済まさんわ」
「!!」
ガッ!  ガッ!
小山だ!  ガードの上からだが、殴る蹴る。
「大曲!  腕を抑えてくれ。そのイケメンの面、ボコボコにしてやるわ」
小山は動きを大曲に封じさせ、左手で刹那の髪の毛を掴み、殴る殴る!  刹那は目の周りを殴られ、視界が狭くなった中、坂井が向かってくるのが目に入った。全員がやり過ぎじゃないか?  と思い始めたその時。
「勘弁してやってください!!」
ある男が小山と刹那の間に入り、殴るのを止めた。唐沢だ!
「唐沢どけっ!」
小山は唐沢の髪の毛を引っ張り、どかそうとする。
「これ以上やったら死にます!  勘弁してやってください!!」
「チッ!  時雨、助かったな!  これからは調子に乗るなよ!」
小山が去ると他の2年生も帰っていった。

「時雨!  大丈夫か?!」
「いや、大丈夫じゃないな……」
「どうしたらいい?  俺に出来る事ならするから」
「そうだな……。見た目が金持ちそうな知り合いのおじさんが居たりしないか?」
「?」
「金持ちのおじさん役でアイツらをボディーガードとして雇いそうに見える人を紹介して欲しい」
「まさか?!  もう、仕返しの事を考えているのか?!」
「ああ、協力してくれそうな知り合い居ないかな?必要な金は全部俺が用意するから」
「……分かった……。聞いてみるよ」
「ありがとう」

  唐沢が意外にも早く了承したのには訳がある。刹那は知らなかったのだが、唐沢の父親はゴルフショップの店長をしている。ゴルフの腕前も中々のもので、一般的にシングルプレイヤーと呼ばれるレベルだ。仲間内でのハンディキャップは5から10にする事が多い。その腕前の為、コーチを兼ねる事もできた。だから、社長仲間に気に入られ、よく一緒にホールを回っていた。刹那は金持ちでは無く、外見が金持ちに見える知り合いを希望したのだが、その様な事情があり、唐沢の父親は、たまたま本当に金持ちの知り合いが多かったのだ。
  唐沢は仕返しと表現したが、刹那の考えは少し違う。復讐といった単純な報復行為では無く、正義感によるものだ。正義は勝つというのが刹那の考え方なので、ズルい事をした小山達が最終的に負けなければならない。
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