嫉妬が憧憬に変わる時

ジャメヴ

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名探偵永遠 2

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  うーん……。まあ、俺の頭と刹那の頭では能力に差が有りすぎるから次に行くか。次は何をしていたかな?  そうだ!  黒髪パーマに現場保存って言われていたのにもかかわらず、王の部屋のドアを触っていた。あれは絶対に意味がある!

  俺は1階へ降りた。

  刹那はドアを開けてベタベタ触っていたけど、そんな事をすれば西大生が黙っていないだろうな。取り敢えずドアをよく見てみよう。……何も無い。厳しいな……。何1つ情報が得られない。刹那は何をしていた?  ドアを開けて…… 。そう言えば上の方を触っていたな。

  俺は西大生をチラッと見た。全員で話をしている。

  今のうちにちょっと触ってみよう。ただ、俺の指紋が付いてしまって、損をする可能性があるけど、そこは刹那頼みだ。

  俺はドアの上側をなぞる。

  何も無い。参った……降参かも……。ん?  んん?! 

  ドアの上では無く、その上、ドア枠に微かな傷が付いている!  しかも2本。何だこれは?  俺は傷を触った。触るとハッキリ分かる。2本傷が付いている。しかも真新しい。これは明らかにヒントになる。殺人と言えばピアノ線か?!

◆永遠でなくても、殺人と言えばピアノ線を想像する人が多いだろう。ピアノ線は非常に細くても頑丈なので、無い様に見せることが必要な手品や、ワイヤーアクションに使用される事が多い。◆

  ピアノ線を使って2階まで持ち上げたのか?  どうやって?  結局この部屋のドアを開ける必要があるじゃないか。……いや、ここに傷が付いていると言うことはどういう事だ?  もしかして……。

  俺は西大生をチラッと見て、素早くドアを開け、ドアの上を触り、素早く閉めた。

  なるほど……ドアの内側の上にも傷がある。と言う事は、ピアノ線は王の部屋からドアの上を通って2階へ……あっ!

  俺は急いで2階へ上がり、再び、真ん中の部屋から下を覗き込んだ。

  なるほど!  ここにも傷がある。と言う事は……。

  俺は真ん中の部屋のドアの上を触る。

  やっぱり!  ここにも傷がある。と言う事は、ドアを開けなくても分かる。内側の上にも傷があるのだろう。
  殺害方法が分かった!
  王は2階の、この部屋で殺されたんだ。殺人犯はピアノ線を使って、1階の王の部屋に居たまま、遠隔で殺害している。ん?  ちょっと待てよ……。王の首のアザはこんなに細かったか?  ロープで絞殺されていた筈だ。どういう事だ?  でも、その辺はよく分からないけど、ピアノ線とロープをくっつければロープで殺したように見せかけれるな。……そうか、ロープの隙間にピアノ線を差し込んでいけば簡単だ。何の為に?  ……そうか、首のアザがロープによるものなら、ドアの隙間よりロープの方が太いので、遠隔で殺す事が不可能な為、ピアノ線トリックに辿り着き難いという犯人の魂胆だな。随分真相に近付いている。ただ、最難関の問題が残っている。いつ、どうやって、王をこの部屋に移動させたかだ。

  俺は自分の部屋へ移動する。
ガチャ……バタン、カチャ
  まだ、西大生が俺を拘束する可能性が残っているので、俺は自分の部屋に入り鍵を閉めた。余計な心配をせずに集中して考えられる。そもそも、俺は刹那の弟。勉強は、してこなかったから出来ないだけで元々賢い筈だ。俺は目を閉じて、昨日からの記憶をよみがえらせる。

  俺が王を見たのは1度だけだ。時間は……午後3時頃だった。前だったか後だったかは覚えていないけど、全員で挨拶に行った。返事もしなかったような気がする。それだけだ。それから翌日の朝8時半頃に執事さんと黒髪パーマの男と一緒に俺も部屋に入った時にいなかったんだ。その間で殺害された。犯行が可能なのは……いや、この考え方では辿り着かない。ずっと考えてきたのだから、結果、推測で終わってしまう。どう考えたら良いんだ?  折角、犯行方法が分かったって言うのに……。

  俺は行き詰まってしまった。目を閉じて集中していたけど、集中を解き目を開ける。すると、消臭剤が目に飛び込んできた。

  これ、俺が入った全部屋に4つずつあったな。多分全ての部屋にあるんだろう。これがヒントに……ならないか。まあ、匂いにうるさい人……ってどっちだろう?  王か?  執事さんか?  でも、この考え方は良いかも知れない。2日間を通じて、何か変な事を思い出せば、それがヒントになるかも知れない。そうだ!  スパイダーマンの覆面も変だったんだ!  あれは刹那がバレ無いようにした変装だった。変な事には何か意味がある!  この消臭剤も4つ置くのは変だ!  匂いに敏感だからって、そんなに臭い奴はいない。何かを誤魔化す為に置いてるんじゃないのか?  でも、消臭剤を置く意味は匂いを誤魔化す以外にあるか?  1番臭い部屋ってどの部屋だ?  俺達の部屋はさすがに……!!  真ん中の部屋はどうだ?  何か臭い物を隠しているのか?!  臭い物、臭い物……!  死体って臭いんじゃないのか?!  腐敗臭?  1日で腐敗はしないのか?  あっ!  首吊りって失禁するんじゃないのか?!  まさか、その臭いを隠す為か?!  それだ!!  と言う事は消臭剤を準備した……

  執事さんの犯行だ!

  共犯は背の低い男と色黒の男でいいのか?  そう言えば、刹那は犯人に借りがあるとか、義理がどうのとか言っていたな。刹那にも言ったけど、ボコボコに殴っといて義理がどうのってのはおかしい。と言う事は執事さんの単独犯なのか?  でも、単独では2階へ上げる事は不可能だ。ん?  変だぞ?  王は2階の真ん中の部屋で死んだんだから、王の部屋では生きていた筈……。生きている人物を2階へ上げれる訳が無い。……いや、空気の入った椅子にロープでぐるぐる巻きにして、口をテープで止めておけば空手部なら1人で運べるな。待て待て、執事さんが1人で運ぶ方法を考えないと駄目だ。ガリガリの老人が、生きている老人を2階へ運ぶ方法……。

  俺は再び目を閉じて考える。
  
◆脳は常に大量の情報を処理していて、目に映る物全てを脳が処理しようとすると、相当能力を使ってしまう。目を開けたままなのと閉じるのとでは集中力の差は歴然だ。永遠がそんな事を知っている訳はないが、経験上なのか本能なのか行なう事が出来た。◆
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