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名探偵永遠 3
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分かった! 生きている老人を2階へ運ぶ事なんて簡単だ! 自分で歩いて行ってもらえば良いだけだ。この仮説で考えよう。殺害するチャンスはあったか? 執事さんが1人で1分以上部屋に入ったのは……。あった! 確か脅迫文の犯行予告時間の0時頃に1人で王の部屋に入っていた! あの時、なんでワザワザ部屋に入るんだと思っていたけど、皆が見ている中、堂々と犯行を行なっていたのか! あっ、そう言えば、ギギギって嫌な音がしていた! あれは、ピアノ線の軋む音だ! そうだ! 執事さんの部屋から大きめの音でクラシックが流れて来ていた! 目覚まし代わりとか何とか言って誤魔化していたけど、ピアノ線の軋む音を隠す為だったのか! 一気に繋がった。間違い無い! 執事さんの単独犯だ! あとは、いつ移動したか……。
俺は再び目を閉じて考える。
絶対に無理だ! 執事さんの単独犯で考えると、土曜日の午後3時以降は、必ず誰かが監視していたから不可能だ。普通に考えれば不可能だけど、俺には執事さんの単独犯だと言う事が分かっている。その条件が揃っているなら簡単だ。土曜日の午後3時以前に移動させたんだ! そうなると、土曜日の午後3時頃、皆で見た王は偽物だったと言う事だ! あの時、執事さんは無駄に部屋のドアを全開にした。あれは全員に王の姿を確認させる為だ! そもそも、50畳ぐらいある部屋で、ベッドがドアを開けて見える位置に置かれているのは不自然だ。皆に見せる為だけに、あの位置にベッドを移動させたんだ。俺達が見たのは王の後頭部だけ。あんなものはマネキンか何かにカツラでも被せておけばいい。あの部屋に移動させたのは金曜なのか土曜の午前中なのか……。そうなると半日以上、生きたまま、あの部屋に居た事になる。ちょっと無理があるか? そうなると、俺達が来た時からピアノ線が張っていたという事になるからドアが開けれないのか? ええっと……いや、1階の王の部屋の中までピアノ線を入れてさえいればドアは開けられる。ただ、ずっと2階の部屋に居たのなら音でバレるんじゃないか? ロープでぐるぐる巻きにしてるから可能か? 口にテープもしていた。ただ、口を閉じていても、少しなら音を出せる。あっ! だから、館の中には常にクラシックが流れていたのか! その音で、王が音を出しても気付き難くしたんだな。暴れたり出来ないか? あっ! その為の空気の椅子か! まあ、老人にそこまで暴れる力があるとも思わないけど、暴れても音が出にくい様に空気の椅子に縛っていたのか! 全て分かってしまった……。
「ふーーー!」
俺は大きく溜め息をついた。やっぱり刹那は凄い。俺がこれだけ悩んでようやく答えに辿り着いたというのに、刹那は俺が考えるのを始める前から答えが分かっていた。マラソンでシード選手は前からスタートして、一般参加は後ろからスタートの大会がよくあるけど、一般参加の俺がスタートラインを越える前にシード選手の刹那はゴールしていたって話だ。
カチャ、ガチャ……バタン
俺は部屋を出て刹那の部屋へ向かう。
コンコン
「刹那! 永遠だ! 入れてくれ! 話がある!」
ガチャ
「どうしたんだ?」
「部屋の中で話がしたい」
「分かった」
俺は刹那の部屋に入った。
バタン
刹那は俺を部屋に招き入れた後、俺を見ずに言う。
「説得しに来たのか?」
「いや、俺にも今回の事件の真相が分かったよ」
刹那は俺の言っている意味が分からないという顔をした。それもその筈、誰もが思うだろう。お馬鹿な俺が、西大生も解けていない謎を解ける筈が無いと。
「犯人は執事さんの単独犯だったんだな」
「執事さんが犯人? 永遠の推理を聞くよ」
刹那は俺が当てずっぽうで言っている可能性の方が高いと思ったのか、平静を保ったまましらばっくれている。俺は刹那に自分の推理を全て伝えた。
○午後3時頃皆で見た王は偽物だった事。
○ピアノ線の傷があった事。
○0時に王の部屋から遠隔で2階の真ん中の部屋に居る王を絞殺した事。
○ロープの隙間からピアノ線を通してロープで絞殺したように見せかけた事。
○消臭剤で失禁の臭いを消した事。
「どうだ? 間違っているか?」
「……いや、合っている。どうやら俺は永遠を見くびっていた様だな」
「お馬鹿でもやる時はやるだろ? 刹那が犯人を庇ったのは、アイツらへの仕返しの準備をしてもらったという借りが執事さんにあったからだったんだな?」
「いや、違うんだ」
「ん?」
「仕返しの準備をしてくれたのは、あの人じゃないんだ」
俺は再び目を閉じて考える。
絶対に無理だ! 執事さんの単独犯で考えると、土曜日の午後3時以降は、必ず誰かが監視していたから不可能だ。普通に考えれば不可能だけど、俺には執事さんの単独犯だと言う事が分かっている。その条件が揃っているなら簡単だ。土曜日の午後3時以前に移動させたんだ! そうなると、土曜日の午後3時頃、皆で見た王は偽物だったと言う事だ! あの時、執事さんは無駄に部屋のドアを全開にした。あれは全員に王の姿を確認させる為だ! そもそも、50畳ぐらいある部屋で、ベッドがドアを開けて見える位置に置かれているのは不自然だ。皆に見せる為だけに、あの位置にベッドを移動させたんだ。俺達が見たのは王の後頭部だけ。あんなものはマネキンか何かにカツラでも被せておけばいい。あの部屋に移動させたのは金曜なのか土曜の午前中なのか……。そうなると半日以上、生きたまま、あの部屋に居た事になる。ちょっと無理があるか? そうなると、俺達が来た時からピアノ線が張っていたという事になるからドアが開けれないのか? ええっと……いや、1階の王の部屋の中までピアノ線を入れてさえいればドアは開けられる。ただ、ずっと2階の部屋に居たのなら音でバレるんじゃないか? ロープでぐるぐる巻きにしてるから可能か? 口にテープもしていた。ただ、口を閉じていても、少しなら音を出せる。あっ! だから、館の中には常にクラシックが流れていたのか! その音で、王が音を出しても気付き難くしたんだな。暴れたり出来ないか? あっ! その為の空気の椅子か! まあ、老人にそこまで暴れる力があるとも思わないけど、暴れても音が出にくい様に空気の椅子に縛っていたのか! 全て分かってしまった……。
「ふーーー!」
俺は大きく溜め息をついた。やっぱり刹那は凄い。俺がこれだけ悩んでようやく答えに辿り着いたというのに、刹那は俺が考えるのを始める前から答えが分かっていた。マラソンでシード選手は前からスタートして、一般参加は後ろからスタートの大会がよくあるけど、一般参加の俺がスタートラインを越える前にシード選手の刹那はゴールしていたって話だ。
カチャ、ガチャ……バタン
俺は部屋を出て刹那の部屋へ向かう。
コンコン
「刹那! 永遠だ! 入れてくれ! 話がある!」
ガチャ
「どうしたんだ?」
「部屋の中で話がしたい」
「分かった」
俺は刹那の部屋に入った。
バタン
刹那は俺を部屋に招き入れた後、俺を見ずに言う。
「説得しに来たのか?」
「いや、俺にも今回の事件の真相が分かったよ」
刹那は俺の言っている意味が分からないという顔をした。それもその筈、誰もが思うだろう。お馬鹿な俺が、西大生も解けていない謎を解ける筈が無いと。
「犯人は執事さんの単独犯だったんだな」
「執事さんが犯人? 永遠の推理を聞くよ」
刹那は俺が当てずっぽうで言っている可能性の方が高いと思ったのか、平静を保ったまましらばっくれている。俺は刹那に自分の推理を全て伝えた。
○午後3時頃皆で見た王は偽物だった事。
○ピアノ線の傷があった事。
○0時に王の部屋から遠隔で2階の真ん中の部屋に居る王を絞殺した事。
○ロープの隙間からピアノ線を通してロープで絞殺したように見せかけた事。
○消臭剤で失禁の臭いを消した事。
「どうだ? 間違っているか?」
「……いや、合っている。どうやら俺は永遠を見くびっていた様だな」
「お馬鹿でもやる時はやるだろ? 刹那が犯人を庇ったのは、アイツらへの仕返しの準備をしてもらったという借りが執事さんにあったからだったんだな?」
「いや、違うんだ」
「ん?」
「仕返しの準備をしてくれたのは、あの人じゃないんだ」
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