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朝起きると十和田くんがいた。
土曜日の朝で今日は休みだ。前髪を指でとく感覚で俺は目を覚ます。十和田くんはベッドの横に座って俺の髪を撫でている。
「無防備な真名さん、かわいい‥」
十和田くんの小さい声が聞こえるけど、まだぼんやり眠りの中にいる俺は、十和田くんが一週間ぶりにうちに来ていることもしっかり認識できていない。
「連絡くださいよ」
相変わらず小声で十和田くんは話す。声はちょっとさみしそうで、俺に向かって言っているのか、ただの独り言なのかは謎だ。
しばらくすると俺もだんだん十和田くんが家に居るという事実をわかり始めて「起きる、起きるよ」と自分に言い聞かせる。
十和田くんはふふっ、と笑う。俺を見つめる優しい目はまるで飼ってるハムスターかなんかを見ているようだ。
「朝食の用意しますね」
顔を洗って朝食を食べてたら目が覚めてきて、俺はやっと十和田くんが目の前にいるって状況を理解し、緊張した。
緊張してる俺をよそに、十和田くんは一週間うちに来なかったことも、連絡しなかったことも、そんなことは無かったかのように前と変わらない態度で振る舞っている。怒っていただろう十和田くんがなぜ自然に今まで通り振る舞えているのか謎だ。
食後、すんごく十和田くんのことを意識してる俺は身体を固くしながら、いつもの定位置で十和田くんにハグをされている。十和田くんのぬくもりで心臓が少しはやい。
もう怒ってないのか聞きたい。あと「一週間何してた?」とか「会えなくてさみしかった」とか言うべきだろうか。でも俺たちはまだ恋人同士とかじゃないし、そんなの重いかもしれない。
「‥十和田くん、この前テーブル買いに行った日、なんかすごい車で駅まで送ってもらってた?」
「え?真名さんなんで知ってるんですか」
「偶然見た」
「母親です。近くに用があったから乗せてってもらって」
やっぱりお母さんだったか。ああ、本命がいるなんて俺の勘違い‥。
でも、本命がいないなら俺は十和田くんの恋人になりたいし、十和田くんだって同じ気持ちなんだと思う。だってこうやってまた家に来てくれたわけだし。ここは勇気を振り絞って「会いたかった」って言ってみようかな。
俺がぐるぐるそんなことを考えていると、ずっと俺をハグしながらスマホを見ていた十和田くんが普段通りの穏やかな口調で話しかけてきた。
「オーブントースター欲しくありません?」
「え?」
「あれあると朝パン焼けるし、料理の幅も広がるんですよね」
突然の提案に驚く俺。でも反対する理由もないし、と言うかそんなものを買うってことは、これからも俺の家に来てくれるつもりなんだろうか。
「う、うん!買おう」
嬉しくてつい声が少しうわずってしまった。
「そしたらそれを置けるちょっとした棚もあるといいですよね」
「うん」
「それに炊飯器があれば炊きたてのご飯食べれますよ。あとソファもあるとゆったり二人でそこでテレビとか見れますよね」
「う、うん‥。トースターと炊飯器はいいけど、ソファは置くとこ無いから」
俺を抱きしめる十和田くんの腕の力が強まる。まるで逃がすまいとするようだ。
「もう少し大きな家に引っ越しましょうよ。ベッドも大きい方がいいですよね」
「は、はは。ごめんね、俺そんな稼ぎないから今以上の暮らしはちょっと無理かも」
なんだろう。なんかの冗談?間に受けちゃったけど。
だけど十和田くんは穏やかな話し方のまま、俺の手に自分の手を重ねてくる。
「大丈夫です。俺が出しますから。俺、大学入った時から母親のとこの仕事手伝ってたんで、収入あるんです」
「いや‥、だとしても家賃とか出してもらうなんて無理だよ」
さすがにそれはセフレじゃなくてパトロンみたいな関係になる。二人の距離が恋人からさらに離れてしまうのは嫌だ。
「俺もそこに住みます。だから問題ないです」
「え、ま、まって‥」
ど、同棲?
「俺の一番のセフレになりたいって、真名さん言ってましたよね。だったら毎晩俺の一番近くにいてください」
一番のセフレ、たしかに言った。なんか勘違いしてて一流のセフレを目指してた‥。
一流のセフレってなんだって気もするけど、十和田くんの言う通り、毎晩やりたい時にやれるのはいいセフレかもしれない。
恋人同士になりたいけど、十和田くんはもう俺のことそんな風には見てくれてないのかな。でもそれは俺のせいだ。俺がずっとセフレにこだわってたんだから。
このままセフレの関係でも、十和田くんと一緒に暮らせば、十和田くんは今回みたいに一週間連絡もなく俺んちにも来ないなんてことは無くなる。だって二人の家なんだから。毎日、十和田くんは帰ってくる。
「今まで通り、家事も料理も俺が全部やるんで。二人で買ったこのテーブルと食器類はこのまま使いましょうね」
十和田くんはまるで計画してたかのように「このマンションとかどうですか」って賃貸物件の間取り図を見せてくる。
どんなかたちでも十和田くんのそばにいたい俺は、ハグされながら一緒に賃貸物件のサイトを見るのだった。
土曜日の朝で今日は休みだ。前髪を指でとく感覚で俺は目を覚ます。十和田くんはベッドの横に座って俺の髪を撫でている。
「無防備な真名さん、かわいい‥」
十和田くんの小さい声が聞こえるけど、まだぼんやり眠りの中にいる俺は、十和田くんが一週間ぶりにうちに来ていることもしっかり認識できていない。
「連絡くださいよ」
相変わらず小声で十和田くんは話す。声はちょっとさみしそうで、俺に向かって言っているのか、ただの独り言なのかは謎だ。
しばらくすると俺もだんだん十和田くんが家に居るという事実をわかり始めて「起きる、起きるよ」と自分に言い聞かせる。
十和田くんはふふっ、と笑う。俺を見つめる優しい目はまるで飼ってるハムスターかなんかを見ているようだ。
「朝食の用意しますね」
顔を洗って朝食を食べてたら目が覚めてきて、俺はやっと十和田くんが目の前にいるって状況を理解し、緊張した。
緊張してる俺をよそに、十和田くんは一週間うちに来なかったことも、連絡しなかったことも、そんなことは無かったかのように前と変わらない態度で振る舞っている。怒っていただろう十和田くんがなぜ自然に今まで通り振る舞えているのか謎だ。
食後、すんごく十和田くんのことを意識してる俺は身体を固くしながら、いつもの定位置で十和田くんにハグをされている。十和田くんのぬくもりで心臓が少しはやい。
もう怒ってないのか聞きたい。あと「一週間何してた?」とか「会えなくてさみしかった」とか言うべきだろうか。でも俺たちはまだ恋人同士とかじゃないし、そんなの重いかもしれない。
「‥十和田くん、この前テーブル買いに行った日、なんかすごい車で駅まで送ってもらってた?」
「え?真名さんなんで知ってるんですか」
「偶然見た」
「母親です。近くに用があったから乗せてってもらって」
やっぱりお母さんだったか。ああ、本命がいるなんて俺の勘違い‥。
でも、本命がいないなら俺は十和田くんの恋人になりたいし、十和田くんだって同じ気持ちなんだと思う。だってこうやってまた家に来てくれたわけだし。ここは勇気を振り絞って「会いたかった」って言ってみようかな。
俺がぐるぐるそんなことを考えていると、ずっと俺をハグしながらスマホを見ていた十和田くんが普段通りの穏やかな口調で話しかけてきた。
「オーブントースター欲しくありません?」
「え?」
「あれあると朝パン焼けるし、料理の幅も広がるんですよね」
突然の提案に驚く俺。でも反対する理由もないし、と言うかそんなものを買うってことは、これからも俺の家に来てくれるつもりなんだろうか。
「う、うん!買おう」
嬉しくてつい声が少しうわずってしまった。
「そしたらそれを置けるちょっとした棚もあるといいですよね」
「うん」
「それに炊飯器があれば炊きたてのご飯食べれますよ。あとソファもあるとゆったり二人でそこでテレビとか見れますよね」
「う、うん‥。トースターと炊飯器はいいけど、ソファは置くとこ無いから」
俺を抱きしめる十和田くんの腕の力が強まる。まるで逃がすまいとするようだ。
「もう少し大きな家に引っ越しましょうよ。ベッドも大きい方がいいですよね」
「は、はは。ごめんね、俺そんな稼ぎないから今以上の暮らしはちょっと無理かも」
なんだろう。なんかの冗談?間に受けちゃったけど。
だけど十和田くんは穏やかな話し方のまま、俺の手に自分の手を重ねてくる。
「大丈夫です。俺が出しますから。俺、大学入った時から母親のとこの仕事手伝ってたんで、収入あるんです」
「いや‥、だとしても家賃とか出してもらうなんて無理だよ」
さすがにそれはセフレじゃなくてパトロンみたいな関係になる。二人の距離が恋人からさらに離れてしまうのは嫌だ。
「俺もそこに住みます。だから問題ないです」
「え、ま、まって‥」
ど、同棲?
「俺の一番のセフレになりたいって、真名さん言ってましたよね。だったら毎晩俺の一番近くにいてください」
一番のセフレ、たしかに言った。なんか勘違いしてて一流のセフレを目指してた‥。
一流のセフレってなんだって気もするけど、十和田くんの言う通り、毎晩やりたい時にやれるのはいいセフレかもしれない。
恋人同士になりたいけど、十和田くんはもう俺のことそんな風には見てくれてないのかな。でもそれは俺のせいだ。俺がずっとセフレにこだわってたんだから。
このままセフレの関係でも、十和田くんと一緒に暮らせば、十和田くんは今回みたいに一週間連絡もなく俺んちにも来ないなんてことは無くなる。だって二人の家なんだから。毎日、十和田くんは帰ってくる。
「今まで通り、家事も料理も俺が全部やるんで。二人で買ったこのテーブルと食器類はこのまま使いましょうね」
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