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「ああ、そういえば」
ゆっくりとした朝食の時間にヒューが思い出したように話を始めた。
「明後日からこっちにテディが来るんだよ」
その名前が出てきたとたん瀧の顔は曇る。
「仕事?」
「いや、完全な休暇みたい。だけど日本の老舗デパートを覗きたいから案内して欲しいって言われてて」
今度の休みは一緒に出かけてくるよ、とヒューは話す。
「久しぶりだし飲んで帰ると思うから瀧は先に休んでてね」
ヒューは屈託なく微笑むが、瀧はセオドアがヒューと二人っきりになると手を出してくるんじゃないかと心配だった。
「‥‥どこで飲むの」
「決めてないけど一番可能性が高いのはテディの泊まるホテルのバーだね」
瀧はしばらくカフェオレのカップを眺めていたがやがて目線を上げた。
「‥‥‥‥うちに呼べば?」
ヒューは瀧がセオドアに対して面白くない感情を抱いていることを知っていたので驚いた顔で瀧を見た。
「ゲストルームにトイレもシャワーも付いてるし、俺の荷物片付けるから、あそこに泊まって貰えばいいじゃん」
「瀧が気を使う必要はないよ」
ヒューは断るが瀧は譲らなかった。何度か応酬が続きヒューが折れた。
「瀧がテディを気にかけてくれるなんて嬉しいよ。時間もちょうどいいし、早速テディに伝えてみるね」
今は朝の7時。向こうは昼の2時頃だ。
ヒューの送ったメッセージはすぐに返事が届き、日本に滞在する間セオドアはヒューと瀧のマンションで過ごすことになった。
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