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「全員その場を動くな!」
火竜を防いだ後、どこからか三十人もの狩人達が一斉になだれ込んで来た。
上質な装備を身に着けている事から、彼等が上級狩人で構成されたギルドだと直ぐに理解する。
しかも先頭にいる二名の狩人は、トップランキングに名を乗せる超有名人であった。
二十代のイケメン青年は、ネコ科の耳と尻尾が特徴的な獣人族。
身長は百九十センチとでかく、全身に数多の死線を生き抜いてきた証拠である傷跡に目が留まる。
双剣を腰に下げる彼は見覚えがある。Aランク狩人〈金色の獅子〉セシル。百獣ギルドのリーダーだ。
彼の隣に並び立っている槍使いは、副リーダーでAランク狩人。
同じくネコ科の耳と尻尾が生えている十代の美少女は、彼の妻である〈獅子姫〉ローズに間違いない。
彼等が身に着けているのは、アフリカ大陸の民族衣装をアレンジしたような感じ。
ギルドによっては、ああいう風に装備を統一することで仲間意識や連帯感を高める者達もいる。
その中で百獣ギルドはセシルの指揮の下、全ギルド中で十本の指に入ると言われる程に練度が髙い。
超有名ギルドの出現に、Fランク狩人達は揃って目を輝かせた。
「助けて下さい! あの〈スキルゼロ〉に擬態したレアスライムが出現したんだ!」
「必死に倒そうとしたんですが、この場にいる全員が攻撃しても無傷なほどに強い個体です!」
まだスライムだと思われてるんかい。
というツッコミは置いといて、情況的に不味い現場なので彼等も引き下がる事が出来なくなった感じだろうか。
現に彼等は焦った感じで百獣ギルドに助けを求め、俺が突然現れて襲ってきたとか嘘でたらめを主張する。
呆れ果て言葉を失っていたら、セシルはAランク狩人に相応しい鋭い眼光を俺に向けた。
これは、かなり不味いかな……。
相手はAランク、もしも戦闘になったらあの力を使ったとしても絶対に勝てない。
先程相手にした奴らとは、文字通り格が違う存在感に額から嫌な汗が流れ落ちる。
かといって大多数の主張に対して一人が反論して、果たして信じてもらえるのだろうか。
先程の違法ポーションの件も、全員でしらばっくれられたらどうしようもない。
実に胃が痛い状況と緊張感が漂う中、彼は俺を見据えながらゆっくり右手を上げて部下達に指示を出した。
「〈スキルゼロ〉以外を全員拘束しろ」
「「「「……は!!?」」」」
彼が出した答えに助けを求めていたFランク狩人達は、期待していた行動と相反する結果に驚きの余り絶句する。
だがセシルは有無を言う間を与えず、この場における自身の考えを全員に聞こえるように告げた。
「第一に貴様らは噓をついた。ここに到着する前に俺は遠目で見ていたが、先に仕掛けたのは貴様らの方だ。それに加えてステータスの自己証明を偽る事は絶対に不可能。
仮に彼が擬態する特殊なスライムだったとして、十数名ものFランク狩人達の攻撃を受けて無傷なほどに強力な個体だ。そんな格上のモンスターが何故反撃を一切しないで背を向けたと思う!?」
力強く熱弁するセシルは、最後にモンスターとの決定的な違いを指摘した。
「それは彼が本能で動くモンスターではなく、自己を制御できる理性的な狩人だったからだ!」
この世界のモンスター達は、いくつかの例外を除いて敵対関係にある狩人を全力で排除しようとする。
Fランクの下級狩人を避ける怪物は存在しない、故にどう考えても俺をモンスターだと判断する事はできない。
絶対不変の誰もが知っている常識の一つを突きつけられ、必死に自らの罪を認めようとしなかった下級狩人達は言葉を失った。
さらに隣にいたローズがとどめを刺さんと、いつの間にか例の違法ポーションの破片の一部を掲げて見せた。
「これはどう見ても禁止されている違法ポーションね。さっきの能力の上がり方から本物だと断定できるわ。……しかるべき場所で調べた後、この件も含めて貴方達の罪が決まるでしょう」
「同業者の殺害未遂、違法ポーションの携帯と使用。どれも国が定めている法の重大な違反行為だ。取り調べが終った後の処遇は覚悟するんだな」
冷ややかな目で睨むローズとセシルの言葉は、それだけで有無を言わせない圧を含んでいる。
二人の上級狩人から告げられた内容に、反論しようとしていた下級狩人達は、顔が真っ青になった。
しかもその場で荷物検査も実施されたのだが、──なんとまあ全員が例のポーションを大量に所持していた事が発覚した。
一体どれだけ罪を重ねるのか。地面に集められた数を見るに、これは売買にまで手を出していそうだった。
百獣ギルドのメンバー達も、これにはドン引きして苦笑いをしていた。
こめかみに青筋を浮かべたセシルは、まるで汚物を見るような目で彼等に告げる。
「この愚か者共を連れていけ!」
上級と中級狩人達によって拘束された罪人達は、自業自得だが生気を失った顔で力なく連れて行かれた。
◆ ◆ ◆
嵐のように現れた百獣ギルドは、犯罪者達を連れてあっという間に去った。
百獣ギルドのメンバー達は、ランクアップしていない俺がここにいる事が気になっている様子だったけど。
所属外メンバーの能力を尋ねるのは、絶対なるタブーとされているので誰も聞いて来ることはなかった。
去り際にリーダーのセシルに教えられた。どうやら〈フェスティバル〉の訓練帰りで偶然にもこのルートを歩いていたら二人の上級狩人が現れて、重大な違反行為をしている者達を捕まえて欲しいと頼まれたらしい。
その狩人は誰なのか尋ねると、彼が指さした方角には最上位のローブを纏った二人の人物が立っていた。
身長の高い女性と低い女性。顔はローブを目深にかぶり、仮面で隠しているから誰なのかは分からない。
しかし一目見ただけで、自分とは比べ物にならない強さを感じ取ることができる。
上手く隠しているが恐らく実力は上級。そんな人達が何で〈スキル無し〉である自分を助けてくれたのか疑問に思っていたら、〈百獣ギルド〉のメンバー達が全員いなくなったタイミングで小柄な一人が駆け寄ってきた。
「ソウスケ様!」
「は? え、もしかしてその声は……!?」
一度聴いたら絶対に忘れない美しいソプラノの声、仮面を外して抱き着いて来た彼女のご尊顔は紛れもなく聖女アウラだった。
絶世の美貌を目の当たりにした自分は、つい見惚れてしまい動けなくなる。
聖女様がいるという事は、もう一人の背が高い人物は一人しか思いつかない。
嫌な予感がすると、顔を晒すと同時にオリビアは急にいつもの殺気を此方に放ってきた。
先ほどのFランク達とはまるで比べ物にならない、鍛え上げられた刃の様に鋭い敵意。
全身から汗がものすごい勢いで吹き出し、身体は恐怖心によってガタガタと小刻みに震える。
そんな姿の自分を見て、聖女様は頬を軽く膨らませて従者を睨みつけた。
「もう、オリビア。そんな怖い顔したらダメですよ」
「これも訓練の一環です。この程度の殺気を受け止められず、お嬢様の婚約者として隣に並び立つことはできません」
「えっと……なんで普段は城にいるお二人が、こんな場所に?」
自分の記憶が正しければ、聖女様は普段城の中で訓練をするので外に出ることはないはず。
疑問を投げかけると彼女は急に頬を赤く染めた後に、恥ずかしそうに口をもごもごさせながら答えた。
「山から狩場を移動されたソウスケ様のご活躍を見たくて、そしたらあのような蛮行を目撃してしまったのです……」
「飛び出そうとするお嬢様を止めるのが大変でした。かと言って私達が表立って行動するのは避けたい。……ですから、たまたま〈百獣ギルド〉が帰還する姿を見つけなければ、お嬢様を説得するのは難しかったです」
「説得できなかったら、どうなっていたんですか?」
「お嬢様は怒りのままに全力の〈光魔法〉を使用して、この一帯を消し飛ばしていたかもしれません」
そのレベルの攻撃は、俺も巻き込まれていたのではないか。
横目で聖女様を見たら、彼女は顔を両手で覆い隠し反省していた。
「あの程度で我を見失うなんて、お恥ずかしい限りです」
「私としては別に巻き込まれて貴様が消えても構わなかったのだが、そうなるとお嬢様の綺麗な手を汚すことになるからな。非常に残念だが全力で止めざるを得なかった」
「あ、ありがとうございます……」
実は大ピンチだったことに、今更ながら背筋がゾッとしてしまう。
今後は気をつけますと言った聖女様を前にして、自分は苦笑いするしかなかった。
火竜を防いだ後、どこからか三十人もの狩人達が一斉になだれ込んで来た。
上質な装備を身に着けている事から、彼等が上級狩人で構成されたギルドだと直ぐに理解する。
しかも先頭にいる二名の狩人は、トップランキングに名を乗せる超有名人であった。
二十代のイケメン青年は、ネコ科の耳と尻尾が特徴的な獣人族。
身長は百九十センチとでかく、全身に数多の死線を生き抜いてきた証拠である傷跡に目が留まる。
双剣を腰に下げる彼は見覚えがある。Aランク狩人〈金色の獅子〉セシル。百獣ギルドのリーダーだ。
彼の隣に並び立っている槍使いは、副リーダーでAランク狩人。
同じくネコ科の耳と尻尾が生えている十代の美少女は、彼の妻である〈獅子姫〉ローズに間違いない。
彼等が身に着けているのは、アフリカ大陸の民族衣装をアレンジしたような感じ。
ギルドによっては、ああいう風に装備を統一することで仲間意識や連帯感を高める者達もいる。
その中で百獣ギルドはセシルの指揮の下、全ギルド中で十本の指に入ると言われる程に練度が髙い。
超有名ギルドの出現に、Fランク狩人達は揃って目を輝かせた。
「助けて下さい! あの〈スキルゼロ〉に擬態したレアスライムが出現したんだ!」
「必死に倒そうとしたんですが、この場にいる全員が攻撃しても無傷なほどに強い個体です!」
まだスライムだと思われてるんかい。
というツッコミは置いといて、情況的に不味い現場なので彼等も引き下がる事が出来なくなった感じだろうか。
現に彼等は焦った感じで百獣ギルドに助けを求め、俺が突然現れて襲ってきたとか嘘でたらめを主張する。
呆れ果て言葉を失っていたら、セシルはAランク狩人に相応しい鋭い眼光を俺に向けた。
これは、かなり不味いかな……。
相手はAランク、もしも戦闘になったらあの力を使ったとしても絶対に勝てない。
先程相手にした奴らとは、文字通り格が違う存在感に額から嫌な汗が流れ落ちる。
かといって大多数の主張に対して一人が反論して、果たして信じてもらえるのだろうか。
先程の違法ポーションの件も、全員でしらばっくれられたらどうしようもない。
実に胃が痛い状況と緊張感が漂う中、彼は俺を見据えながらゆっくり右手を上げて部下達に指示を出した。
「〈スキルゼロ〉以外を全員拘束しろ」
「「「「……は!!?」」」」
彼が出した答えに助けを求めていたFランク狩人達は、期待していた行動と相反する結果に驚きの余り絶句する。
だがセシルは有無を言う間を与えず、この場における自身の考えを全員に聞こえるように告げた。
「第一に貴様らは噓をついた。ここに到着する前に俺は遠目で見ていたが、先に仕掛けたのは貴様らの方だ。それに加えてステータスの自己証明を偽る事は絶対に不可能。
仮に彼が擬態する特殊なスライムだったとして、十数名ものFランク狩人達の攻撃を受けて無傷なほどに強力な個体だ。そんな格上のモンスターが何故反撃を一切しないで背を向けたと思う!?」
力強く熱弁するセシルは、最後にモンスターとの決定的な違いを指摘した。
「それは彼が本能で動くモンスターではなく、自己を制御できる理性的な狩人だったからだ!」
この世界のモンスター達は、いくつかの例外を除いて敵対関係にある狩人を全力で排除しようとする。
Fランクの下級狩人を避ける怪物は存在しない、故にどう考えても俺をモンスターだと判断する事はできない。
絶対不変の誰もが知っている常識の一つを突きつけられ、必死に自らの罪を認めようとしなかった下級狩人達は言葉を失った。
さらに隣にいたローズがとどめを刺さんと、いつの間にか例の違法ポーションの破片の一部を掲げて見せた。
「これはどう見ても禁止されている違法ポーションね。さっきの能力の上がり方から本物だと断定できるわ。……しかるべき場所で調べた後、この件も含めて貴方達の罪が決まるでしょう」
「同業者の殺害未遂、違法ポーションの携帯と使用。どれも国が定めている法の重大な違反行為だ。取り調べが終った後の処遇は覚悟するんだな」
冷ややかな目で睨むローズとセシルの言葉は、それだけで有無を言わせない圧を含んでいる。
二人の上級狩人から告げられた内容に、反論しようとしていた下級狩人達は、顔が真っ青になった。
しかもその場で荷物検査も実施されたのだが、──なんとまあ全員が例のポーションを大量に所持していた事が発覚した。
一体どれだけ罪を重ねるのか。地面に集められた数を見るに、これは売買にまで手を出していそうだった。
百獣ギルドのメンバー達も、これにはドン引きして苦笑いをしていた。
こめかみに青筋を浮かべたセシルは、まるで汚物を見るような目で彼等に告げる。
「この愚か者共を連れていけ!」
上級と中級狩人達によって拘束された罪人達は、自業自得だが生気を失った顔で力なく連れて行かれた。
◆ ◆ ◆
嵐のように現れた百獣ギルドは、犯罪者達を連れてあっという間に去った。
百獣ギルドのメンバー達は、ランクアップしていない俺がここにいる事が気になっている様子だったけど。
所属外メンバーの能力を尋ねるのは、絶対なるタブーとされているので誰も聞いて来ることはなかった。
去り際にリーダーのセシルに教えられた。どうやら〈フェスティバル〉の訓練帰りで偶然にもこのルートを歩いていたら二人の上級狩人が現れて、重大な違反行為をしている者達を捕まえて欲しいと頼まれたらしい。
その狩人は誰なのか尋ねると、彼が指さした方角には最上位のローブを纏った二人の人物が立っていた。
身長の高い女性と低い女性。顔はローブを目深にかぶり、仮面で隠しているから誰なのかは分からない。
しかし一目見ただけで、自分とは比べ物にならない強さを感じ取ることができる。
上手く隠しているが恐らく実力は上級。そんな人達が何で〈スキル無し〉である自分を助けてくれたのか疑問に思っていたら、〈百獣ギルド〉のメンバー達が全員いなくなったタイミングで小柄な一人が駆け寄ってきた。
「ソウスケ様!」
「は? え、もしかしてその声は……!?」
一度聴いたら絶対に忘れない美しいソプラノの声、仮面を外して抱き着いて来た彼女のご尊顔は紛れもなく聖女アウラだった。
絶世の美貌を目の当たりにした自分は、つい見惚れてしまい動けなくなる。
聖女様がいるという事は、もう一人の背が高い人物は一人しか思いつかない。
嫌な予感がすると、顔を晒すと同時にオリビアは急にいつもの殺気を此方に放ってきた。
先ほどのFランク達とはまるで比べ物にならない、鍛え上げられた刃の様に鋭い敵意。
全身から汗がものすごい勢いで吹き出し、身体は恐怖心によってガタガタと小刻みに震える。
そんな姿の自分を見て、聖女様は頬を軽く膨らませて従者を睨みつけた。
「もう、オリビア。そんな怖い顔したらダメですよ」
「これも訓練の一環です。この程度の殺気を受け止められず、お嬢様の婚約者として隣に並び立つことはできません」
「えっと……なんで普段は城にいるお二人が、こんな場所に?」
自分の記憶が正しければ、聖女様は普段城の中で訓練をするので外に出ることはないはず。
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「説得できなかったら、どうなっていたんですか?」
「お嬢様は怒りのままに全力の〈光魔法〉を使用して、この一帯を消し飛ばしていたかもしれません」
そのレベルの攻撃は、俺も巻き込まれていたのではないか。
横目で聖女様を見たら、彼女は顔を両手で覆い隠し反省していた。
「あの程度で我を見失うなんて、お恥ずかしい限りです」
「私としては別に巻き込まれて貴様が消えても構わなかったのだが、そうなるとお嬢様の綺麗な手を汚すことになるからな。非常に残念だが全力で止めざるを得なかった」
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