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周囲にいる全ての狩人達の時が止まった。
そう表現するのが一番適切だろう、と彼等の視線を一身に受けながら思った。
まぁ、ランクアップしたら天使達がいる大聖堂に名前付きで掲示されるのだ。
自然と毎日誰がランクアップしたのか確認するクセがついている狩人達が、誰もが知っている最底辺の〈スキルゼロ〉がGからFに上がったのを目撃したら絶対に国中で話題になる事は間違いない。
故にこの場に居る者達は、先ず目の前にいる自分が本物なのか疑うような目つきをする。
当然の事なのだがそれが何だか可笑しくて、俺は振り抜いた剣を正眼に構え直し一言だけ発した。
「まさか自分でバラす事になるなんて、思わなかったな」
「お、おまえ、本当に〈スキルゼロ〉なのか……」
「うん? まだ疑っているのか、目の前にいるのが本物なのか偽物なのかは直ぐに分かるだろ」
「嘘だ……限界突破をしていないGランクごときが、〈アッシュウルフ〉を二十体も倒せるはずがない! それに俺様の火球をただの斬撃で切り裂くなんて、そんな格上の芸当ができるわけがない!」
「そう言うなら、これを見ろよ」
話にならないのでステータスを表示させて、見せると不味いレベルやステータスの数字は隠して狩人である事を証明する名前だけを拡大する。
この場にいる全員に『ソウスケ・カムイ』の名前が見えるように大きくしたら、彼等は「嘘だろ、本物の〈スキルゼロ〉なのか!?」と驚きの声を上げた。
ステータスに記載される名を偽る事は例え伝説の王でもできない。
誰でも知っている一般常識である為に、彼等は受け入れがたい事実を前に固まってしまう。
だがその中で、一人だけ認めない者がいた。それは自身の攻撃を防がれた、魔人族の男だった。
「嘘だ、噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ! 〈スキルゼロ〉なんかが俺様の魔法を防いだなんて嘘だ! オマエみたいな無能で誰も相手にしないゴミくず野郎が、格上みたいなことできるわけないだろ!?」
口から出てくる言葉は、全て目の前にいる無能を否定する内容ばかりだった。
動揺しながらも彼は、まるでモンスターと相対するのような目つきで周囲に火球を複数生成させる。
その数は十個ほど、数日前の自分なら全身やけどでは済まない数だ。
「擬態するスライムだ、きっとそうに違いない!」
「いや、オマエなに言ってんだ。ステータスの身分証明を偽る事が出来ないのは、狩人なら誰もが知ってる常識だろ……」
どうやらプライドを優先し、俺の事を特殊なスライムだと思い込む事にしたらしい。
愚かにも完全に冷静さを失っているケヌマは、自身の力だけでは足りないと判断して周囲に協力を求めた。
「化けの皮を剥がしてやる! 相手は巧妙に擬態するレアスライムだ、オマエ等も協力しろ!」
ヤツの怒声に応じて、周囲の狩人達がハッと意識を現実に引き戻し一斉にスキルを発動する。
そして全員〈スキルゼロ〉が、第二エリアにいるはずがないというヤツと同じ結論を出したらしい。
──手元に『火』『水』『土』『風』等の属性を呼び出し刃状や球状等に変換して放つ〈属性魔法〉。
──小中サイズの様々な獣を一体だけ呼び出し使役する〈召喚魔法〉。
──周囲の精霊達の力を一部だけ借りて行使する〈精霊魔法〉。
──武器の性能や自身の身体能力を強化する〈能力強化〉。
自分が数日前にどれだけ求めても、けして手に入る事のなかった様々なスキルを前にして剣を握る手に自然と力が入る。
胸の内側から込み上げてきたのは、困惑でもなく羨望でもなく──純粋な嫉妬であった。
オマエ等はそれだけの力を持ちながら、こんなしょうもない事に軽々行使してしまうのか。
研鑽することなく、ただ力を発動させて相手に叩きつける。
最初は良かったのかも知れないが、それは思考を放棄した愚かな使い方。
研究して『王達』のように力の使い方を工夫をしたら、もっと強くなれるはずなのに。
力に溺れて怠惰な道を歩んだ結果が、コレなのかと。
強い苛立ちを覚えながら全ての攻撃を見切った俺は、相棒の剣を手にこの半年間で培った技を魅せつける。
ただ真っすぐ放たれた、愚直な攻撃なんて恐れるに足らず。
先日オリビアの放っていた、高密度の雷の方が一億倍恐ろしい。
針の意図を通すような回避と受け流しを高い敏捷値で全てこなし、召喚獣は剣技を用いて片っ端から順に切り倒す。
これは〈王の冒険譚〉の中に出てくる一人、〈蒼海の王〉が使用する究極防御〈流水の型〉を再現したもの。本物とは天と地の差があるけど。
──我は流れる水が如く、全てを受け流し降り掛かる災厄は過去とならん。
全てには流れがある。穏やかな流れから激しい流れまで。
王は物語の中でこう語った、柔軟な水となり流れを制した者こそ最強であると。
集中して目だけでなく肌でも感じろ。王と同じ〈感知能力〉をフル活用し流れを掌握するのだ。
何度もスライムの硫酸を相手に練習してきた。
向かってくる魔法の威力は桁違いだけど、根本的な受け流しの原理は変わらない。
剣の側面で受けて、炸裂するコンマ数秒以内で後ろに流す。
かなり緊張していたが成功した。後はひたすら同じことを繰り返すだけだ。
一つ、二つ、三つ。迫る攻撃は一度も当たることなく次々に後方に消えていく。
また一つ強くなった実感を得ると、一斉攻撃を行ったが故に砂埃が巻き上がり全てが見えなくなる。
狙いをつける事すら出来なくなった攻撃は、互いに干渉して俺に届く前に相殺される始末。
回避行動すら必要なくなると、後は最低限の防御だけで飛んでくる攻撃を対処するだけとなった。
誰かが「やったか!?」というお手本のようなフラグ台詞を口にすると、攻撃が止んだ後に砂埃の中から無傷で姿を現すと。
「な……そんなバカな……」
「驚くことか? あんな工夫もなしに向かって来る攻撃、当たる方が難しいと思うぞ?」
首謀犯の呟きに応えたら、他の奴らは片膝を着いた。
「……あ、有り得ない」
「この人数の攻撃で無傷だなんて……」
「高ランクのモンスターだからよ。じゃなきゃ、こんなの絶対にオカシイわ!」
流石に十数人規模の攻撃を、一発も被弾しなかった事に全員大きな衝撃を受けたようだ。
オマケに過度な連続使用によって再使用できない程に、彼等は自身の精神力を大きく消耗している様子。
顔は真っ青で肩を大きく上下しながら、苦しそうに呼吸をしている。
これが下級を脱する為に、狩人が覚えなければいけないスキルに依存してはいけない理由の一つ。
スキルは強力な反面、使用する度に肉体が宿す『魔力』ではなく『精神力』を削られる。
気を付けなければ意識を保つ事すら困難になり、最悪モンスターが出現する戦地のど真ん中で気を失ってしまう。
自分よりもその事を知っているはずの狩人達は、愚かにも一番気を付けなければいけないミスをしてしまったのだ。
故に彼等は慌てて腰から『スピリットポーション』を取り出し、消耗した精神力の回復を図ろうとする。
だが精神力を回復する薬は一、飲めば直ぐに効果が出る万能アイテムではない。
最低でも後一分間は、まともに動くことができないはず。
こんなミスをモンスターの前でしたら致命的に繋がりかねない。
まったく、Fランクになるまでに一体何を学んできたのか。
見下ろす者と見下ろされる者、立場の逆転した構図は胸中に少しばかり愉悦の感情が広がった。
……さて、此処から先はどうしたものか。
彼等は事の真偽を確かめずに、一方的に攻撃を仕掛けてきた。離脱してアスファエルに報告をしたら、それだけで悪質な殺人未遂でこの場にいる全Fランク達は重いペナルティを受ける事になるだろう。
鉄拳制裁くらいの仕返しをする事も考えたが、膝をついたコイツ等を見下して愉悦気分を味わえただけで満足している。
甘い考えだと自分でも思う。でもハッキリ言って、これ以上は向上心の欠片もない狩人達に構っていられない。
自分の目標は遥か彼方にあるSランク。聖女様に相応しい狩人になる為にも、こんな場所で立ち止まっている時間はないのだから。
背中を向けて国に向かって歩き出す。昼休憩のついでに通報してやろうと思っていたら、背後から何か瓶が砕け散るような音が聞こえた。
「テメェ、モンスターのくせに見下してんじゃねぇぞ! パワーアップした俺様の最強魔法で跡形もなく消し飛びやがれぇ!!」
背後から高温の熱を感じる。振り返った先には、魔法によって巨大な炎の竜が形成されていた。
込められている魔力は、先程とは比較にならない程に増幅されている。とても同じ人物が使用している魔法だとは思えなかった。
一体何が起きているのか、注目すると足元に何やら瓶の残骸が散らばっている事に気が付く。
急に強くなった魔法。足元に散らばっている瓶の残骸。この二つから連想できる現象は一つしかない。
まさか。まさかだとは思うがコイツ、──強化系ポーションを服用したのか?
薬で限界以上まで絞り出した影響か、魔人族の男の額には脂汗が大量に浮かんでいる。
アレでは一分と持たないだろう。憎しみを燃料に発動させた魔法は、制御を離れ爆発するギリギリの状態で解き放たれた。
まるで奴の怨念が宿ったかのように、火竜は動物的な動きで迫って来る。
威力としては恐らくEランクくらい、見た感じ今度は受け流すのが難しそうだった。
となると残された道は、現状では一つしか無い。ローブを脱いだ俺はアイテムボックスに収納すると力を発動し黒衣を纏う。
見に纏った最強の防御力を誇る上下統一された黒衣は、更に両手に黒いグローブを形成。
レベル200に至ったからなのだろうか。グローブの感触を確かめながらタイミングを見計らい、
───右腕を鋭く左から右に一閃した。
「まともにコントロールもできない力を使っても、今の俺には届かないぞ」
拳で払った燃える火竜は、横殴りの一撃を受けると呆気なく消し飛ぶ。
違法のポーションまで使用し、文字通り自身の全てを用いた大技は剣を使うまでもない程に粗末だった。
一撃で打ち消された魔人族の男は、反動で吐血するとその場に崩れ落ちた。
そう表現するのが一番適切だろう、と彼等の視線を一身に受けながら思った。
まぁ、ランクアップしたら天使達がいる大聖堂に名前付きで掲示されるのだ。
自然と毎日誰がランクアップしたのか確認するクセがついている狩人達が、誰もが知っている最底辺の〈スキルゼロ〉がGからFに上がったのを目撃したら絶対に国中で話題になる事は間違いない。
故にこの場に居る者達は、先ず目の前にいる自分が本物なのか疑うような目つきをする。
当然の事なのだがそれが何だか可笑しくて、俺は振り抜いた剣を正眼に構え直し一言だけ発した。
「まさか自分でバラす事になるなんて、思わなかったな」
「お、おまえ、本当に〈スキルゼロ〉なのか……」
「うん? まだ疑っているのか、目の前にいるのが本物なのか偽物なのかは直ぐに分かるだろ」
「嘘だ……限界突破をしていないGランクごときが、〈アッシュウルフ〉を二十体も倒せるはずがない! それに俺様の火球をただの斬撃で切り裂くなんて、そんな格上の芸当ができるわけがない!」
「そう言うなら、これを見ろよ」
話にならないのでステータスを表示させて、見せると不味いレベルやステータスの数字は隠して狩人である事を証明する名前だけを拡大する。
この場にいる全員に『ソウスケ・カムイ』の名前が見えるように大きくしたら、彼等は「嘘だろ、本物の〈スキルゼロ〉なのか!?」と驚きの声を上げた。
ステータスに記載される名を偽る事は例え伝説の王でもできない。
誰でも知っている一般常識である為に、彼等は受け入れがたい事実を前に固まってしまう。
だがその中で、一人だけ認めない者がいた。それは自身の攻撃を防がれた、魔人族の男だった。
「嘘だ、噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ! 〈スキルゼロ〉なんかが俺様の魔法を防いだなんて嘘だ! オマエみたいな無能で誰も相手にしないゴミくず野郎が、格上みたいなことできるわけないだろ!?」
口から出てくる言葉は、全て目の前にいる無能を否定する内容ばかりだった。
動揺しながらも彼は、まるでモンスターと相対するのような目つきで周囲に火球を複数生成させる。
その数は十個ほど、数日前の自分なら全身やけどでは済まない数だ。
「擬態するスライムだ、きっとそうに違いない!」
「いや、オマエなに言ってんだ。ステータスの身分証明を偽る事が出来ないのは、狩人なら誰もが知ってる常識だろ……」
どうやらプライドを優先し、俺の事を特殊なスライムだと思い込む事にしたらしい。
愚かにも完全に冷静さを失っているケヌマは、自身の力だけでは足りないと判断して周囲に協力を求めた。
「化けの皮を剥がしてやる! 相手は巧妙に擬態するレアスライムだ、オマエ等も協力しろ!」
ヤツの怒声に応じて、周囲の狩人達がハッと意識を現実に引き戻し一斉にスキルを発動する。
そして全員〈スキルゼロ〉が、第二エリアにいるはずがないというヤツと同じ結論を出したらしい。
──手元に『火』『水』『土』『風』等の属性を呼び出し刃状や球状等に変換して放つ〈属性魔法〉。
──小中サイズの様々な獣を一体だけ呼び出し使役する〈召喚魔法〉。
──周囲の精霊達の力を一部だけ借りて行使する〈精霊魔法〉。
──武器の性能や自身の身体能力を強化する〈能力強化〉。
自分が数日前にどれだけ求めても、けして手に入る事のなかった様々なスキルを前にして剣を握る手に自然と力が入る。
胸の内側から込み上げてきたのは、困惑でもなく羨望でもなく──純粋な嫉妬であった。
オマエ等はそれだけの力を持ちながら、こんなしょうもない事に軽々行使してしまうのか。
研鑽することなく、ただ力を発動させて相手に叩きつける。
最初は良かったのかも知れないが、それは思考を放棄した愚かな使い方。
研究して『王達』のように力の使い方を工夫をしたら、もっと強くなれるはずなのに。
力に溺れて怠惰な道を歩んだ結果が、コレなのかと。
強い苛立ちを覚えながら全ての攻撃を見切った俺は、相棒の剣を手にこの半年間で培った技を魅せつける。
ただ真っすぐ放たれた、愚直な攻撃なんて恐れるに足らず。
先日オリビアの放っていた、高密度の雷の方が一億倍恐ろしい。
針の意図を通すような回避と受け流しを高い敏捷値で全てこなし、召喚獣は剣技を用いて片っ端から順に切り倒す。
これは〈王の冒険譚〉の中に出てくる一人、〈蒼海の王〉が使用する究極防御〈流水の型〉を再現したもの。本物とは天と地の差があるけど。
──我は流れる水が如く、全てを受け流し降り掛かる災厄は過去とならん。
全てには流れがある。穏やかな流れから激しい流れまで。
王は物語の中でこう語った、柔軟な水となり流れを制した者こそ最強であると。
集中して目だけでなく肌でも感じろ。王と同じ〈感知能力〉をフル活用し流れを掌握するのだ。
何度もスライムの硫酸を相手に練習してきた。
向かってくる魔法の威力は桁違いだけど、根本的な受け流しの原理は変わらない。
剣の側面で受けて、炸裂するコンマ数秒以内で後ろに流す。
かなり緊張していたが成功した。後はひたすら同じことを繰り返すだけだ。
一つ、二つ、三つ。迫る攻撃は一度も当たることなく次々に後方に消えていく。
また一つ強くなった実感を得ると、一斉攻撃を行ったが故に砂埃が巻き上がり全てが見えなくなる。
狙いをつける事すら出来なくなった攻撃は、互いに干渉して俺に届く前に相殺される始末。
回避行動すら必要なくなると、後は最低限の防御だけで飛んでくる攻撃を対処するだけとなった。
誰かが「やったか!?」というお手本のようなフラグ台詞を口にすると、攻撃が止んだ後に砂埃の中から無傷で姿を現すと。
「な……そんなバカな……」
「驚くことか? あんな工夫もなしに向かって来る攻撃、当たる方が難しいと思うぞ?」
首謀犯の呟きに応えたら、他の奴らは片膝を着いた。
「……あ、有り得ない」
「この人数の攻撃で無傷だなんて……」
「高ランクのモンスターだからよ。じゃなきゃ、こんなの絶対にオカシイわ!」
流石に十数人規模の攻撃を、一発も被弾しなかった事に全員大きな衝撃を受けたようだ。
オマケに過度な連続使用によって再使用できない程に、彼等は自身の精神力を大きく消耗している様子。
顔は真っ青で肩を大きく上下しながら、苦しそうに呼吸をしている。
これが下級を脱する為に、狩人が覚えなければいけないスキルに依存してはいけない理由の一つ。
スキルは強力な反面、使用する度に肉体が宿す『魔力』ではなく『精神力』を削られる。
気を付けなければ意識を保つ事すら困難になり、最悪モンスターが出現する戦地のど真ん中で気を失ってしまう。
自分よりもその事を知っているはずの狩人達は、愚かにも一番気を付けなければいけないミスをしてしまったのだ。
故に彼等は慌てて腰から『スピリットポーション』を取り出し、消耗した精神力の回復を図ろうとする。
だが精神力を回復する薬は一、飲めば直ぐに効果が出る万能アイテムではない。
最低でも後一分間は、まともに動くことができないはず。
こんなミスをモンスターの前でしたら致命的に繋がりかねない。
まったく、Fランクになるまでに一体何を学んできたのか。
見下ろす者と見下ろされる者、立場の逆転した構図は胸中に少しばかり愉悦の感情が広がった。
……さて、此処から先はどうしたものか。
彼等は事の真偽を確かめずに、一方的に攻撃を仕掛けてきた。離脱してアスファエルに報告をしたら、それだけで悪質な殺人未遂でこの場にいる全Fランク達は重いペナルティを受ける事になるだろう。
鉄拳制裁くらいの仕返しをする事も考えたが、膝をついたコイツ等を見下して愉悦気分を味わえただけで満足している。
甘い考えだと自分でも思う。でもハッキリ言って、これ以上は向上心の欠片もない狩人達に構っていられない。
自分の目標は遥か彼方にあるSランク。聖女様に相応しい狩人になる為にも、こんな場所で立ち止まっている時間はないのだから。
背中を向けて国に向かって歩き出す。昼休憩のついでに通報してやろうと思っていたら、背後から何か瓶が砕け散るような音が聞こえた。
「テメェ、モンスターのくせに見下してんじゃねぇぞ! パワーアップした俺様の最強魔法で跡形もなく消し飛びやがれぇ!!」
背後から高温の熱を感じる。振り返った先には、魔法によって巨大な炎の竜が形成されていた。
込められている魔力は、先程とは比較にならない程に増幅されている。とても同じ人物が使用している魔法だとは思えなかった。
一体何が起きているのか、注目すると足元に何やら瓶の残骸が散らばっている事に気が付く。
急に強くなった魔法。足元に散らばっている瓶の残骸。この二つから連想できる現象は一つしかない。
まさか。まさかだとは思うがコイツ、──強化系ポーションを服用したのか?
薬で限界以上まで絞り出した影響か、魔人族の男の額には脂汗が大量に浮かんでいる。
アレでは一分と持たないだろう。憎しみを燃料に発動させた魔法は、制御を離れ爆発するギリギリの状態で解き放たれた。
まるで奴の怨念が宿ったかのように、火竜は動物的な動きで迫って来る。
威力としては恐らくEランクくらい、見た感じ今度は受け流すのが難しそうだった。
となると残された道は、現状では一つしか無い。ローブを脱いだ俺はアイテムボックスに収納すると力を発動し黒衣を纏う。
見に纏った最強の防御力を誇る上下統一された黒衣は、更に両手に黒いグローブを形成。
レベル200に至ったからなのだろうか。グローブの感触を確かめながらタイミングを見計らい、
───右腕を鋭く左から右に一閃した。
「まともにコントロールもできない力を使っても、今の俺には届かないぞ」
拳で払った燃える火竜は、横殴りの一撃を受けると呆気なく消し飛ぶ。
違法のポーションまで使用し、文字通り自身の全てを用いた大技は剣を使うまでもない程に粗末だった。
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