純白のガンブレイダー 〜TSアルビノ美少女、産廃職でエンジョイプレイします〜

神無フム

文字の大きさ
56 / 68
第二章

巻き戻った人生

しおりを挟む
 本日の作業配信は、少し趣向を変えてみた。
 弾丸の在庫は大量にあるので、感覚がマヒしつつある彼等に〈ガンブレイダー〉の苦行を教えようと思う。

 テーブルの上に用意したのは、リリーさんから購入した簡易式の作成道具。
 ほとんどの人達が『料理するの?』とコメントしている中。

 これがなにか知っている者達は『おいマジか……』と察するコメントをしていた。
 有識者の方々、察しの通りこれからするのはガンブレ道で誰もが経験する作業だよ。

「本日は趣向を変えて、弾丸を12発だけ正規の手法で手作りしようと思います」

 この発言を聞いて身構えていた人達が安心する。
 もしかして普段100発にシンボルを描く作業をしているから、100発作る耐久配信をすると思われたのか。

 ……まぁ、12発でも最低2時間は掛かるんだけどね。
 苦い笑みを微かに頬に含み、ボクはカメラにお辞儀をした。

「それでは始めます」

 先ずは鋼片を10個出して、事前にスイッチを入れて高温と化している鍋の中に入れる。
 クルクル専用の棒でかき混ぜていると、10分くらいで鋼は溶けてドロドロの液体になった。

「しっかり溶かして下さいね。じゃないと次の作業に移行する際に失敗判定でロストしますから」

『なにそれ怖い』

『そうなんだよな、これが一番厄介』

 生産職業の人達は、このゲーム変なところがシビアなんだよなと同意する。
 道具屋に足を運んだ際、たまにアメリアさんがアイテムロストして悲鳴をあげているのもこれが原因だ。

「はい、完全に溶け残りがないか確認したらすぐに次の作業に入ります。ここでもたつくと、失敗判定くらってロストするので気を付けて下さい」

『クソゲーかな?』

 流れるコメントに、ボクは内心同意した。
 初めてチャレンジして失敗判定で半分くらいの鉄片をロストさせた時は、しばらく体育座りして宇宙の法則について考えたものだ。

 これを型に流し入れて固まるのを15分待つ。
 そうして完成したのは、通常弾丸を作るのに必要不可欠な一つの素材『鋼の塊』。

「ここまできたら一安心です、失敗はないので肩の力を抜いて仕上の機械にいれます」

 ずっしりと重たい塊を、なにやらよく分からない『かき氷機』みたいな機械にセットしてハンドルを回す。
 5分間ハンドルを回していると、最後に三つの穴からニョキッと弾丸に加工された〈スチール・ブレット〉が出てきた。

「はい、先ず最初の弾丸ができました!」

 30分も掛けて出来たのは、ベータ版の頃と同じ3発の弾丸。
 メタちゃんならば1分も掛からず、使った素材が10発の弾丸になる。

 本当に正規手法は時間が掛かるし、素材から作れる弾丸の個数も少ない。
 これに何の意味があるんだと冷静になりかけたボクは、考えないよう努めて次の作業を考える。

 ここから9発作るのに、大体1時間と30分掛かる計算。
 だから今回は趣向を変えて、珍しく視聴者さんの質問に答える雑談を行う事にした。

「後三セット作るので話題を募集して、それにボクが答えます。聞きたい事があったらどんどん書き込んでください」

『好きな人はいるの?』

「いません、尊敬する人でしたらシース姉さんです」

『好きなタイプは?』

「かっこよくて優しくて、器が大きくて理解力のある人です」

『嫌いなタイプは?』

「嫌いなタイプですか。……そうですね、強いて言うならイジメをする人は嫌いです」

 アルビノで女の子っぽい見た目で男子の服装。
 当然だけどボクは真っ先に、子供達から異端な存在として目をつけられた。

「実は初等部一年生の時に、一度だけクラスメイトからイジメられたんですよ。内容はちょっと配信では言えないですね」

 上履きに画鋲がびょう仕掛けられたり。
 歩いていると誰かに後ろから突き倒されたり。
 今思い出すと、色々と大変だったな……

『『『『は?』』』』

 流れでポロッと口から出てしまった内容に、急にコメント欄がイジメっ子達に対する怒りに染まった。

 ……あ、とても不味い。
 みんなあり得ないって切れ散らかしている。
 10万人近い人達の怒り爆速コメントは、もはや恐怖を感じるレベルだった。

「ストップストップ! 落ち着いて下さい、初等部の話でもう終わった事です。それにイジメは同じクラスにいた女の子が、怒って助けてくれましたから!」

『良かった』

『その女の子、国民栄誉賞をあげるべきでは?』

「国民栄誉賞は分からないけど、その子はとても強くて優しくていい子でしたよ」

 過去形の言い方に、何人かが反応する。

『良い子だった?』

『今も交友はあるの?』

「いいえ、二年生になるタイミングで転勤があって海外に引っ越しちゃいました。元々両親が海外の方だったみたいで。連絡先は聞こうと思ったんですが日本に帰りたくなるからって、最後まで教えてもらえませんでした」

『また会えると良いね』

 温かいコメントで溢れる一覧。
 人々の優しさを前に、ボクは頬が緩んだ。

「ありがとうございます、もしも会えたらお礼を言いたいです」

 そんなこんなで話している内に、時間はあっという間に過ぎ去り。
 無事に12発の弾丸を作製する事に成功した。

 ピロリーンと音が鳴り、丁度レベルがカンストする。

 ステータス画面を開いて、レベルアップボーナスを全てINTに投入。
 INTが遂に〈ワイズマンリング〉の効果と合わさり400となった。

 するとベータ版ではなかった、新たなシンボルが追加される。

 ……〈アクセラレーション〉?
 銃口を向けた先に加速するゲートを設置して、そこを通った自身や砲撃の速度を一時的に二倍する?

 一種の加速装置みたいなものか、中々に面白い効果だ。
 こんどミカゲ先輩とタッグ専用ダンジョンに挑むので、その時にお試しで使ってみようか。

 というわけで最後にシンボルを描く作業を行う事に。
 コメント欄の質問に応じながら描いていると、あっという間に作業は終わった。

「本日は来ていただき誠にありがとうございます。要望とかあったら、できる範囲で応えようと思います」

『妹シチュエーションでASMRを!』

「恥ずかしいんでダメです」

 わざわざポイントを使った強調コメントに笑顔で答え、ボクは配信を終了した。






「完璧っぽい睦月さんも色々あったんだ……」

 配信終了と同時にログアウトした弥生やよい御影みかげは小さなため息を吐く。
 睦月星空が中等部と高等部で人気があるのは、自分の耳にも入ってきていた。

 しかし初等部でイジメられていたなんて、今まで一度も聞いたことがなかった。
 でも同時に、どこか納得もできる。

 なんせ物語の中から出てきたかのように、真っ白で細くて綺麗な顔立ちをしているのだ。
 下手な注目は、ターゲットにされやすい。

「イジメか……ミカゲは、逆にそういうのとは無縁だったなぁ……」

 小さい時から現実で人と関わるのが下手だった。
 皆が輪になっている所に入れず、いつも諦めて一人で隅っこにいた。

 そうしている内に初等部、中等部と友人が一人もできないまま時間だけが過ぎ去り。
 気がつけば高等部になっていた。

 当然だけど、リアルで友人は一人もいなかった。
 ただずっと家で一人、フルダイブ型VRゲームで遊んでいた。

 このまま高校生活を終える。
 そう思っていた、ある日。

 目が覚めるとミカゲは、二年生から一年生に戻っていた。
 一年間がまるで夢だったかのように、時間が巻き戻ったのだ。

 更にスマートフォンを介して、人類に神様みたいな存在が語り掛け。
 人類に〈ディバイン・ワールド〉という新世界がもたらされた。

 ゲーム内の資金をリアルマネーにできるという事で、あっと言う間にダンジョン攻略は人類にとって無くてはならないものになった。
 そしてゲームが授業にも取り組まれる方針が決まった事で、ミカゲの二度目となる高校一年生活も大きく変わった。

「現実のミカゲはダメ人間だけど、仮想世界なら輝けるから……」

 やり直すチャンスだと思った。
 これも夢だったとしても、皆に認めてもらいたい。

 ただその一心でひたすらに頑張った。
 クラスの皆から「すごい」と言ってもらいたくて、ミカゲはレベルを上げて強くなっていった。

 すると強いチームに声を掛けてもらえて、その人達と第一層攻略を成し遂げる事ができた。
 クラスの人達や家族からもスゴイと褒めてもらえた。

 このまま第二階層を攻略したら、もっと皆から称賛してもらえる。そう思っていたのだが。

 ──指が震える、恐怖に震えている。

「やっぱり人生って、上手くいかないよね」

 頭元にあるVRヘッドセットを撫で、ミカゲは小さなため息を一つ。
 脳裏をよぎったのは、夏休みが終わるまで自身が所属していたチームメンバー達の笑顔。

「今度は大丈夫だよね……ミカゲの居場所、なくなったりしないよね……」

 不安を吐露とろして布団の中で丸くなる。
 イヤホンを手にした彼女は癒やしを求め、録音している星空の歌に現実逃避した。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...