クズだが強いし好き勝手やれる俺の話

じぇみにの片割れ

文字の大きさ
51 / 57
アルベルト・バーンシュタインその7:地獄の1日

作戦会議と7号の説得

しおりを挟む
「アルベルトさーん」
「あ……?」

 クソガキの声で俺は目が覚めた。寝ぼけ眼のまま辺りを見てみると物騒な女とガキは消えていた。どうやら俺の作戦が完全に成功したらしい。ざまぁみろって感じだ。何も仕返しをできていない気がするが無視。
 どっと疲労感が襲ってきた。4号を破壊できるような超次元級の破壊兵器を振り回すような女を前にして精神崩壊しなかった自分を褒めてやりてえ。そんな奴をやり過ごしたんだから疲れが来るのは当然だ。
 元々疲れを取るために散歩してたってのにこれじゃ逆効果じゃねえか。なんだってんだちくしょう。

「目についた女を襲おうとするからでしょ」

 1号が俺の不手際を指摘しやがる。あんなにでかいハズレを引くだなんて思うわけねえだろ。
 4号の身体が何でできてんのか知らねえが治るんだろうか。ユラじゃ無理そうだな、こいつは人間治療専門だ。
 やれっかなあ、とか思いながらユラを見る。でこに怒りマークがついていやがる。

「アールーベールートーさーん!」

 爆発0.5秒前だったので耳を塞いでおく。

「なんで僕からいきなり離れて走り出したんですかしかもすぐに追いかけたってのにこんなところで気絶してるし僕がいないとアルベルトさんはまともに立ってることもできないんですかだからあれだけ僕のところから離れないでって何度も言ってるのにアルベルトさんときたら何回も何回も──!!」

 ブチギレるユラのお小言を聞き流しながら俺は考えていた。あのクソアマを何とかしてやりてえ。身体付きはいいから獲物としては問題なし。
 だがあの守護魔法付きの武具が厄介過ぎる。まともな物理戦闘を仕掛けようとしたのが失敗だったな。4号や花で精神汚染の方向にしておけば良かったのかもしれねえ。鎧で武装はしてたが兜はつけてなかったあたり、嗅覚や口経由なら毒物を叩き込むこともできるはずだ。

 次の問題は俺の気絶要因となったショタ魔術師だ。多分、あいつは逆立ちして両腕で成層圏までジャンプしても勝てねえ。俺が持ってる召喚物を片っ端から、それこそ6号まで引っ張り出しても多分無理だ。6号とタイマンになったら勝てるかもしれねえが、1対1になったらあのショタは逃げ出すだろうし、俺が付随してたら俺を狙ってくる。そして俺は狙われたら1億パーセント死ぬ。小数点以下100億桁ぐらいの確率で相手が俺の召喚物の豊富さに対応が遅れに遅れまくったら勝てるが、ちょっと想像できねえ。

 となるとやるべきことは1つ。あの女が1人になるのを待って襲う。これだ。俺史上最悪の結末としてはあの女に何かあった瞬間にあのショタ魔術師がすっとんできて俺がこんがりと丸焼きにされる、というのがあるが……。
 俺はまだキレてるユラを見た。

「聞いてるんですかアルベルトさん!」
「お前、俺が死にかけてたら一瞬で治せるのか?」
「え……そうですけど……」

 確認は取れた。これで残った懸念は俺が一瞬でも生きていられるかどうかだ。
 あ、ちげえ。この作戦は俺がユラを連れて行くってことだが新しく2つの問題が生じることに俺は気がついた。
 1つ、ユラが同意しない。2つ、なんとかユラを説得したとしてもユラが殺されたら駄目。

 うーーーーーーーーーーーーーーーん。

 こういうときは作戦会議に限る。

「お前らどうしたらいいと思う?」

 ぽん、と俺の周りに召喚物の擬態たちが現れた。指先サイズの触手の1号に、同じサイズの獣の顎だけの2号。軍服の胸元には一輪の花。黒い霧に小さなドラゴン。小さな球体の4号は穴が空いたせいかばってんマークがついている。

「私、マスターを守る自信がないわ」「わっちもじゃ。あの鎧は叩いてもこっちが痛そうじゃ」「花粉は試してもいいですけどぉ、蔦は無理そうですねぇ」「吾輩は既に痛いのだ。催眠はやってみないと分からないのだ」「守護魔法とやらがどんなものか分からんので食えるかも分からん」「強そうだし、やめとこ?」

 全員揃って消極的だった。特に何度も触手が弾かれた1号は落ち込んでる始末。

「そんな落ち込むなって。そういうときだってある」

 俺は頭の上に乗っかっていた1号を指でつまんで指先で撫でてやった。「そうね……」と1号の声はへこんだまま。心に傷ができちまったらしい。高次元生命体の心とかよくわかんねえが。

「アルベルトさん、また何か悪さしようとして失敗したんですね! しかもまだやろうとしてるんですね!」

 ユラが怒り出す。こいつのことを忘れてた。まずはこいつの説得からしねえと。

「うるせえなあ。そんな簡単に生き方が変えられるわけねえだろ。そもそも俺についてくるんなら俺に従えよな」
「アルベルトさんのやってること放置してたらアルベルトさんの命がいくつあっても足りないじゃないですか!」
「それを何とかするためにお前がいるんだろーが」

 むむむ、と唸るユラ。ちょっとおだてる作戦でいってみるか。

「いいかユラ。俺ぁお前が言うとおりどうしようもねえ男なんだよ。お前がいなきゃダメなんだよ。このまま俺がどっかにすっ飛んでいって勝手に死んじまってもいいのか?」
「それは……嫌ですけど……」
「だろ。俺はダメ人間だからガス抜きがどーしても必要なわけよ。そんなダメ人間の俺のダメなところをお前が埋めてくれるんだろ? そういうところで俺はお前を必要としてるってわけよ」

 さらに唸るユラ。もう1押しだな。

「俺のわがままに付き合ってくれるようなやつはお前ぐらいしかいねえんだよ。お前が俺と一緒に悪さしてくんねえと俺は困っちまうんだ。な、頼むよ」
「そ、そんなに僕が必要なんですか……?」
「ああお前がいなきゃ俺ぁダメだ。それはお前が1番よく分かってることだろ?」

 ユラが帽子をぎゅっと深く被る。照れてるサインだ。いけるぞ!

「俺にはお前が必要なんだよ、ユラ」
「…………しょ、しょうがないですね。たまには付き合ってあげますよ」

 よし、勝った。
 実際は馬鹿みてえにお人好しなこいつが騙されねえように俺が必要な気がするがな。悪い女に引っかかりまくるだろこいつ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...