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第四章 諦めない者たち 妖魔の国編

第七十五話 妖魔の町

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 少し動けるようになた俺は改めて身体を見た。
 
 全身酷い傷だった。特に腹だ。本当に真っ二つにされたんだな。
 自分の身体ながら痛々しい。

「どう? かなり効いたでしょ?妖魔の特注薬だよ」
「ああ、この薬で俺の身体は治ったのか」
「まさか、真っ二つになったんだよ。その薬だけで治るわけがない。
どうやって治った? っていうのは聞かないでね。生きてるんだからいいじゃない」
「……わかった。感謝する。それよりも妖魔ってのは何なんだ?」
「それは人間て何? とかゴブリンて何? とか聞いてるのと同じじゃないかな。答えられないでしょそんなの」
「それは確かにそうか。その存在が何であるかなど、どうでもいい話だったな」
「そういうこと。それにルイン。君は半妖半幻。恐らくさっき言ってたメルザという子の力の一端なんだろうけどね」
「わからない。俺はあまりにもこの世界について無知すぎるのだけはわかっている。
地底に住む者がいたり、幻術なんてものがあったり
でかい化け物がいたり。生まれ変わってから不思議の連続だ」

 それが嫌と言うわけじゃない。だが争わない生活の中で生きてきた俺には少々刺激が強すぎる世界だ。

「君がこの世界に来る前の話を色々聞いてみたいけど、そろそろこの領域から出ようか。アルカーン、お願い」
「ああ、やっと出て行ってくれるか。時間凍結の根城よ
我が意を介して解放せよ。時間評決砕きアイシクルクラッシュ

 パリーンという音とともに目の前の視界が砕け散る。

 砕けたものが張り付いて行くように視界が戻るが先ほどとは全く別の場所へと
移ったのがすぐわかった。
 
 といってもここもかなり奇妙な場所だ。

「兄は時計が好きでね。ここでずっと時計を眺めている。
趣味は時間のずれた時計を直したり、時計を製作したり。
僕にはさっぱりわからないけどね。テトラシルフィードも
時計なのさ」
「約束通りに貰っていくぞ。ああ、君もまた美しい……!」
「ああやって日がな時計を愛でているんだ。それじゃアルカーン、僕らはちょっと出かけてくるよ」
「待て弟よ。お前からは代価を貰ったが、そっちのからは貰っていない。ルインだったか。貴様も私に代価を払え」
「えー、テトラシルフィードをあげたじゃんか。それでいいでしょ」
「いや、俺も何か渡したいんだがそういえば俺の荷物は」

 といって気付いた。裸だ。俺。

「すまん、先に服が欲しい。俺の衣類や持ち物はどこだ」
「ないよ。捕縛網しか。フェルドナージュ様に謁見する服のために売った」

 勝手に売るなよと思ったが、それを言う資格が俺にはないな。

「……そうするとお兄さんに支払えるものは今はないな」
「契約だけで構わん。後日請求させてもらう。ただし私が興味を引く物を二つ用意しろ」

 そう言ってアルカーンはさらさらと紙に何か書いて俺に渡した。

「わかった。助けてもらったんだ。それくらいはどうにかするさ」
「僕にもお礼あるよね?」
「……ああ、リルがそう望むのであればそうしよう」
「それじゃ僕も何か考えておこうかな。はいこれは礼服。伸び縮みするやつだから」

 要所要所にきらつく部分があるがかっこいい服だ。
 妖魔というのは服装もそれぞれ変わっている。
 
 そしてアルカーンも絶世の美形だ。

「今度こそ出かけてくるよ。そうだ、ルインに捕縛網渡しておくね」

 リルはラーンの捕縛網を俺に渡す。

 これのおかげで助かったが、これを使いこなせていたわけじゃないらしい。

 捕縛するのに使用して使い勝手はよかったが。

 ……待てよ、呪縛って能力があったな。これを上回る拘束具はないとも。使用者によるんだろうな。


 俺たちはアルカーンの家から外に出た。




 地底とはどんなところなのか、想像もしていなかったが
外は真っ暗ではないようだ。

 ただ日中の明るさのようなものはない。

 色でいうなら紫色のような世界が広がっている。

 建物の外観はヘンテコな物が多いが、妖魔は変わり者がおおいと
リルが言っていた通り、地上では見ない謎の物だらけに見えた。

「地上とは全然違って面白いでしょ? まずは僕の家においでよ。
お腹空いたでしょ。その後お城に行ってフェルドナージュ様に謁見してもらうから」
「そこまで空腹じゃないが食べておいたほうがいいな」

 しばらく歩くと、人形のような作りの家に着いた。これも相当変わってる。

「ここが僕の家。ただいまムーラ」
「お帰りなさいませ。おぼっちゃま」

 執事でもいるのかと思ったら、人形の家そのものが喋っている。
 
 スプラッターハウスってまさにこういうのなんじゃ? 

「さ、入ってよ」
「あらお帰りリル! 新しい洋服、どう? 私綺麗?」
「なんだ来てたのかサラ。僕は来客中だよ」
「え? 誰それ? どこでさらってきたの?」
「さらったんじゃなくて拾ったかな。彼はルイン」

 そういって俺を誰かに紹介するリル。誰だろう。

「あたしは妹のサラカーン。へぇ、いい男じゃない。好みかも」
「サラ。いるなら丁度いいや。食事の用意をしてくれない?
サラが気に入ったルインに食べてもらうためにね」
「わかったわ。ちょっと作ってくる」

 そういうとサラはふわりと舞い上がり、どこかへ行く。
君らには重力がかかっていないのか?

「そこの椅子にでも座って待っていてよ」

 壁のジッパーが開き椅子が出てくる……スプラッターハウス、怖い。
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