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第三章 舞踏会と武闘会

間話 訪問者

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 ジャンカの村――――。そこはかつて森だった。いつしか人々が多く集まり暮らすようになる。
 森には木の実が無数にあり、食用の動物も豊富。狩りが盛んに行われ、材木や鉱石も取れる。
 また、街道が敷設されてからは、シュウの故郷であるカッツェルの町とも交易路が繋がった。
 更にルーンの町経由で地底のフェルス妖魔皇国へと取引がなされ、町に入れぬ者たちも含め
この地は賑わい始めていた。
 新たな亜人の集落地として。
 そんなある日――――。

「頼もー。お頼み申そー! 誰か話の出来る者ぉーー!」
「ん? 何だろうか。ちょいといってくる」
「ムーラの旦那。いいんですかい? 戻って来たばかりでお疲れでやしょう。それにどう見ても
おかしいやつですぜ」
「あのまま叫ばせ続けるわけにはいかんだろう。わしらを全面的に受け入れてくれる数少ない場所だ。
なるべく無下に扱いたくはない」
「気をつけてくだせぇ。それじゃあっしは道の敷設を伸ばしてまいりやすんで」
「ああ。そちらも気を付けてな。追加で予算が必要なら……」
「よしてくだせぇ旦那! あっしらだって感謝してるんです。ここが無きゃとっくにお陀仏してたんです。
これでも多いくらいだ」
「メルザ殿とルイン殿。出来る限りあのお二人にとっていい町にしたくてな。
カカシ殿と話し合っておった。カカシ殿の知識の深さには驚かされたものだ。
では行ってくる。よろしく頼む」
「へい! しかしなんて恰好だあの叫んでるやつは……」

 その者、白き甲冑を身にまとい、全身くすみのない白き馬にまたがる。
 白き馬は声を発さず静かに闊歩する。
 美しいいで立ち。そしてこの辺りでは全く見ない馬だ。ジャンカの村では完全な異色となっていた。

「頼もーう! どなたか、どなたかー!」
「おいお前さん。叫ぶのはもういい。わしはモラコ族のムーラだ。お前さん、一体何者だ? 
この辺りの者じゃないだろう」
「おお、ようやく話が出来る御仁! わしは白騎士のハクレイと申すものじゃ。よっこいしょっと」

 馬から降りて紳士的な挨拶をするが、その方法は実に独特。右拳を背中に回して腰付近の位置にあて
左腕を胸の前にあてがいお辞儀をする。
 この辺りでは全く見ない敬礼の仕方だった。

「ふうむ。その騎士殿が一体何用だ? ここはジャンカ村。騎士が来るような場所ではないが」
「いや実はの。ここにハーヴァルという者がおるという話を聞いてきたんじゃが……」
「ハーヴァル殿のお知り合いだったか。確かにいで立ちは少し違うが立派な鎧を身に着けておったな」
「おお! やはりここにおったか! して、どこじゃ? どこにおるんじゃ?」
「今は留守でな。残念ながら会う事叶わぬよ」
「なんと! いつ、いつ頃戻ってくるんじゃ? 明日か? 明後日か?」
「さて……どうかな。わからん。わしも帰ってきたばかりでな。結婚式に参列しておった。
その後ハーヴァルさんは残ったようだが」
「お主何の話をしておるんじゃ? わしゃどうしても会って話さねばならんのじゃが」
「ううむ。そうすると滞在許可がいるな。お前さんは人族だろう? ここは見ての通り亜人の住む村。
あまり人にいい印象を持ってはおらぬ。せいぜいイビン殿やシュウ殿あたりでなければな」
「ふうむ。困ったのぅ。取り急ぎ伝えねばならぬことがあったんじゃが」
「そういえば、ルイン殿たちに話せる何かを渡すと言っていた気がするが」
「何!? 話が出来るんじゃな? 急ぎ案内せよ!」
「いや、怪しい人物を行かせるわけにはいかない。しばし待ってはくれぬか。しかし……見事な
馬だな。純白とはこの事を指すのだろう。まるで主殿の肌のようだ」
「ほほう。ムーラ殿はこの子の素晴らしさがわかるんじゃな! このゲンドール一の美しさを誇る
名馬! ホイホイじゃ!」
「お主、もう少し良い名前をつけれなかったのか?」

 馬はとても悲しそうな表情をしている。

「何を言う。最高の名前ではないか! わわ、危ない、落ちる! どうしたんじゃホイホイ! 
ホイホーイ!」
「明らかに嫌がっているように見えるが……まぁいい。主殿、ルイン殿へ話をしてこよう。
あの切り株辺りで少し待ってて欲しい」

 そう言って、ムーラはルーンの町へと戻っていった。
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