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第四章 メルザの里帰り

第四百四十四話 アンデッドの急襲

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 ようやくメルザの意識がはっきりしたので、ナマルを食べさせると、夢中になっていくつも食べていた。
 喉につまらせるので、急いでトントンしてやると、いい笑顔を見せる。

「うめーなこれ! お土産に持って帰れねーかな?」
「どうかな。こういう実が柔らかいものは痛むのが早いんだ。難しいかもしれないが……うん、バナナと
同様種がない。このパターンは新芽を移して増やすしかないな」
「ルインがまたむつかしー事言ってる。俺様にはよくわからねーぞ? 新芽ってなんだ? 食えるのか?」
「そうじゃなくてだな……その辺は帰りに考えよう。まずはメルザの故郷にたどり着かないと。
ここからもう少しある。スピア、お前はどうするんだ? 成り行きで連れてきちゃったけど」
「……治療してもらったから恩は返す」
「そうか。それならついて来い」
「お前はそいつを守るんだろ。なら前を行くぞ」
「そうしてもらえると助かるが、いいのか?」
「うるさい! 話しかけるな! こっちを見るな!」
「なんなんだ……まぁとにかくお願いするよ。後ろを警戒しないわけにはいかないんでな。
ジェネスト、後方を頼む。妖雪造形術、コウテイ、アデリー!」
「ウェーイ!」
「ウェィ!」
「シュイオン先生とメルザを頼む。周囲全体は俺が警戒する。行くぞ、ここからはアンデッドが
出るかもしれない!」

 いまだに眠そうなメルザを抱えてアデリーに乗せ、シュイオン先生はコウテイに乗る。
 スピアが前を進みジェネストが後方。
 俺はコウテイ、アデリーの左右を警戒するような配置についた。

 しばらく進むと――――地中から反応! 昨日何かを掘っているように見えた場所はもっと先だ。
 地中からって事は早速アンデッドか! 

「全員止まれ! 地中から来る。数は三か? いや、五だ。スピアの少し前!」
「何を言っているんだ? お前は。地面の下でも見えるっていうのか」
「見えるんじゃない。俺たちを襲おうとしているのが分かるって言った方が正しいな」
「そんな能力もあるのか。お前、化け物だな……私以上の」
「そうだな。化け物でもなんでも、主を守れりゃそれでいい! 来るぞ!」

 地中から現れたのは、錆びた剣などを持ったアンデッド。スケルトンにゾンビといったところか? 

「この程度の奴らなら問題ない。ヘックスディジット小規模ブレス」

 スピアは大きく息を吸い込むと、小型の火炎ブレスを前方へ放出する。アンデッド五体分をちょうど
巻き込む形で放つそれは、高圧縮され高い威力を想像するに容易い。
 
「器用だな。それに技の発想も美しい」
「な、何を言ってる! 見るな! 来るな! 気安く話かけるな!」
「ふふふ、照れてますね」
「なぁ、俺様もあんな風にブレス吐けねーかなぁ。かっこいいぞ、あれ」
「……やめてくれ。メルザが口から火を放ちだしたら皆驚くどころか呆れるぞ……っ! 後ろだ! 
ジェネスト! 数が多い! 十、いや二十以上いる!」
 
 ジェネストにそう告げる間に動きだしていた。
 ターゲットの示す範囲が広い。かなり点々と湧き出る。一人じゃ対応しきれない数だ! 

「くそ、上空からも来る。三か」
「ルインさん。スピアさんは強がってるだけです。やはりまだ戦わせるべきじゃない」
「だよな……ジェネスト、後方いけるか?」
「誰にものを言っているつもりですか? ここで使用するのは不本意ですが、いいでしょう。
試してあげましょう」

 そういうとジェネストは身構えた。


 
 
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