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第四章 メルザの里帰り

間話 ぶつかる闇と闇

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 とある大陸にて――――。

「ベルウッド。ここで待て。ここからは一人でよい」
「へい。あっしもこれ以上は近づきたくありやせん。へへっ」

 黒き甲冑を身に纏う、屈強な体つきをした男は、美しい造形の城へと入っていく。
 無数の人の気配を感じるが、特に何も気にすることなく歩いて進んでいく黒き甲冑の者。

「とまれ」
「邪魔だ、どけ」
「ぐ、ウワアーーーーーーー!」


 ふと止めに入ったものは、何か見えない手のようなもので捕まれ、遠くへと放り投げられた。
 しかし他に存在していたものは当然とばかりに見ているだけの者が殆ど。
 特に手出しする者は、他に見当たらなかった。
 城に入ると、直進する方向へ巨大な白い門があり、その前に立つ者が目に入った。

「常角か。常飛車ではないのだな」
「ご用件は何かな。常桂馬のイポティスが落ちてから、常王は不在でね。日を改めて欲しい」
「それは本当かな。気配がするのだが」
「この常角、アクソニスがいないといえばいない。いるといえばいる。その理から外れることはない」
「問答は無用。通すつもりが無いのなら、押しとおるぞ」
「それは無理でしょう。あなた如きではね」
「ふん。常金以上は別次元と聞くが、身の程を教えてやろうか」
「待て」

 ギリギリと後ろの門が開いていき、何者かがゆっくりと姿を現す。
 左腕に十字の穴が開き、右腕に四つのマス目のような穴があいている。
 まるで飛車の動きを体現するかのような穴が開いた男が扉越しから出てきた。

「私の獲物だったはずですよ」
「そいつは死爆だ。攻撃するな」
「くっ……ふっはっはっはっは! よく見抜いたな。さすがは常飛車といったところか」
「どういうつもりだ。我々に戦争でも仕掛けるつもりか」
「いいや、こうでもせねば常王には会えぬと思ってな。こちらの邪魔を散々したのだ。これくらい
せねば釣り合わぬだろう?」
「邪魔だと? それはこちらの台詞だ。本来ならとっくにトリノポート大陸を攻め落としていた。
動きを察知され、他の大陸の者どもにどれほど邪魔をされたと思っている」
「それは聞き捨てならんな。トリノポートは私が手中に収める場所。貴様らに譲るつもりなどない」
「ふん。キゾナ大陸を手中に収めた今、あの大陸を攻め落とすなどたやすい。そろそろトリノポート
大陸を落としたと、常歩のペゾスから連絡が入るはずだが?」
「話にならんな。そこをどけ。貴様らではらちがあかん」
「ですから常王は不在と話したはずですよ」
「では奥の気配はなんだというのか」
「ただのシンバシ―でしょう。常王の威光は不在時でも広がっていきますから」
「少しだけためさせろ……エファーメラルスラスト」

 黒き甲冑の者が手を上げると、振動し続ける剣が門の奥へ向けて飛翔する。
 しかしその剣は常角アクソニスがニ本の指で挟み、止めてしまった。

「言ったはずです。この常角のアクソニスがいないと言えばいない……と」
「ふっ……まぁいい。貴様ら二人と対峙して興が冷めた。言伝だ。
二年後、絶対神を殺せる機会が来る。参戦は自由。以上だ」
「ほう。それを信じろと?」
「どちらでも構わん。だが貴様らの王はそれを待ち望んでいるのだろう?」
「っ! なぜあなたがそう思うのですか」
「隠しても無駄な事。それではな。別に後ろから攻撃しても構わんよ」
「くっ……そのままいかせなさい」

 他の者が王の魔を攻撃しようとした者を捕えようと武器を構え、今にも切りかかろうと
していたが、静止された。
 黒鎧の者はマントを翻すと、来た道を戻っていく。

「そうそう、一つ忠告をしておこう。トリノポートに住むある小僧。
生半可に手を出せば痛い目をみるだろう。イネービュの手、どこまで伸びているのかな」
「何? イネービュだと?」
「ではな。また会うこととなろう」

 黒鎧の徹道が割れ、城を後にする。
 城へ入って来た時と変わり、あたりには殺気が充満していた。
 
「くくく、いい城だ。根城にするには悪く無さそうだな。ふっふっふ、はっはっはっはっは!」

 城を出た男の高笑いが、あたり一面に鳴り響いていた。
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