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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め

第五百四十六話 願うは友の無事

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 久しぶりに我が戦友、ヘンブレン・ジョウイ・オズワルの許へ向かう途中だったというのに
こうも集団モンスターに襲われるとは。
 素晴らしき腕前の護衛がいなければどうなっていたことか。
 しかしオズワルが助けに来てもよいはずだが、一向に現れる気配がない。
 まさかオズワル自身も病に伏したか……。

 それにあの竜。どう見ても上に乗るのはルイ・クシャナ・ミレーユ王女殿下その人。
 一体あそこで何をしておられるのか。

「私もじっとはしておれん。戦いを……早く我が友の許へ!」
「なりません! 危険すぎます! 上空はおろか地上にもモンスターの大群が!」
「なぜそれが山道から来るのだ。オズワルの軍勢は、山道の屈強なノーブルトループ部隊は
どうしたのだ!」
「わかりません。明らかに異常です。ここまでの大群は想定していません。
一度撤退する事も視野にいれませんと」
「だが、このままではエビルイントシケートが……私はどうすれば、どうすれば……」



 ブシアノフ男爵が苦悩している頃、前線にいるシーたちは――――。
 山道付近のモンスターへと差し掛かろうとしていた。

「戦士は剣を手に、戦場を駆け巡る。相対せし魔物の軍勢多くされど退路無し。
勇気あるその者、単独で切り込み敵を凌ぐ。降臨せし力は魔の根源。一振り薙ぎ払えば大地を焦がし
一振り薙ぎ払えば水しぶきが舞い散る。
……すべての兵は彼を見てこういうだろう。魔の勇者、オズワルと」
「それって伝承か何かか?」
「その通りぞ。あの男を見ていると、あの物語を思い出す。その戦いぶりをな」

 メナスと語り合うビー。最前線を駆けるシーより少し離れた位置に馬車を停車し
いつでも動けるようジェイクが御者を担当している。

「やはり、魔へ変貌するつもりだ。あの時コーネリウスとの闘いで見せたあれは……」


 先頭を駆けるシーの足が徐々に変貌していく。
 コウテイから降り、二足で駆けだした彼の足はやがて燃え上がり、ゆらめく
海水となり……あたり一帯を飲み込む海水をモンスターの大群へ解き放つ。

「天海・魔炎楼!」

「ギュワーーーー!」

 海水に塗れた大量のモンスター。その海水が全て燃え上がる葵い炎へと変貌する。
 シーはその炎上でどの場所にでも出現し、移動している。

「炎……いや海か? 足そのものが海になっているというのか」
「なんとうい戦いぞ。一体どれほど制御して戦闘を行っていたのか。
こんな恐ろしい者を捕縛していたのか、私は」
「だがあの炎だけじゃモンスターに致命傷は与えられない。俺たちがフォロー
するぞ!」
「当然ぞ!」

 キマイラロード、ジェノスコーピオは集団で行動する強力なモンスター。
 シーを敵と定め、数十匹が同時に攻撃を放っている。
 ……が、燃える炎へ沈み込み、変幻自在に一定のエリアどこにでも移動できる
シーに、そう簡単に攻撃は当たらない。

「神魔解放と真化できれば……赤海星の殺戮群あたりでもっと楽に戦えるが
そうもいかない。足までは変貌させた。ここまでで止めるべきだよな……はっ!」

 迫り来る一匹を剣で薙ぎ払い、再び移動する。
 次の場所へ移動した瞬間だった。背後に激痛が走る。

「ぐっ……くそ……はぁっ!」
「グギャオアーーー!」

 背後からキマイラロードの強烈な一撃をもらう。移動パターンを燃える炎の
中から見定め攻撃してきた個体がいたのだ。
 
 さらに畳みかけるよう迫ってくるキマイラロード。それに合わさるように
魔術を行使してくるジェノスコーピオ。

 それらを見事撃ち抜いたのは、ビーだった。

「無理するなーーー! シーーーー! こんなところで死ぬつもりかーー!」
「ぐっ……冗談じゃない。あいつに合うまで、死ぬつもりなんか、な……」

 視界が少し開けたところで、さらに絶望が待っていた。
 地中がボコボコと膨れ上がり、さらに追加でモンスターが現れ始めた。
 メルザに合うまで、ブレディーを救うまで、俺は死ねない。
 意識が薄れ、何かに飲み込まれる感覚。
 俺の意志が魔を制御不能にするきっかけを与えてしまった。

「……ケケケッ。ピンチダナァオイ。ソロソロ、マトモニ使ッテミロヨ。
ソレデモベルー家の生き残リカヨ、オ前。最強ノ魔、ベリアールヲ舐メテルダロ。
覗ケ。ソシテ代ワレ」
「だまれ……この程度で……くそっ、やっぱりまだ、足は早かったか……」

 
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