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第五章 親愛なるものたちのために

第七百八十五話 闇の知識が詰まったロケット

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 襲来者を退けたアメーダ。以前見た時と戦い方が異なっていたが……その実力は
少ししか確認していないが、彼女本来の戦い方はメルザの戦い方に近いようだ。
 幻術の応酬。しかも規模が洒落になっていない。
 アメーダは氷術が得意なのか? そうするとアネさんと組ませると強い氷コンビができるな。
 しかし……いきり戦闘を始めるとは……いや、それもわからない話じゃない。
 俺はアルカイオス幻魔の過去を見た。
 住む場所を追われ、行き場を失い、戦果にも巻き込まれてきたのだろう。
 だからこそ、自分たちの住まう場所を荒らされる事に敏感で、安息の地を求めていたのだろう。
 シカリーの領域のようなものがあれば安全であることは安全なのだろうが……
それも絶対的なものではないのかもしれないな。

 ――アメーダはお願いした通り、怪我をしているギオマ、グレンさん、モジョコ、ランス
ロットさんを連れて町の案内に向かってもらった。
 カーィは少し死霊族の町周辺を見てみたいらしいので、外に出ないようにだけ
告げて、自由にさせておいた。
 こんな不思議な場所、来れば興味を持つのは当然だ。
 俺もまだ、この町についてしっかり見て回っていない。
 とにかく時間が押していたというのもあるが。

「プリマ、エルバノ。そろそろ出てきてもいいぞ。プリマはよく我慢するように
なったな」
「だってお前はあそこで勝手に出たら怒るだろ? プリマだってちゃんと学習してるんだぞ」
「わしはあんまり関わりあいたくないのう。魔王の鎧はとにかく骨がおれるから嫌なん
じゃよなぁ」
「エルバノは詳しく知ってるのか?」
「当然じゃろう。ギオマと遊んでおる時に、よく巻き込まれたもんじゃあ」
「……はぁ。ちょっと気が重くなったな。絶魔王ベルベディシア……詳しく知ってる
人がいればいいんだけど」
「ギオマなら知っておるんじゃないかの?」
「どういうことだ?」
「うーん。話せば長くなるからのう」
「……そうだった。エンシュとミレーユ王女のとこへ急ごう」
「んじゃ、プリマは領域へ行くぞ。エルバノも行くだろ?」
「そうじゃのう。美味い酒があるんじゃったな」
「ああ。それなら、ムーラというモラコ族の長に聞いてくれ」
「楽しみじゃあ。行くぞプリマ!」
「持ち上げるな! プリマは子供じゃないんだぞ!」
「何を言うておる。わしからすれば子供じゃ子供。ギャハハハハ!」

 一緒に行動してたからか、プリマとエルバノはかなり仲良くなったな。
 今回の旅は、プリマにいい影響を与えたのだろう。我慢するという意味で……だが。

 さて、特訓してるっていうエンシュとミレーユ王女はどこに……ルーンの町じゃないよな。
 どこだろう? 
 ラルダさんに聞いてみるか。あの宿……もとい宿として機能していない家に行こう。

 ――大してこの場所を離れていたわけではないが、随分久しぶりに戻って来た気分だ。
 宿の中は相変わらず、宿屋っぽくない。
 せっちゃんに教育してもらうことにしよう。
 
「おーい。ラルダさん? エンシュ? ミレーユ王女? いるかー?」
「お、か、え、り!」
「うわ! ちょっと! その死霊族特有の後ろから現れるの、やめてくださいよ!」
「この反応はー。やめられませんよー。探し物はー、見つかりましたかー?」
「ああ。見つかった。届ける前にミレーユ王女に用事があって。というかこれから
やらなきゃいけないことに必須なんだけど。どこにいる?」
「二人でー、ロブロードの特訓をー、してますよー」
「そっちか! 戦闘の特訓かと思った……はぁ」

 二人を呼びに行くと、慌てて片づけ始める。
 修業はちゃんとしてたのかな。後で確かめてやらないと。

「お師匠様、お帰りなさい。遅かったですね……」
「どうせまた、奥さん以外の女性と遊んでいたんでしょ」
「おいおい、人聞きの悪い事を……そして相変わらずそっぽ向いたままだな」
「ふん。もう癖なんだから気にしないで。それで何? 早く愛する妻の下へ行かなくていいの?」
「いや。そうだな……そうしたいんだが、妻に必ず言われる方から先に片付けよう。
闇の知識についてだ。これがわからないと、俺は『何しに行ったわけ?』と、どやされる
に決まっている」
「そうだったわね。はいこれ。蓋は開けないでよ」

 そう。俺はミレーユの喉を治す事を交換条件に、ミレーユが知るという
ブレディー復活のための闇の知識を手に入れねばならなかった。
 その間に飛び込んだ仕事を片付けなければいけない理由ができてしまった
わけだが……遠回りになってしまうのは仕方ないにしても、随分と
入手するのに時間がかかってしまった。
 しかしこれで……揃ったはずだ。
 受け取ったのは、小さいロケットのような首飾り。
 この中に詰まっているのが闇の知識なのか? 
 いや、皆まで聞くまい。ミレーユ王女が嘘をつくはずがないし、突っ込めばまた
きつい言葉で返されるだろう。素直にこれだと受け取っておこう。

「有難う。確かに受け取った。それと……ミレーユ用に杖を新調してもらうことになった。
その鍛冶師を俺の町へ呼んである。パモ、三本の杖、出してくれるか?」
 
 俺はパモを封印から呼び出し、レンブランド・スミスで受け取った、三本の杖を
取り出してもらった。
 ミレーユは驚いたのか、そっぽを向いていた首をこちらへ向けて杖をまじまじと見る。
 エンシュがちょっとうらやましそうにしているが……エンシュの武器は酒鬼魔族
特有のものだ。
 武器は必要ないだろう。
 
「ふーん。奥さんにお土産を渡さず、私にお土産を?」
「そっちも用意してあるって。それに、お返しは必要だと思ってな。エンシュと
ミレーユ王女もルーンの町へ行くぞ」
「あらー。それならー。私も―、行こうかなー」
「師匠の町から、既に誰か来ていて……何さんだったっけ……えーと。
ライラロさんが引っ張って来たんです。それで、泉の前で戦闘を……その、今戦ってるかと」
「はぁ? 死霊族の町でか? 一体だれが……」
「確か……えーと」
「ベルディスさん。それとハーヴァルさんよ」
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