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5章
天つ狐の仕事⑤
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怪人の姿が見えなくなると耳に声が届く。
「朝田くん、朝田くん! 大丈夫かい?」
千堂の声だ。慌てた様子で朝田の肩を掴んで揺さぶっている。
「あ、千堂さん……?」
「突然朝田くんが消えちゃったから、びっくりしちゃったよ」
「朝田、怪我してるぞ」
千堂とは対照的に、有馬は静かに朝田の状態を観察している。
「怪人が出たんです、木曜日の怪人が……!」
「朝田くん、今日は金曜日だよ」
「それはそうなんですけど」
木曜日の怪人という名前が面倒だ。
何曜日に現れようと奴は奴だ。
「どうやら名前自体もミスリードだったみたいだな。だが都市伝説は名前に縛られる。今日が本調子というわけではないんだろう」
「朝田くん、有馬が助けてくれたんだよ!
烏を特攻させて」
周囲をよく見れば、数匹の烏が木の上からこちらを見ている。傷を負っているものもいるが、恐らく怪人の鉈によるものだろう。こんな対策を準備していたとはやはり師匠はすごい。
「やってみるもんだな」
朝田は有馬の言葉にがっくりと肩を落とす。
どうにか感謝の言葉を口にする。
「これで少し分かったな。木曜日の怪人は自分の空間に自分が狙うものだけを引き釣り込む。恐らくは効果が及ぶのは人間だけなのだろう、烏が通ったことが証明してくれる」
「あと全く攻撃が当たりませんでした。すぐに背後をとられてしまって」
「あの空間の中での効果、かもな」
有馬はそれきり黙ってしまった。考え事をしているようだ。
「朝田くん傷は手当てしたから。これから学校でしょ?これくらいの傷なら問題ないよ」
いつの間にか千堂が傷の手当てをしてくれている。もっと深く刺さったように感じていたが、思いのほか浅かったようだ。声を出して痛がってしまった自分が恥ずかしくなる。
「今日はもう襲われないだろう。
陽、学校に行け」
有馬に言われて朝田は急いで立ち上がる。
千堂は有馬と少し話をすると言って、ここで別れることになった。
立ち去るときに有馬から呼び止められた。
変身はしなかったのかと聞かれ、朝田は見ての通りです、と答える。
「そうか、強くなったな」
「いえ、まだまだです」
有馬から褒められてまんざらでもない気持ちになる。変身の有無を問われるのは二度目だな。何かあるのかと気になってくる。
思えば師匠のところで稽古を始めてから変身を使わないように何度も念を押された。それに意味がないから、と説明してくれたのは他でもない師匠だったじゃないか。
あの、と口を開いたところで有馬から早く行くように急かされ、朝田は逃げるように立ち去ることになった。
一人で歩きながら、襲われた時の記憶を思い出す。木曜日じゃなきゃダメか――最期に怪人が言った言葉が頭に残った。
今回は有馬たちが側にいたから何とかなったが、次は分からない。あと、僕のことを先輩と呼ぶのは勘弁してほしい。
「まいったな」
考えることを諦めて、朝田は時計を確認する。
次の講義にはどんなに急いでも間に合わない。
「はぁ、まいったなぁ」
あと5日、どうにかしないと次はない。
少しでも遅刻を減らす為に朝田は走り始めた。
「朝田くん、朝田くん! 大丈夫かい?」
千堂の声だ。慌てた様子で朝田の肩を掴んで揺さぶっている。
「あ、千堂さん……?」
「突然朝田くんが消えちゃったから、びっくりしちゃったよ」
「朝田、怪我してるぞ」
千堂とは対照的に、有馬は静かに朝田の状態を観察している。
「怪人が出たんです、木曜日の怪人が……!」
「朝田くん、今日は金曜日だよ」
「それはそうなんですけど」
木曜日の怪人という名前が面倒だ。
何曜日に現れようと奴は奴だ。
「どうやら名前自体もミスリードだったみたいだな。だが都市伝説は名前に縛られる。今日が本調子というわけではないんだろう」
「朝田くん、有馬が助けてくれたんだよ!
烏を特攻させて」
周囲をよく見れば、数匹の烏が木の上からこちらを見ている。傷を負っているものもいるが、恐らく怪人の鉈によるものだろう。こんな対策を準備していたとはやはり師匠はすごい。
「やってみるもんだな」
朝田は有馬の言葉にがっくりと肩を落とす。
どうにか感謝の言葉を口にする。
「これで少し分かったな。木曜日の怪人は自分の空間に自分が狙うものだけを引き釣り込む。恐らくは効果が及ぶのは人間だけなのだろう、烏が通ったことが証明してくれる」
「あと全く攻撃が当たりませんでした。すぐに背後をとられてしまって」
「あの空間の中での効果、かもな」
有馬はそれきり黙ってしまった。考え事をしているようだ。
「朝田くん傷は手当てしたから。これから学校でしょ?これくらいの傷なら問題ないよ」
いつの間にか千堂が傷の手当てをしてくれている。もっと深く刺さったように感じていたが、思いのほか浅かったようだ。声を出して痛がってしまった自分が恥ずかしくなる。
「今日はもう襲われないだろう。
陽、学校に行け」
有馬に言われて朝田は急いで立ち上がる。
千堂は有馬と少し話をすると言って、ここで別れることになった。
立ち去るときに有馬から呼び止められた。
変身はしなかったのかと聞かれ、朝田は見ての通りです、と答える。
「そうか、強くなったな」
「いえ、まだまだです」
有馬から褒められてまんざらでもない気持ちになる。変身の有無を問われるのは二度目だな。何かあるのかと気になってくる。
思えば師匠のところで稽古を始めてから変身を使わないように何度も念を押された。それに意味がないから、と説明してくれたのは他でもない師匠だったじゃないか。
あの、と口を開いたところで有馬から早く行くように急かされ、朝田は逃げるように立ち去ることになった。
一人で歩きながら、襲われた時の記憶を思い出す。木曜日じゃなきゃダメか――最期に怪人が言った言葉が頭に残った。
今回は有馬たちが側にいたから何とかなったが、次は分からない。あと、僕のことを先輩と呼ぶのは勘弁してほしい。
「まいったな」
考えることを諦めて、朝田は時計を確認する。
次の講義にはどんなに急いでも間に合わない。
「はぁ、まいったなぁ」
あと5日、どうにかしないと次はない。
少しでも遅刻を減らす為に朝田は走り始めた。
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