【完結】ノーザンランドの白き獅子リーラ 〜捨てられた王女は人生逆転復活劇は起こしたくない〜

京極冨蘭

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第5章 リーラとアンデルクの王子

第4話 夜のお疲れ様会

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「かんぱーい!!」
若手騎士達がジュースの入ったグラスを合わせる。
 
 ここは騎士御用達の居酒屋。
 普通なら新入り騎士は入れないが先輩騎士達と同伴なら店の出入りを許可されている。
 第3番隊の副隊長エドモントが日頃から頑張っている若手を引き連れ、労をねぎらうために店にやって来たのだ。先輩がいれば後輩達はおごって貰えるのが世の通例だ。
 
 若手騎士のリーラ達も久しぶりに騎士学校の仲間達と再会できたのだ。
 あれやこれやと注文した物がテーブルに並び。牛串をパクリと頬張りながらアデルがリーラに聞く。
「1番隊の仕事はどうなの?」

「私はベス殿下付き護衛についていて敵に遭遇したこともなく平和だね。
 今日、お茶会の護衛でさぁ。
 お嬢様方のおほっほーとか愛想笑いがすごくてさぁ。ちょっとした段差を手を貸してくださるとか言われるんだよ。手を取らなくても歩けるだろって心の中でいつも突っ込んでるよ。
 あぁ、そうだ!
 ロバートの妹に会ったよ。
 家で私の話をしているそうだね……」

 トロリとしたチーズがかかっている揚げじゃがいもを美味しいそうにもぐもぐ食べていたロバートは突然蒸せ出した。
「ごほほほっ。水!水!」 

「はい」

「ありがとう。ブハッ。酸っぱい!おまえ!わざとレモン入れただろ。まったくどんだけ性格悪いんだよ!」

「あっれぇ?
そんな態度取っていい訳?
ナタリア嬢と仲良くなったんだ、君の話を今度は私がする番だね…」

「申し訳ありません。 
 リーラ様、私が悪うございました」

「ロバート…
 本当に馬鹿だなぁ。
 リーラに口で勝てる訳ないだろ。
 ロバートの仕事はどんな感じ?」
アデルが呆れながらロバートに話しかける。

「そうだなぁ。エリオット殿下の護衛だが騎士候補生だろう。騎士学校が仕事場だから卒業したのになぜここに私はいるんだって思うよ」

「うわっ!これから2年間も騎士学校で護衛するのか。頑張れ~」
リーラは一応励ます。

「本当にいつも心こもってないわ~」
ロバートの細い目がさらに細くリーラを見る。

「アデルとルディはどうなの?」 

「俺はパブロ小隊長の元で働いている。夜は飲んで喧嘩する奴がいるから止めるのが大変かなぁ。
 もっと力をつけないと大男に勝てないからこれからも騎士学校の鍛錬に顔だすつもりだから。
 ロバート、リーラその時はよろしくな!」

「おぉ、打ち合いガンガンしようぜ!」
細い目が見えなくなるくらい嬉しそうに笑うロバート。

「僕は明日からアンデルクなんだぁ。聞いてよ~僕さぁ、女性騎士に扮しないと駄目でさぁ」

「なんでだよ」

ぶはっとジュースを吹き出し笑いながらアデルが聞くと、
「アンデルク国のアンジェラ王女がわがままでさぁ。臭い護衛騎士は嫌だとか、女性騎士がいいとか見た目がいい騎士のリクエストが入るんだよ。女性騎士はキャサリン隊長しかいないから、僕が顔が可愛いからって総隊長考案でかつらかぶって眼鏡かけてるインテリ風女性騎士に成りきれって言うんだよ!」

「「「………」」」

「もうやけ食いだー!生牡蠣ください。」 

「それ、美味しいの?」 

「牡蠣食べたことないの?食べてみなよ、リーラ!」

「……。次、食べてみるよ」

「おい、ルディ。そんなに沢山食べて大丈夫なのか?」
心配そうにロバートが見つめる。

「大丈夫、食べ慣れてるからね。これからの寒い季節は牡蠣だよ!」

あっ、うんそうかな?と三人で顔を見合わせた。

「よし!明日からアンデルクに行くルディを応援するためにリーラ・ハントン、
リンゴジュース一気飲みします!」

ちょうどタイミングよく同じクラスだった友人が店に入ってきた。
「リーラ達じゃん、久しぶりに一緒にご飯しようぜ!」

「じゃあ、みんなでリンゴジュースで乾杯一気だ!」
イェーイ!と盛り上がった。 

「おい!おまえ達、ジュースばかり飲んだら小便行きたくなるぞ!」
エドモンド副隊長の注意も軽く聞き流しみんなで乾杯する若者達。
 


「エドモンド副隊長、周辺は大丈夫そうです」
「あぁ。レン、ありがとう。まぁ、おまえも座ってなんか食べろ」
「ありがとうございます」
ガハハハっと後ろから笑い声が聞こえる。
「あいつら、いい気なもんだ。こっちとら護衛できてるのに」
パウロがノールをぐびっと飲みながらリーラ達を見る。
「いいじゃないか。飲み代タダなんだから」
エドモンドも一気にノールを飲み干す。
「しかし、しかしですよ。あれ本当に王女なんですか?」
パウロがリーラを指差し話す。
「いやぁ、確かに見えないわ。普通のそこらへんにいる騎士だよな」
エドモンドはお代わりのノールを頼む。
「あのう、あのピンク色の髪の少年。生牡蠣ばかり食べていますが大丈夫ですか? 貝類はお腹壊したりしますからね」
レンが心配する。
「確かに。あいつ、アンデルクへ行く筈だが大丈夫か?」
エドモンド達の心配は現実になるのだった。


「リンゴジュース飲み過ぎちゃた。トイレ行ってくるよ」
リーラは立ち上がる。

「あれだけ飲んでたら行きたくなるよな。なんであんなんに惚れてるのかね」
ロバートが顎に手を置きながら話す。

「もしかして、ルマンドのことか?」
アデルが尋ねるとロバートがうなずく。

「おまえ、覚えているか?剣大会の最終戦、ルマンドが試合終わってから俺にささやいたんだ」

「リーラに手を出したらただじゃおかないからねってさ」
プハッとアデルがジュースを吐きだす。

「「汚い!!」」
ルディとロバートはかかったジュースをハンカチでく。

「ごめん、ごめん」

「まぁ、驚くよ。誰があんな女に惚れる?ないわ~」

「でも、ルマンド面白いね。牽制けんせいするなんて。でも、その前に自分の従者をなんとかしないと駄目だよ」

「なんだよ~。まだ何かあるのかよ」
アデルが期待の眼差しルディに向ける。

「卒業式にサザリーがリーラにルマンドには婚約者がいるから期待するなって言ったらしいよ。リーラから聞いてない?
リーラに恋心があったとしても踏み潰されたよ」

「えっ。それ酷くないか?」

「今もルマンドと手紙のやり取りはあるってリーラは言ってだけど友達以上はないよね」

「婚約者がいるのは貴族だから仕方ないんだか……そう言えば妹が話をしてたが今日のお茶会にルマンドの婚約者のメレディス嬢が参加すると聞いたぞ。今日、二人は顔を合わせたはずだ」

「私、ルマンドの婚約者なの~とか話してるんじゃない?ルマンド馬鹿だねぇ。
望みは絶たれたね。あははは」

「ルディ、笑うなんてひどくないか?純情な男心をさぁ」
アデルはちょっぴりルマンドに同情する。


「何話してんの?」
リーラがトイレから戻ってきた。 

「「「ひぃー」」」 

「はい?何がひぃーなの?」

「いや、別になんでもないさ…あはは」

「変なロバート。あっ!いつも変か…」

「ひどい…」

「うっ、なんかお腹痛いかも。僕帰るよ」
ルディはお腹を押さえながら立ち上がる。

「おっ、おまえ達解散?じゃあ、みんなそろそろ帰るぞー。リーラ帰るぞー」
 エドモンドは帰るタイミングを見逃さなかった。皆に解散の声をかける。若者達はえっ~としぶしぶ帰り支度をする。

「リーラ、エドモンド副隊長の家行くの?」

「父さん仕事だから正確にはハルク総隊長の家にお世話になるんだ」
 
 みな、えっ?!と驚き、ハルク総隊長の家なんて緊張するから行きたくないと思ったのだ。

「じゃあ、またねー」

「あぁ、じゃあ」

「じゃあ」

店を出てリーラはお礼を言った。
「エドモンド副隊長ありがとうございます」

「うん?気づいてたのか?」

「だってレンさんとアンディさんいるから気付きますよ」

「気にするな。お金は帝国持ちだから。あははは」

「うわぁ。税金の無駄使いじゃないですか?」

「いいんじゃない?俺達、結構帝国に貢献してるよ」

「ですかね…あははは」
夜道を笑いながら歩くリーラとエドモンドだった。



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