【完結】ノーザンランドの白き獅子リーラ 〜捨てられた王女は人生逆転復活劇は起こしたくない〜

京極冨蘭

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第11章 リーラと精霊王 フォールド領編

第6話 母から託された思いー3ー

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 第4妃として入城したバーバラは王との結婚式も行われず、書類にただ署名をするだけだった。

ーーダリルさん、結婚式出来なかったわ
  着飾った花嫁姿見せたかったな…

 真っ白な花嫁衣装を着れない沈む気持ちを奮い立たせ、バーバラは背筋を伸ばしドキドキしながらスコット王の到来を待った。

ーー王様はどんな方かしら?

 そして、その場に現れた王はあの花畑で会った男だった。

ーーあの時の人……

バーバラは恐怖で震える手でスカートを摘みカーテンシーをする。

「バーバラ、いい子で待っていたかい?どれほど待ち焦がれたか、顔をあげておくれ」

「バ、バーバラでございます、この度は私を妃へと迎えて頂き…」
「堅苦しい挨拶などいらぬ、さぁ、行こう」
「えっ?!王様!」
バーバラの挨拶をスコット王は遮るとバーバラを抱きかかえ、寝室へと向かう。 

 綺麗な蕾から花びらを開こうとしていた無垢な少女は男を知り、一瞬にして散ってしまう。
 スコット王から逃れることができない異常な愛情を見せられ、バーバラの心は悲鳴をあげる。

 ーー誰か…
   助けて…
   わかってる
   国のために我慢しなければ

 バーバラは自分自身に言い聞かせて、王の愛を受け止めた。スコット王はバーバラを束縛し、片時も部屋から出さない寵愛ぶりを周囲に見せつけた。そのため王妃サンドラと第2妃のエリーから反感を買い、公の場で顔を合わす度にバーバラは冷たく扱われる。

「ふん、リヴァリオン国には娼婦ばかりいるのね、可愛い顔して男を誑かすお勉強ばかりしてたのね」
と公の場にて嘲笑いながら王妃サンドラはバーバラに辱めた。

 第2妃エリーも王がいない場所で嫌がらせを行った。妃達のお茶会に招待されたバーバラはエリー妃に熱いお茶をわざと掛けられる。
「あ、熱い!」

「あら、ごめんなさい。手が滑ってわ」
エリー妃は扇子越しにクスッと笑っている。第3妃が見兼ねると、
「さぁ、冷やしに参りましょう」
と退室を促した。

「お可哀想に…」
腫れた箇所を冷やしてくれたのは唯一の味方、外交大臣の妹である第3妃のマリアンヌだった。
「バーバラ様、耐えるのです。王は気まぐれ、すぐに寵愛もなくなります。それすれば妃達も落ち着くわ」

「は、はい…マリアンヌ様」
バーバラは姉のようなマリアンヌの胸を借りていつも涙を流したのだ。





 スコット王の寵愛ぶりでバーバラが子を宿すまで時間は掛からなかった。

ーーお爺様、ようやく子を宿せました
  約束した王家の血を戻すことは 
  私しかできないこと

 崩れそうな心を必死に保ち、自分に課せられた使命を全うすることだけがバーバラの唯一の支えであった。

 お腹の子の為に静養が必要となり、ようやくバーバラは王から解放される。しかし、この隙を狙い、王妃サンドラの魔の手がバーバラを襲う。ようやく悪阻が収まり、食事を問題なく取ることが出来きる喜びからバーバラは躊躇なく、パクリと食べ物を口にした。

「ブハッ…」
バーバラは口から血を吐く。食事に毒が混入していたのだ。

「キャアー!バーバラーー!お医者様!!」
侍女として傍に仕えてくれたチリルは大声で叫ぶ。騒ぎを聞きつけたマリアンヌがいち早く部屋に駆け込み、持ち合わせた解毒剤をすぐにバーバラの口へ注ぐ。

 妃達を恨む王妃サンドラは度々、食事に毒を混入させ城から追い出そうと企てていた為、マリアンヌもバーバラに気をつけて食事を取るよう注意していたのだ。

「バーバラ様、飲むのよ!!生きるのよ!」

「マ、マリアンヌさま…」
意識が朦朧する中、奮い立たせ、バーバラは瓶の中の解毒剤を飲む。

ゴクッ
ゴクッ

「ハァ、ハァ、ハァ、ふぅ…」

「良かったわ。解毒剤が効いたみたいね。サンドラ様、本当に恐ろしいひと……」
ゆっくりと寝息をたてる、バーバラの手を握りながらマリアンヌ妃はサンドラが狙う相手がマリアンヌ自身、娘のローズかもしれないと恐怖を感じずにはいられなかった。



 その日の夜、バーバラは毒の影響で高熱を上げ、再び、苦しむこととなる。
「はぁ、はぁ、はぁ、助けて」
すると身体から白銀色の光りが薄らと見え始め、身体を包み込むと痛みが和らいだ。

ーー苦しいのが消えていくわ…
  神様が助けてくれたのね…

バーバラの瞳から一筋の涙がが流れてくる。

「こんな生活…もう嫌…」
するとポコンとバーバラのお腹から動きを感じる。

「赤ちゃんが生きてる…あなたも必死に毒に耐えているのね」
とバーバラはお腹に触れる。

「神様どうか、毒からこの子を助けて。私の命はどうなってもいいです。我が命を差し上げますので、この子を助けて…うっ、ううっ、うっ」

バーバラが願うと窓からキラキラと光が入り込み、バーバラを照らす。


『おまえの願い叶えよう、子を救おう』

「……神様、お願い致します。私の身体は毒に侵されているでしょう、どうか、この子だけは救ってくださいませ。危険が及ばなぬようにこの城から出して下さいませ」

『わかった、生命の契約だ…』

一瞬、部屋中に光りが充満し、すぐに光は消えてなくなった。


 バーバラは悟る、
 神は願いを叶えるだろう
 そして、
 我が子を産めば自分は死ぬと…




 
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