226 / 240
最終章 我が祖国よ永遠に……
第10話 黒獅子達の戦い ー1ー
しおりを挟む
ゾーン国 西部
エドモンド率いる戦闘部隊はゾーンの西部にある第二神殿に進軍していた。国を治めているゾーン教の神官達を制圧することが1番早い勝利だと確信していた。
しかし、全く神官やゾーン国の兵士達の攻撃もなく難なく第二神殿都市へと進む。
「静かすぎる、嫌な予感がする」
第二戦闘部隊隊長のエドモンド・キングストンは腕を組み、第二神殿の街を遠くから眺めた。
「あぁ」
隊長補佐のラッセル・コールディアもエドモンドの意見に同意した。
ゾーンを分断する大きな川を渡り、いよいよ、第二神殿へ入る。第二戦闘部隊に属しているアデルはゴクリと息を飲んだ。
最後に橋を渡るとバシャッと大きな音が聞こえ、アデルは恐る恐る振り返ると水の巨人と無数の水の玉が現れたのだ。
「後方ーッ、敵襲ーーッ!」
アデルが精一杯声を上げると水の巨人はバジャンと一歩、一歩と進み出した。
「皆、前方に逃げろーッ!」
騎士達は必死に前方に進むが前方にも無数の水の玉が浮かび現れたのだ。
「エドモンド、囲まれたぞ!」
ラッセルが叫ぶと同時に水の玉の攻撃が始まった。
「剣を抜け!後方には敵多数!
前方に進めーッ!!」
エドモンドが命ずると騎士達は剣を抜き、「ウオーッ」と走り出した。
バジャッ!!
「うわっ!助けてーッ…ブクッ…ブクッ…」
水の玉に飲み込まれた騎士は息も出来ず、倒れていく。
「クソッ!タァーッ!!」
アデルは水の玉に飲み込まれないように必死で水の玉を切るとバシャ…と水は地面へと落ちていく。
「切れる…」
アデルは周りを見るとパブロ小隊長や、顔見知りの同期の騎士達は水の玉と戦えるようだ…
「なぜだ…」
アデルは疑問に感じながらも
「今はその時ではない」
とぎゅっと剣を握り直し、水の玉に立ち向かって行った。
◇◇◇
ゾーン国 アクアリディア北東部
アクアリディア神殿に近づくとゾーン兵士達の奇襲に遭うアンデルク騎士団。両者罵声が響くなか、戦場に突如雨が降り出す。
「クソッ、雨が降ってきた!」
アンデルク騎士団長デュークがライアン王子に指示を仰ぐために見る。
「デューク、一旦、退避するぞ」
ライアンは騎士達に命ずる。
「陣を立ち直す!退避ッ!!」
デュークはライアン王子に従いながら団の撤退を急がせた。しかし、退避中に歪な匂いが街に漂う。
「なんだ…この匂い…ナータ川へ急げ!!」
ライアンは騎士達に叫ぶが川岸に向かう途中、一人、一人と倒れていく。
アンデルク騎士団はなんとかナータ川岸へと辿り着く。南海から入り込んだ風がナータ川から入り込み、ゾーン内陸部へと吹くため川岸付近は匂いの影響を受けないのだ。
騎士達は足取りをフラフラさせながら吐き出す。
「おえっー!!ハァ、ハァ、ハァ…毒か…」
ライアン王子の護衛騎士バロンも吐き出すとその場に倒れ込む。
「バロン、大丈夫か?!」
「あぁ、なんとか…ライアンは?」
「俺は全く問題ない。しかし…」
「王子?!大丈夫ですか?」
「大事ない、デュークも大丈夫か?」
「はい、なんとか…毒攻撃でしょうか…しかし、我々は川岸にいたのでなんと難を逃れましたが…」
「あぁ、ノーザンランドは厳しいかもな…」
川からの風がすべてノーザンランドがいる北東部へと毒ガスを運んでいるようだ。
「途中倒れた者もいる、運良く風も吹き始めたッ!
体調が問題ない者は救出に行くぞ!!」
「ライアン、待て!神殿を見ろ!」
バロンがライアンを引き止め、神殿を指差した。
「あれは…」
アンデルク騎士団の目の先に悍ましい光景が広がった。
◇◇◇
アクアリディア北西部
「ワォーーン」
後方の救援天幕から戻る最中に雨が降り出し、ヴェスタは水の精霊の攻撃が始まった悟る。
ヴェスタは全速力でクリストファーの元へ走っていた。途中、何人者騎士が倒れている姿が見える。
『アクアベルめ…』
ヴェスタはガルルと唸るとクリストファーの元に辿り着く。クリストファーを始め生き残った騎士達は神殿前に集結していた。
バサッ
バサッ
ヒュー
ヒュー
騎士達の周りに毒が漂わぬようにぺぺが翼を羽ばたかせ、大きな風が起こしていたのだ。
「ガルルルッ(おまえ達大丈夫か!)」
「雨で反応する毒が街に仕掛けられたようまです」
クリストファーはヴェスタに駆け寄ると報告する。
「しかし、ここにいる者達は毒の被害にあっていないのはなぜでしょうか?」
ハルクは生き残っている騎士達の顔ぶれを見渡すと皆、リーラと繋がりがある者ばかりだった。
「知らず知らずリーラがお前達に加護を与えていたピヨ…
風を起こしてもこの漂う毒が消えないピヨ、ヴェスタの炎で浄化するしかないピヨ」
「ガルルル (クリストファーよ、今からこの毒は私が浄化する。お前は神殿にいる水の精霊の操り主を殺せ)」
「わかりました」
クリストファーはヴェスタに頷く。
「ガルルル(水の存在の癖に私に勝てると思うなよ)」
「ヴェスタ、怖いピヨ」
ヴェスタは神殿の周りから街へ仕掛けられた毒を消し去る為に炎を吐き出す。すると、毒の気体は炎と反応し燃え上がる。ヴェスタは炎を吐き続け、街は火の海と化する。
固く戸を閉めていた民達は突然の炎に驚き逃げ出す。
「アチッ、アチッ、ヴェスタッ!火を出しすぎピヨ!!僕を焼き鳥にするつもりピヨ!!」
『あははは』
「何があはははピヨ!笑いごとじゃないピヨ!」
『アクアベルが仕掛けた毒を消さなければなけば被害は広がる。敵も炙り出すためにはこれぐらい炎を出さなくては。大丈夫だ、炎はあの子達に消させるからね』
「君は戦いに向いてる精霊ピヨ…」
そして、ヴェスタとぺぺはクリストファー達と合流する為に神殿上層部へと向かった。
——毒の発生について
研究者シャロンによりばら撒かれた
硫酸還元菌が雨(水)により反応して
硫化水素を発生させた設定としました。
強引な設定かもしれませんが想像上
なのでご容赦くださいませ。
エドモンド率いる戦闘部隊はゾーンの西部にある第二神殿に進軍していた。国を治めているゾーン教の神官達を制圧することが1番早い勝利だと確信していた。
しかし、全く神官やゾーン国の兵士達の攻撃もなく難なく第二神殿都市へと進む。
「静かすぎる、嫌な予感がする」
第二戦闘部隊隊長のエドモンド・キングストンは腕を組み、第二神殿の街を遠くから眺めた。
「あぁ」
隊長補佐のラッセル・コールディアもエドモンドの意見に同意した。
ゾーンを分断する大きな川を渡り、いよいよ、第二神殿へ入る。第二戦闘部隊に属しているアデルはゴクリと息を飲んだ。
最後に橋を渡るとバシャッと大きな音が聞こえ、アデルは恐る恐る振り返ると水の巨人と無数の水の玉が現れたのだ。
「後方ーッ、敵襲ーーッ!」
アデルが精一杯声を上げると水の巨人はバジャンと一歩、一歩と進み出した。
「皆、前方に逃げろーッ!」
騎士達は必死に前方に進むが前方にも無数の水の玉が浮かび現れたのだ。
「エドモンド、囲まれたぞ!」
ラッセルが叫ぶと同時に水の玉の攻撃が始まった。
「剣を抜け!後方には敵多数!
前方に進めーッ!!」
エドモンドが命ずると騎士達は剣を抜き、「ウオーッ」と走り出した。
バジャッ!!
「うわっ!助けてーッ…ブクッ…ブクッ…」
水の玉に飲み込まれた騎士は息も出来ず、倒れていく。
「クソッ!タァーッ!!」
アデルは水の玉に飲み込まれないように必死で水の玉を切るとバシャ…と水は地面へと落ちていく。
「切れる…」
アデルは周りを見るとパブロ小隊長や、顔見知りの同期の騎士達は水の玉と戦えるようだ…
「なぜだ…」
アデルは疑問に感じながらも
「今はその時ではない」
とぎゅっと剣を握り直し、水の玉に立ち向かって行った。
◇◇◇
ゾーン国 アクアリディア北東部
アクアリディア神殿に近づくとゾーン兵士達の奇襲に遭うアンデルク騎士団。両者罵声が響くなか、戦場に突如雨が降り出す。
「クソッ、雨が降ってきた!」
アンデルク騎士団長デュークがライアン王子に指示を仰ぐために見る。
「デューク、一旦、退避するぞ」
ライアンは騎士達に命ずる。
「陣を立ち直す!退避ッ!!」
デュークはライアン王子に従いながら団の撤退を急がせた。しかし、退避中に歪な匂いが街に漂う。
「なんだ…この匂い…ナータ川へ急げ!!」
ライアンは騎士達に叫ぶが川岸に向かう途中、一人、一人と倒れていく。
アンデルク騎士団はなんとかナータ川岸へと辿り着く。南海から入り込んだ風がナータ川から入り込み、ゾーン内陸部へと吹くため川岸付近は匂いの影響を受けないのだ。
騎士達は足取りをフラフラさせながら吐き出す。
「おえっー!!ハァ、ハァ、ハァ…毒か…」
ライアン王子の護衛騎士バロンも吐き出すとその場に倒れ込む。
「バロン、大丈夫か?!」
「あぁ、なんとか…ライアンは?」
「俺は全く問題ない。しかし…」
「王子?!大丈夫ですか?」
「大事ない、デュークも大丈夫か?」
「はい、なんとか…毒攻撃でしょうか…しかし、我々は川岸にいたのでなんと難を逃れましたが…」
「あぁ、ノーザンランドは厳しいかもな…」
川からの風がすべてノーザンランドがいる北東部へと毒ガスを運んでいるようだ。
「途中倒れた者もいる、運良く風も吹き始めたッ!
体調が問題ない者は救出に行くぞ!!」
「ライアン、待て!神殿を見ろ!」
バロンがライアンを引き止め、神殿を指差した。
「あれは…」
アンデルク騎士団の目の先に悍ましい光景が広がった。
◇◇◇
アクアリディア北西部
「ワォーーン」
後方の救援天幕から戻る最中に雨が降り出し、ヴェスタは水の精霊の攻撃が始まった悟る。
ヴェスタは全速力でクリストファーの元へ走っていた。途中、何人者騎士が倒れている姿が見える。
『アクアベルめ…』
ヴェスタはガルルと唸るとクリストファーの元に辿り着く。クリストファーを始め生き残った騎士達は神殿前に集結していた。
バサッ
バサッ
ヒュー
ヒュー
騎士達の周りに毒が漂わぬようにぺぺが翼を羽ばたかせ、大きな風が起こしていたのだ。
「ガルルルッ(おまえ達大丈夫か!)」
「雨で反応する毒が街に仕掛けられたようまです」
クリストファーはヴェスタに駆け寄ると報告する。
「しかし、ここにいる者達は毒の被害にあっていないのはなぜでしょうか?」
ハルクは生き残っている騎士達の顔ぶれを見渡すと皆、リーラと繋がりがある者ばかりだった。
「知らず知らずリーラがお前達に加護を与えていたピヨ…
風を起こしてもこの漂う毒が消えないピヨ、ヴェスタの炎で浄化するしかないピヨ」
「ガルルル (クリストファーよ、今からこの毒は私が浄化する。お前は神殿にいる水の精霊の操り主を殺せ)」
「わかりました」
クリストファーはヴェスタに頷く。
「ガルルル(水の存在の癖に私に勝てると思うなよ)」
「ヴェスタ、怖いピヨ」
ヴェスタは神殿の周りから街へ仕掛けられた毒を消し去る為に炎を吐き出す。すると、毒の気体は炎と反応し燃え上がる。ヴェスタは炎を吐き続け、街は火の海と化する。
固く戸を閉めていた民達は突然の炎に驚き逃げ出す。
「アチッ、アチッ、ヴェスタッ!火を出しすぎピヨ!!僕を焼き鳥にするつもりピヨ!!」
『あははは』
「何があはははピヨ!笑いごとじゃないピヨ!」
『アクアベルが仕掛けた毒を消さなければなけば被害は広がる。敵も炙り出すためにはこれぐらい炎を出さなくては。大丈夫だ、炎はあの子達に消させるからね』
「君は戦いに向いてる精霊ピヨ…」
そして、ヴェスタとぺぺはクリストファー達と合流する為に神殿上層部へと向かった。
——毒の発生について
研究者シャロンによりばら撒かれた
硫酸還元菌が雨(水)により反応して
硫化水素を発生させた設定としました。
強引な設定かもしれませんが想像上
なのでご容赦くださいませ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
56
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる