婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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第40話 真実への歩み

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第40話 真実への歩み

 セザールの陰謀は完全に封じられ、領地にはようやく本当の平穏が訪れていた。

 社交界におけるヴェルナの評価は揺るぎないものとなり、もはや彼女を侮る者はいない。
 だが――ヴェルナ自身の心は、決してそこで立ち止まろうとはしていなかった。

(守れた……けれど、ここが終わりじゃない)

 改革の成功は一つの到達点に過ぎない。
 これからどう生き、どう歩んでいくのか――それこそが、彼女にとっての“真実への歩み”だった。


---

 その日、領地の広場では収穫祭が開かれていた。

 色鮮やかな布で飾られた露店。
 香ばしい料理の匂い。
 笑い声と音楽が、初夏の空気を震わせている。

「ヴェルナ様ー!」

 子供たちが駆け寄り、手作りの花冠を差し出した。

「これ、ヴェルナ様に!」

「まあ……」  ヴェルナは驚き、そして柔らかく笑った。 「ありがとう。とてもきれいね」

 花冠をそっと頭に載せると、周囲から歓声が上がる。

「似合ってる!」 「やっぱり、ヴェルナ様だ!」

 その光景を見渡しながら、ヴェルナは胸の奥が温かくなるのを感じていた。

(私が守りたかったのは――この笑顔だったのね)


---

 祭りの後。

 屋敷の庭には、昼間の喧騒が嘘のような静けさが戻っていた。
 ヴェルナはエリオットと並んで、ゆっくりと歩いていた。

「大成功でしたね」  エリオットが穏やかに言う。 「住民たちの表情を見て、よく分かりました」

「ええ……」  ヴェルナは頷いた。 「でも、それは私一人の力じゃないわ」

「それでも」  エリオットは真っ直ぐに言った。 「あなたが導いたことに変わりはありません」

 その言葉に、ヴェルナは足を止めた。


---

「……エリオット」

 彼女は静かに彼を見つめる。

「あなたは、どうしてここまで私を支えてくれたの?」 「理由を、ちゃんと聞かせてほしいの」

 一瞬、エリオットは驚いたように目を見開いたが、すぐに覚悟を決めたように微笑んだ。

「それは――」  彼は少しだけ言葉を選び、そして告げた。

「あなたが、私にとって特別な存在だからです」

 夜風が、二人の間を静かに通り抜ける。

「あなたの勇気も、優しさも、迷いながら前に進む姿も」 「すべてが……私の心を動かしました」

 ヴェルナの胸が、大きく脈打った。


---

「……ありがとう」

 ヴェルナは、はっきりと答えた。

「私も、あなたに何度も救われたわ」 「あなたがいてくれたから、私は逃げずにいられた」

 視線が交わる。

 言葉以上の想いが、そこに確かにあった。

「これからも――」  ヴェルナは静かに続ける。 「一緒に歩いてくれる?」

「もちろんです」  エリオットは迷いなく答えた。 「あなたが進む道の、隣を」

 それは誓いでも、契約でもない。
 だが、何よりも確かな約束だった。


---

 その後、二人は庭を歩きながら未来を語った。

 領地の次なる発展。
 住民たちの暮らし。
 そして、それぞれの人生。

「この領地を」  ヴェルナは空を見上げて言った。 「誰もが誇れる場所にしたいの」

「なりますよ」  エリオットは微笑んだ。 「あなたがいる限り」

 ヴェルナは、もう迷わなかった。

 彼女は領主として、そして一人の人間として――
 確かな足取りで、自分の未来へと歩み始めたのだから。


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