婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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第46話 社交界の祝福と試練

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第46話 社交界の祝福と試練

 ヴェルナとエリオットの結婚が正式に知られるようになると、社交界は一気にその話題で持ちきりになった。

 舞踏会、茶会、晩餐会――
 どこへ顔を出しても、祝福の言葉と好奇の視線が向けられる。

「ヴェルナ嬢とエリオット様のご結婚、今年一番の話題ですわ」  茶会の席で、ある令嬢が嬉しそうに声を弾ませた。 「どんな式になるのか、今から楽しみで仕方ありません」

「ええ、本当にお似合いですもの」  別の令嬢も頷く。 「社交界にとっても、希望の象徴のようなご結婚ですわね」

 その言葉を耳にするたび、ヴェルナは胸の内で静かに感謝を抱いた。

(祝福されている……本当に、多くの方に)

 だが同時に、彼女は理解していた。
 この結婚は、もはや私的な出来事ではない。
 社交界という舞台において、象徴として見られているのだと。


---

 注目が集まるということは、光だけでなく影も生む。

 舞踏会の合間、ふと耳に入る小さな囁き。

「領地改革で住民を味方につけただけでは?」 「エリオット様の後ろ盾が目的だったのでは……?」

 以前リリアンに肩入れしていた一部の貴族たちが、嫉妬混じりの噂を流していることは、ヴェルナの耳にも届いていた。

 一瞬、胸が痛まないわけではなかった。

(……でも)

 彼女は唇を引き結び、背筋を伸ばす。

(私がするべきことは、噂に反応することではない)

 これまでと同じだ。
 誠実に、積み重ねてきたことを示し続けるだけ。


---

 そんな彼女を見て、エリオットが静かに声をかけた。

「ヴェルナ嬢」  舞踏会の準備室で、彼は穏やかに提案する。 「次の舞踏会で、あなた自身の言葉で感謝を伝えてみてはどうでしょう」

「私が……?」

「ええ」  彼は微笑んだ。 「あなたの真摯な気持ちは、言葉にすれば必ず伝わります。無用な噂も、自然と意味を失うはずです」

 ヴェルナは一瞬考え、静かに頷いた。

「……そうね。逃げる必要はないわ」  そして、はっきりと言った。 「私の思いを、きちんと伝えましょう」


---

 次の舞踏会。
 会場の中央に立ったヴェルナは、一度だけ深く息を吸った。

 無数の視線が集まる。
 だが、不思議と心は落ち着いていた。

「本日は、このような素晴らしい場にお招きいただき、ありがとうございます」

 凛とした声が、広間に響く。

「私とエリオット様の結婚に際し、多くの祝福をいただいておりますこと、心より感謝申し上げます」

 彼女は一人一人を見るように、ゆっくりと言葉を続けた。

「この結婚は、私たち二人だけのものではありません。
 これまで関わってくださった皆様との信頼、そして未来への希望を形にする、一歩だと考えております」

 ざわめきが静まり、やがて――

 大きな拍手が会場を包んだ。

 そこには疑念も噂もなく、ただ彼女の誠意を受け取った人々の表情があった。


---

 舞踏会の後、エリオットがそっと彼女に声をかける。

「見事でした」  穏やかで、誇らしげな笑み。 「あなたの強さは、言葉にした時こそ、より輝きます」

「ありがとう」  ヴェルナは少し照れたように微笑んだ。 「あなたがそばにいてくれるから、私は前に進めるの」


---

 その夜、書斎で一人になったヴェルナは、窓の外を見つめながら静かに呟いた。

「試される立場になったのね……」

 だが、その声には迷いはなかった。

「それでも私は、自分の道を進む」  静かに、しかし確かな決意を込めて。 「エリオットと共に、未来を切り開いていくために」

 祝福と試練。
 その両方を受け止めながら、結婚式の日は、確実に近づいていた。
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