婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

文字の大きさ
46 / 60

第47話 成長と未来の展望

しおりを挟む
第47話 成長と未来の展望

 舞踏会での出来事から数日後――
 ヴェルナは自室のバルコニーに立ち、朝の光に包まれた領地を見渡していた。

 畑では人々が作業に励み、村には穏やかな活気が満ちている。
 変わらぬ日常。だが、その一つ一つが、確かに自分の手で守り、育ててきたものだった。

「……ここまで来たのね」

 思わず零れた言葉には、驕りではなく、静かな実感がこもっていた。

 かつては、理不尽な婚約破棄に打ちのめされ、自分の価値さえ見失いかけた。
 それでも立ち上がり、領地を守り、住民と向き合い、社交界の中で自分の立場を築いてきた。

(私は……成長できた)

 そして今、隣にはエリオットがいる。
 共に未来を語り合える存在がいることが、何よりの支えだった。


---

 その日、ヴェルナはエリオットと共に領地の巡回へ出かけた。
 新たな商業ルートの要となる市場が完成し、その視察も兼ねての訪問である。

 市場には、新鮮な野菜や果物、手仕事の工芸品が所狭しと並び、人々の笑顔が溢れていた。

「ヴェルナ様、本当にありがとうございます!」  農夫の一人が、晴れやかな表情で頭を下げる。 「この市場のおかげで、作物を遠くまで届けられるようになりました」

「それは、皆さんの努力があってこそよ」  ヴェルナは柔らかく微笑んだ。 「私一人では、何一つ成し遂げられなかったわ」

 エリオットも自然に会話に加わり、住民たちの話に耳を傾けていく。
 彼の誠実な姿勢に、人々は安心したように笑顔を向けていた。


---

 視察を終えた後、二人は領地を一望できる丘へ足を運んだ。

 風に揺れる草原の向こうに、村や畑が広がる。
 しばらくの間、二人は言葉もなく、その景色を眺めていた。

「エリオット」  ヴェルナが静かに口を開く。 「この景色を見るたび、思うの。私たちが守るべきものは、ここにあるって」

「ええ」  エリオットは穏やかに頷いた。 「そして、これからは私も、その責任をあなたと共に背負います」

 その言葉に、ヴェルナの胸に温かな安心感が広がった。
 一人ではない。
 共に歩む人がいる――その事実が、何よりも心強かった。


---

 夜、屋敷の庭。
 星空の下で、二人は並んで立っていた。

「ヴェルナ嬢、一つ提案があります」  エリオットが穏やかに切り出す。

「結婚式に、住民の皆さんも招いてはどうでしょう」 「これまで支えてくれた方々と、一緒に祝いたいのです」

 一瞬、ヴェルナは目を見開き、そしてぱっと笑顔を浮かべた。

「……素敵ね」 「それなら、この結婚は本当に“皆で築いた未来”になるわ」


---

 翌日から、式の準備はさらに活気を帯びた。
 住民たちも進んで協力を申し出てくれる。

「花飾りなら任せてください!」 「料理も、腕によりをかけます!」

 その様子を見て、ヴェルナは胸がいっぱいになった。

(私は、一人で強くなったわけじゃない)

 多くの人の支えがあったから、今の自分がいる。


---

 夜、再び庭に出たヴェルナは、エリオットの手をそっと取った。

「エリオット」 「これからも、あなたと一緒に歩みたい」 「この領地も、未来も……すべてを」

「私も同じです」  エリオットは、迷いなく答える。 「あなたと共に、未来を築いていきます」

 二人は星空を見上げながら、確かな決意を胸に刻んだ。

 結婚式は、もうすぐ。
 それは終着点ではなく――
 新たな人生の、確かな始まりだった。


-
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄、承りました!悪役令嬢は面倒なので認めます。

パリパリかぷちーの
恋愛
「ミイーシヤ! 貴様との婚約を破棄する!」 王城の夜会で、バカ王子アレクセイから婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢ミイーシヤ。 周囲は彼女が泣き崩れると思ったが――彼女は「承知いたしました(ガッツポーズ)」と即答!

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

婚約破棄されたので、とりあえず王太子のことは忘れます!

パリパリかぷちーの
恋愛
クライネルト公爵令嬢のリーチュは、王太子ジークフリートから卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を告げられる。しかし、王太子妃教育から解放されることを喜ぶリーチュは全く意に介さず、むしろ祝杯をあげる始末。彼女は領地の離宮に引きこもり、趣味である薬草園作りに没頭する自由な日々を謳歌し始める。

婚約破棄のススメ!王子の「真実の愛」見つけて差し上げます

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢メロア・クレーベルの隣には、非の打ち所がない完璧すぎる婚約者、ジークハルト王子が君臨している。このまま結婚すれば、待っているのは「王妃教育」と「終わらない公務」という名の過労死コース……。 「嫌ですわ! わたくし、絶対に婚約破棄して隠居してみせますわ!」 決意したメロアは、入学したての学園で、王子の「真実の愛の相手(ヒロイン)」を見つけ出し、自分を捨ててもらうという作戦を開始する。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

いいえ、ただ私は婚約破棄されたいだけなんです!

鏡おもち
恋愛
伯爵令嬢ロニエ・エヴァンズには、ささやかな野望があった。それは、ハイスペックすぎて重すぎる愛を持つ婚約者、第一王子アレンから「婚約破棄」を突きつけられ、実家の離れで一生ダラダラと昼寝をして過ごすこと。 ロニエは学園入学を機に、あの手この手で「嫌われる努力」を開始する。

処理中です...