婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

文字の大きさ
57 / 60

56話:新たな門出の準備

しおりを挟む
56話:新たな門出の準備


---

 ヴェルナとエリオットが夫婦として歩み始めてから、領地は目に見えて変わっていった。

 農地は潤い、市場は賑わい、子どもたちの笑顔が増えた。
 それらすべてが、二人が積み重ねてきた日々の証だった。

 そして今――
 その歩みを象徴する一大行事、結婚式が、いよいよ目前に迫っていた。


---

 式が執り行われるのは、領地内で最も由緒ある大教会。

 純白の花々が壁を飾り、祭壇には手仕事で作られた装飾が並ぶ。
 それらはすべて、住民たちが心を込めて用意したものだった。

 その朝、ヴェルナは母と並んで教会を訪れていた。

「……本当に、立派になったわね」  母は祭壇を見つめ、静かに言った。 「ヴェルナ。ここまで来たあなたを、母は心から誇りに思うわ」

「お母様……」  ヴェルナは少し照れながら微笑む。 「でも、私ひとりの力じゃないわ。皆が支えてくれたから――」

 母はその言葉を遮るように、そっと手を握った。

「だからこそよ」 「支えられるだけの人間に、あなたはなったの」

 その言葉は、何よりの祝福だった。


---

 教会を後にしたヴェルナは、エリオットと合流し、住民代表との最終打ち合わせに向かった。

「ヴェルナ様、エリオット様」  村の代表が深く頭を下げる。 「この式に関われることを、私たちは誇りに思っています」

「ありがとうございます」  エリオットは穏やかに微笑んだ。 「皆さんと一緒に迎える門出こそ、私たちの望みです」

「ええ」  ヴェルナも頷く。 「この結婚式は、私たち二人だけのものではありません。
 この領地で生きる、皆さんとの“これから”を祝う式です」

 その言葉に、住民たちは目を潤ませ、力強く頷いた。


---

 夕方。

 二人は屋敷の庭で、静かな時間を過ごしていた。
 夕陽に照らされた木々が、柔らかな影を落とす。

「……本当に、ここまで来たのね」  ヴェルナは小さく息を吐いた。 「長い道のりだったわ」

「ええ」  エリオットは彼女の手を取る。 「でも、そのすべてが、今に繋がっています」

 ヴェルナは彼を見つめ、静かに微笑んだ。

「この結婚式が終わっても、私たちの歩みは続くのよね」 「もちろんです」 「なら――」 「はい」 「これからも、一緒に進みましょう」

 二人は言葉以上の想いを交わし、夕焼けの中に立ち尽くした。


---

 翌日。

 教会には次々と招待客が集まり始めていた。
 王家の使者、社交界の重鎮、他領地の領主たち。

 だが、その中心にあるのは変わらない。

 この領地で生きる人々の祝福だった。

「ヴェルナ様」  使用人が微笑む。 「皆、この日を待っていました」

「ありがとう」  ヴェルナは静かに頷いた。 「この式が、皆にとっても温かな記憶になるよう――
 心を込めて迎えましょう」

 教会の鐘が、低く鳴り始める。

 新たな門出は、もうすぐそこまで来ていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄、承りました!悪役令嬢は面倒なので認めます。

パリパリかぷちーの
恋愛
「ミイーシヤ! 貴様との婚約を破棄する!」 王城の夜会で、バカ王子アレクセイから婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢ミイーシヤ。 周囲は彼女が泣き崩れると思ったが――彼女は「承知いたしました(ガッツポーズ)」と即答!

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

婚約破棄のススメ!王子の「真実の愛」見つけて差し上げます

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢メロア・クレーベルの隣には、非の打ち所がない完璧すぎる婚約者、ジークハルト王子が君臨している。このまま結婚すれば、待っているのは「王妃教育」と「終わらない公務」という名の過労死コース……。 「嫌ですわ! わたくし、絶対に婚約破棄して隠居してみせますわ!」 決意したメロアは、入学したての学園で、王子の「真実の愛の相手(ヒロイン)」を見つけ出し、自分を捨ててもらうという作戦を開始する。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

いいえ、ただ私は婚約破棄されたいだけなんです!

鏡おもち
恋愛
伯爵令嬢ロニエ・エヴァンズには、ささやかな野望があった。それは、ハイスペックすぎて重すぎる愛を持つ婚約者、第一王子アレンから「婚約破棄」を突きつけられ、実家の離れで一生ダラダラと昼寝をして過ごすこと。 ロニエは学園入学を機に、あの手この手で「嫌われる努力」を開始する。

処理中です...