婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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57話:結婚式当日

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57話:結婚式当日


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 その朝、領地は特別な空気に包まれていた。

 夜明けとともに教会の鐘が静かに鳴り、石畳の道には人々の足音が重なっていく。
 住民たちも、遠方からの招待客たちも、誰もがこの日を待ち望んでいた。

 ――ヴェルナとエリオットの結婚式。

 それは、ふたりの幸せだけでなく、
 この領地が歩んできた再生と希望の象徴でもあった。


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 ヴェルナは自室で、最後の身支度を整えていた。

 鏡に映るのは、純白のドレスに身を包んだ自分自身。
 かつて婚約破棄という屈辱に打ちのめされ、未来を見失いかけた少女の面影は、もうどこにもなかった。

 そこに立っているのは――
 数えきれない困難を乗り越え、領地を導き、人々に信頼される一人の女性だった。

「……少し、緊張するわね」

 そう呟くと、侍女がくすりと微笑った。

「当然です。今日ほど大切な日はありませんから」 「でも――とても、お美しいです。皆さま、きっと息を呑まれます」

「ありがとう」  ヴェルナは静かに微笑む。 「この日を迎えられたのは、皆のおかげよ」

 そのとき、ノックの音とともに母が部屋に入ってきた。
 ヴェルナの姿を見た瞬間、母は言葉を失い、そっと目元を押さえた。

「……立派になったわね、ヴェルナ」 「本当に、誇らしいわ」

「お母様……」  ヴェルナはそっと手を取る。 「私がここまで来られたのは、家族がいてくれたからよ」

 母は何も言わず、ただ強く頷いた。


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 一方、エリオットもまた、教会へ向かう準備を整えていた。

 正装に身を包んだ彼の背筋は伸び、視線には揺るぎない決意が宿っている。

「本日を、皆が心待ちにしています」  側近が敬意を込めて言った。

「ええ」  エリオットは静かに答えた。 「この日を迎えられたことに、心から感謝しています」

 彼の胸にあるのは、誇りでも虚勢でもない。
 ただ、ヴェルナと共に生きる覚悟だけだった。


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 教会は、息を呑むほどに美しかった。

 純白の花々、柔らかな光、静かに満ちる祈りの空気。
 王家の関係者、社交界の重鎮、そして多くの住民たちが席を埋めている。

 やがて――
 祭壇にエリオットが立つ。

 その姿は領主として、そして夫となる者として、誰の目にも頼もしく映った。

 そして。

 扉が、ゆっくりと開かれる。

 静寂の中、ヴェルナが一歩、また一歩とバージンロードを進んでいく。

 純白のドレスが光を受け、
 その姿に、誰もが言葉を失った。

「……美しい」 「これほどの花嫁は、見たことがない」

 ささやきが広がる中、ヴェルナはまっすぐ前を見つめて歩いた。

 ――過去も、痛みも、すべてを乗り越えて。
 今はただ、隣に立つ人のもとへ。

 エリオットの隣に立った瞬間、二人は小さく視線を交わし、微笑んだ。


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 牧師の言葉が静かに響く。

 そして、誓いのとき。

「私は、ヴェルナを愛し」  エリオットは迷いなく言った。 「喜びも困難も共に分かち合い、生涯を共に歩むことを誓います」

「私も、エリオットと共に」  ヴェルナは穏やかに、しかし強く言葉を紡ぐ。 「未来を築き、支え合い、幸せを分かち合うことを誓います」

 拍手が、教会いっぱいに広がった。

 それは祝福であり、
 ふたりが歩んできた物語への賛歌でもあった。

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