婚約破棄された私ですが、領地も結婚も大成功でした

鍛高譚

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58話:祝福に包まれるひととき

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58話:祝福に包まれるひととき


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 結婚式が滞りなく終わったあと、
 教会の隣に広がる大きな広場では、盛大な披露宴が始まっていた。

 色とりどりの花飾り、柔らかな音楽、笑い声。
 住民たちと招待客が分け隔てなく集い、広場全体が祝福の空気に満ちている。

「まるで一つの家族の宴のようだな」  年配の貴族が、感慨深そうに呟いた。 「これほど温かい披露宴は、久しく見ていない」

 それは、形式だけの祝宴ではなかった。
 この領地で生きてきた人々の想いが、そのまま形になった場だった。


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 やがて、拍手の中でヴェルナとエリオットが壇上に立つ。

 純白のドレスに身を包んだヴェルナは、穏やかながらも凛とした表情で、ゆっくりと頭を下げた。

「本日は、私たちの結婚を祝うためにお集まりいただき、誠にありがとうございます」

 その声はよく通り、広場に静けさが広がる。

「ここまで歩んでこられたのは、皆様一人ひとりの支えがあったからです。
 その感謝を、これからの領地運営と、住民の皆様への尽力で必ずお返ししていきます」

 続いて、エリオットが一歩前に出た。

「私もまた、心より感謝申し上げます」 「ヴェルナと共に、この領地をより良い場所へ導くことを、ここに誓います」

 言葉が終わると、広場いっぱいに拍手が広がった。
 それは礼儀としての拍手ではなく、心からの祝福だった。


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 披露宴が始まると、広場はさらに賑やかさを増した。

 並べられた料理は、どれも住民たちの手によるものだった。
 焼きたてのパン、果実のパイ、香草を使った煮込み料理――。

「これは……本当に見事だ」  貴族の一人が思わず声を漏らす。

「この土地で採れた食材を使っています」  住民は誇らしげに胸を張った。 「ヴェルナ様のおかげで、安心して畑を耕せるようになりましたから」

 料理の味だけでなく、そこに込められた想いが、客人たちの心を打っていた。

 やがて、子どもたちによる小さな劇が始まり、
 拙いながらも一生懸命な演技に、広場は笑顔と拍手に包まれる。

 音楽が奏でられ、人々が自然と輪になって踊り始めた。

 貴族も住民も、身分の差を忘れ、ただこの時間を楽しんでいた。


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 その合間にも、貴族たちは次々と二人に祝福の言葉をかけていく。

「ヴェルナ様、あなたの生き方は、多くの者に勇気を与えています」

「ありがとうございます」  ヴェルナは穏やかに微笑んだ。 「これからも、信じる道を進んでいきます」

 エリオットにも、称賛と期待の言葉が向けられる。

「あなたが共にいるなら、この領地は安泰でしょう」

「その期待に応えられるよう、尽力いたします」

 二人の姿は、もはや“新婚の夫婦”というだけではなく、
 この地を導く存在として、確かに受け入れられていた。


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 披露宴の終盤、住民代表が壇上に立った。

「ヴェルナ様、エリオット様」  代表は深く頭を下げる。 「私たちは、お二人と共に歩めることを誇りに思っています」

「この領地がここまで穏やかで豊かな場所になったのは、お二人のおかげです。
 どうかこれからも、私たちの領主として、夫婦として、この地を導いてください」

 その言葉に、ヴェルナは胸が熱くなるのを感じた。

「……こちらこそ、ありがとうございます」 「皆さんと共に歩めることが、私たちの誇りです」

 エリオットも静かに頷いた。


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 最後に、再び二人が並んで前に立つ。

「この披露宴は、私たちだけのものではありません」  ヴェルナは力を込めて言った。 「ここに集うすべての人との絆を、改めて確かめる時間でした」

「これから先も、喜びも困難も、皆さんと共に分かち合っていきたい」  エリオットが続ける。

 拍手が、歓声が、広場を満たす。

 夕暮れの空の下、
 ヴェルナとエリオットは確かに感じていた。

 ――この地で、この人たちと、未来を築いていくのだと。


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