完璧すぎた令嬢ですが、婚約破棄のおかげで幸せを掴みました

鍛高譚

文字の大きさ
34 / 43

4-2 孤児院と商人ギルドの協力

しおりを挟む
孤児院と商人ギルドの協力

 孤児院の老朽化した建物を改修するため、ミアータはカイルの助言を仰ぎながら、支援金を募る仕組みづくりを急いでいた。特に注目したのは、王都で大きな影響力を持つ商人ギルドとの提携である。ギルドは様々な商人や職人を束ねる一大組織であり、慈善事業にも積極的に関わる傾向があると聞いていた。
 そこで、ミアータとカイルはギルド長と直接会い、孤児院への継続的な支援を要請することに決める。ギルドの事務所は王都の商業区にある比較的大きな建物で、日々多くの人が出入りしていた。

 「クラレット公爵令嬢とエルネスト侯爵が、直々にお越しとは光栄です。わたくし、ギルド長のゼイデンと申します。」
 品の良い背広に身を包んだ初老の男性が、にこやかに二人を出迎える。中背ながら堂々とした立ち姿と、微笑の奥に隠しきれない鋭さ――「商人ギルドの長を務めるだけのことはある」とミアータは感じた。
 「はじめまして、クラレット公爵家のミアータと申します。こちらは、エルネスト侯爵のカイル様です。今日は孤児院への支援についてお話させていただきたく……」
 ミアータが頭を下げると、ゼイデンはすぐに「まずはお掛けください」と応接室へ二人を案内する。商人ギルドらしく、質の良い革張りのソファや大きなテーブルが備えられ、打ち合わせには十分な環境だ。
 「拝見しているところ、今回の件はただの“一度きりの慈善”ではないご様子ですな。孤児院の運営体制や、そこに暮らす子供たちの自立支援にまで目を向けていらっしゃる」
 ゼイデンは書類に目を通しながら感心したように笑う。
 「ええ、金銭的援助はもちろん必要ですが、長期的に見ると教育や職業訓練、あるいは職人との連携による学びがあれば、子供たちが将来的に社会へ出やすくなると思います。そのためには、商人や職人の方々の協力が不可欠かと」
 ミアータはぎこちなくならないよう、しかし心を込めて説明をする。隣でカイルも補足を加え、具体的なプランや予算配分の案を示した。
 「なるほど、興味深いですね。私どものギルドとしても、若い人材が育つのは好ましい。特に孤児院の子供たちが将来職人を目指してくれるなら、我々にとってもメリットがあるでしょう」
 ゼイデンは書類を閉じると、真剣な面持ちで二人を見据える。
 「公爵令嬢、侯爵様。我々が協力する条件はただひとつ、“継続性”です。一度お金を投じて終わり、というのでは意味がありません。少なくとも5年、できれば10年スパンでの支援体制と運営計画が必要です。もしそちらの覚悟があるのなら……喜んで協力いたしましょう」
 それは大きな決断だった。5年、10年という長期にわたるプロジェクトとなれば、まとまった資金だけでなく管理・運営の人材も必要になる。一方で、それが実現すれば孤児院の未来は安泰になり、子供たちが自立への道を歩める大きなチャンスとなる。
 「もちろん、そのつもりでおります。私が責任をもって続けていきます」
 ミアータは迷いなく頷く。その横でカイルも微笑み、彼女の肩を軽く叩いて勇気づける。
 「素晴らしい。では、このプロジェクトは私ども商人ギルドも積極的にサポートいたしましょう。ただし、詰めるべき事項は多々ありますから、後ほど詳細な契約書を交わします。よろしいでしょうか?」
 「はい、よろしくお願いします!」
 二人は同時に頭を下げる。ゼイデンは「お若いのに大した熱意ですな」と感心しながら、契約のための書類を取りまとめるようギルドの職員へ指示を出した。

 こうして、孤児院の支援体制はひとつの大きな節目を迎えた。ミアータは心の底から安堵すると同時に、これから先に待ち受ける困難――資金の継続確保や運営スタッフとの連携――を思い、さらに身が引き締まる思いであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

兄の婚約解消による支払うべき代償【本編完結】

美麗
恋愛
アスターテ皇国 皇帝 ヨハン=シュトラウス=アスターテ アスターテ皇国は周辺国との関係も良く、落ち着いた治世が続いていた。貴族も平民も良く働き、平和で豊かな暮らしをおくっている。 皇帝ヨハンには 皇妃に男の子が一人 妾妃に女の子が一人 二人の子どもがある。 皇妃の産んだ男の子が皇太子となり 妾妃の産んだ女の子は降嫁することが決まっている。 その皇女様の降嫁先だった侯爵家の とばっちりを受けた妹のお話。 始まります。 よろしくお願いします。

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました

鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」 そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。 王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。 私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。 けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。 華やかな王宮。 厳しい王妃許育。 揺らぐ王家の威信。 そして――王子の重大な過ち。 王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。 離縁を望んでも叶わない義妹。 肩書きを失ってなお歩き直す王子。 そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。 ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。 婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。

【完結】私を捨てた国のその後を見守ってみた。

satomi
恋愛
侯爵令嬢のレナは公然の場でというか、卒業パーティーで王太子殿下イズライールに婚約破棄をされた挙句、王太子殿下は男爵令嬢のラーラと婚約を宣言。 殿下は陛下や王妃様がいないときを狙ったんでしょうね。 レナの父はアルロジラ王国の宰相です。実家にはレナの兄が4名いますがみんなそろいもそろって優秀。 長男は領地経営、次男は貿易商、3男は情報屋、4男は…オカマバー経営。 レナは殿下に愛想をつかして、アルロジラ王国の行く末を見守ろうと決意するのです。 次男監修により、国交の断絶しているエミューダ帝国にて。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

処理中です...