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4-2 孤児院と商人ギルドの協力
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孤児院と商人ギルドの協力
孤児院の老朽化した建物を改修するため、ミアータはカイルの助言を仰ぎながら、支援金を募る仕組みづくりを急いでいた。特に注目したのは、王都で大きな影響力を持つ商人ギルドとの提携である。ギルドは様々な商人や職人を束ねる一大組織であり、慈善事業にも積極的に関わる傾向があると聞いていた。
そこで、ミアータとカイルはギルド長と直接会い、孤児院への継続的な支援を要請することに決める。ギルドの事務所は王都の商業区にある比較的大きな建物で、日々多くの人が出入りしていた。
「クラレット公爵令嬢とエルネスト侯爵が、直々にお越しとは光栄です。わたくし、ギルド長のゼイデンと申します。」
品の良い背広に身を包んだ初老の男性が、にこやかに二人を出迎える。中背ながら堂々とした立ち姿と、微笑の奥に隠しきれない鋭さ――「商人ギルドの長を務めるだけのことはある」とミアータは感じた。
「はじめまして、クラレット公爵家のミアータと申します。こちらは、エルネスト侯爵のカイル様です。今日は孤児院への支援についてお話させていただきたく……」
ミアータが頭を下げると、ゼイデンはすぐに「まずはお掛けください」と応接室へ二人を案内する。商人ギルドらしく、質の良い革張りのソファや大きなテーブルが備えられ、打ち合わせには十分な環境だ。
「拝見しているところ、今回の件はただの“一度きりの慈善”ではないご様子ですな。孤児院の運営体制や、そこに暮らす子供たちの自立支援にまで目を向けていらっしゃる」
ゼイデンは書類に目を通しながら感心したように笑う。
「ええ、金銭的援助はもちろん必要ですが、長期的に見ると教育や職業訓練、あるいは職人との連携による学びがあれば、子供たちが将来的に社会へ出やすくなると思います。そのためには、商人や職人の方々の協力が不可欠かと」
ミアータはぎこちなくならないよう、しかし心を込めて説明をする。隣でカイルも補足を加え、具体的なプランや予算配分の案を示した。
「なるほど、興味深いですね。私どものギルドとしても、若い人材が育つのは好ましい。特に孤児院の子供たちが将来職人を目指してくれるなら、我々にとってもメリットがあるでしょう」
ゼイデンは書類を閉じると、真剣な面持ちで二人を見据える。
「公爵令嬢、侯爵様。我々が協力する条件はただひとつ、“継続性”です。一度お金を投じて終わり、というのでは意味がありません。少なくとも5年、できれば10年スパンでの支援体制と運営計画が必要です。もしそちらの覚悟があるのなら……喜んで協力いたしましょう」
それは大きな決断だった。5年、10年という長期にわたるプロジェクトとなれば、まとまった資金だけでなく管理・運営の人材も必要になる。一方で、それが実現すれば孤児院の未来は安泰になり、子供たちが自立への道を歩める大きなチャンスとなる。
「もちろん、そのつもりでおります。私が責任をもって続けていきます」
ミアータは迷いなく頷く。その横でカイルも微笑み、彼女の肩を軽く叩いて勇気づける。
「素晴らしい。では、このプロジェクトは私ども商人ギルドも積極的にサポートいたしましょう。ただし、詰めるべき事項は多々ありますから、後ほど詳細な契約書を交わします。よろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします!」
二人は同時に頭を下げる。ゼイデンは「お若いのに大した熱意ですな」と感心しながら、契約のための書類を取りまとめるようギルドの職員へ指示を出した。
こうして、孤児院の支援体制はひとつの大きな節目を迎えた。ミアータは心の底から安堵すると同時に、これから先に待ち受ける困難――資金の継続確保や運営スタッフとの連携――を思い、さらに身が引き締まる思いであった。
孤児院の老朽化した建物を改修するため、ミアータはカイルの助言を仰ぎながら、支援金を募る仕組みづくりを急いでいた。特に注目したのは、王都で大きな影響力を持つ商人ギルドとの提携である。ギルドは様々な商人や職人を束ねる一大組織であり、慈善事業にも積極的に関わる傾向があると聞いていた。
そこで、ミアータとカイルはギルド長と直接会い、孤児院への継続的な支援を要請することに決める。ギルドの事務所は王都の商業区にある比較的大きな建物で、日々多くの人が出入りしていた。
「クラレット公爵令嬢とエルネスト侯爵が、直々にお越しとは光栄です。わたくし、ギルド長のゼイデンと申します。」
品の良い背広に身を包んだ初老の男性が、にこやかに二人を出迎える。中背ながら堂々とした立ち姿と、微笑の奥に隠しきれない鋭さ――「商人ギルドの長を務めるだけのことはある」とミアータは感じた。
「はじめまして、クラレット公爵家のミアータと申します。こちらは、エルネスト侯爵のカイル様です。今日は孤児院への支援についてお話させていただきたく……」
ミアータが頭を下げると、ゼイデンはすぐに「まずはお掛けください」と応接室へ二人を案内する。商人ギルドらしく、質の良い革張りのソファや大きなテーブルが備えられ、打ち合わせには十分な環境だ。
「拝見しているところ、今回の件はただの“一度きりの慈善”ではないご様子ですな。孤児院の運営体制や、そこに暮らす子供たちの自立支援にまで目を向けていらっしゃる」
ゼイデンは書類に目を通しながら感心したように笑う。
「ええ、金銭的援助はもちろん必要ですが、長期的に見ると教育や職業訓練、あるいは職人との連携による学びがあれば、子供たちが将来的に社会へ出やすくなると思います。そのためには、商人や職人の方々の協力が不可欠かと」
ミアータはぎこちなくならないよう、しかし心を込めて説明をする。隣でカイルも補足を加え、具体的なプランや予算配分の案を示した。
「なるほど、興味深いですね。私どものギルドとしても、若い人材が育つのは好ましい。特に孤児院の子供たちが将来職人を目指してくれるなら、我々にとってもメリットがあるでしょう」
ゼイデンは書類を閉じると、真剣な面持ちで二人を見据える。
「公爵令嬢、侯爵様。我々が協力する条件はただひとつ、“継続性”です。一度お金を投じて終わり、というのでは意味がありません。少なくとも5年、できれば10年スパンでの支援体制と運営計画が必要です。もしそちらの覚悟があるのなら……喜んで協力いたしましょう」
それは大きな決断だった。5年、10年という長期にわたるプロジェクトとなれば、まとまった資金だけでなく管理・運営の人材も必要になる。一方で、それが実現すれば孤児院の未来は安泰になり、子供たちが自立への道を歩める大きなチャンスとなる。
「もちろん、そのつもりでおります。私が責任をもって続けていきます」
ミアータは迷いなく頷く。その横でカイルも微笑み、彼女の肩を軽く叩いて勇気づける。
「素晴らしい。では、このプロジェクトは私ども商人ギルドも積極的にサポートいたしましょう。ただし、詰めるべき事項は多々ありますから、後ほど詳細な契約書を交わします。よろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします!」
二人は同時に頭を下げる。ゼイデンは「お若いのに大した熱意ですな」と感心しながら、契約のための書類を取りまとめるようギルドの職員へ指示を出した。
こうして、孤児院の支援体制はひとつの大きな節目を迎えた。ミアータは心の底から安堵すると同時に、これから先に待ち受ける困難――資金の継続確保や運営スタッフとの連携――を思い、さらに身が引き締まる思いであった。
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