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13話
しおりを挟む王宮の重い扉が閉ざされるとともに、かつて王太子として栄光を誇ったアルベルト・フォン・ディアレストの運命は、永遠に失われることとなった。国王と重臣たちの厳粛な宣告を受け、彼は王族としてのすべての資格を剥奪され、正式に国外追放の刑に服する運命が決定されたのだ。王宮の中枢に広がる豪華な回廊は、今や冷たい石造りの壁と、厳粛な重圧だけが漂い、かつての輝かしい日々の面影はどこにも見当たらなかった。
その日の朝、王宮の大広間に集まった貴族や重臣たちは、国王の重い口調の中で、アルベルトの廃嫡と国外追放が正式に発表されるのを静かに聞いていた。「アルベルト・フォン・ディアレスト、これよりあなたは王族の資格を失い、我が国の外に追放されます。その名は歴史からも消され、二度とこの国の地に足を踏み入れてはならぬ。」と国王は宣告した。広間は一瞬にして凍りつき、誰もがその厳しい言葉に息を飲んだ。
アルベルトは、すでに自らの過ちと狂気に苛まれていた。国王の言葉が響く中、彼は震える手で自らの顔を覆い、苦悶の叫びをあげた。「なぜ……なぜ、私が……なぜこんな目に遭うのか……」彼の声は虚ろで、かつての威厳はすっかり失われ、ただ深い絶望と狂気がその中に宿っていた。周囲の重臣たちは、彼の叫びを聞いて、ただただ静かに頷くしかなかった。すべては彼自身の誤った選択の結果であり、誰にも取り返しがつかない過ちであったのだ。
護衛たちは、王宮内での最終の儀式として、アルベルトを厳重に拘束し、重い鉄鎖をかけながら、冷たい外の世界へと引きずり出した。王宮の大広間の扉が重々しく閉じられ、その音は、まるで彼の未来が完全に閉ざされたかのように響いた。
「これで、全ては終わった……」
アルベルトは、最後の抵抗も虚しく、深い後悔と共にその身を追放の道へと委ねた。
王宮の門前で、護衛騎士の一人が、静かに彼に告げた。「これが、国境です。これより先は、あなた自身の力で生きるしかありません。」
アルベルトは、かすかな涙を浮かべながら、ただうなずくしかなかった。彼の心には、かつてルーシュエに抱いた熱い想いと、今ではそれすらも取り戻せぬ絶望が交錯していた。
数日後、アルベルトは王国の国境に連れて行かれた。国境を越えると、彼はもはや王族ではなく、ただの追放者として扱われることとなった。国境に立つその場所は、厳しい監視の下にあり、民衆からは軽蔑の眼差しを向けられる。
「お前は、王族としての栄光も、威厳も、何もかも失ったのだ。」
護衛たちの冷たい言葉が、アルベルトの心に深い傷を刻む。彼は、追放の先にある異国の地へと歩みを進めながら、内心で静かに、しかし確実に、過去への後悔に苛まれていた。
追放された彼の行く先は、豊かな国々から遠く離れた、辺境の荒れ果てた地であった。新たな生活のために、彼は異国の地で助けを求めるが、彼の名はすでにどこにも通用せず、王族としての信用も、財産も、すべてが失われていた。
アルベルトは、異国の港町に辿り着くと、そこでは誰もが彼をただの浮浪者として扱った。
「こんな男が、かつて王太子だと?」
と、通りすがりの民衆が笑い、軽蔑の言葉を投げかける。
彼は、かつての栄光を取り戻す術もなく、ただ一人、途方に暮れていた。
日が経つにつれて、アルベルトは次第に異国の路地裏でひっそりと生きるようになった。
王宮での重い鎖が解かれたわけでもなく、ただ自らの過ちと、取り返しのつかぬ後悔に押しつぶされるような生活が続いた。
街角で食事を探し、寝床を見つけるも、そのすべては、かつての王太子としての威厳とは程遠いものだった。
ある日、アルベルトは、ふと薄暗い路地で、野盗の一団に遭遇した。
野盗たちは、彼のボロボロの服装や、途方に暮れる姿を見て、軽蔑の笑いを浮かべながら近づいてきた。
「おい、王様か? そんな見苦しい格好で何をしているんだ?」
野盗の一人が、嘲笑いながら彼に声をかけた。
アルベルトは、かすかな抵抗の気配を見せようと、最後の力を振り絞り、声を上げた。
「私は、王太子……!」
しかし、その声は、冷たい路地の中ですぐにかき消され、彼は無情にも襲われた。
野盗たちは、彼の持っていた僅かな持ち物を奪い取り、容赦なく暴行を加えた。
その惨めな姿は、まるでかつての王太子が、誰の記憶にも残らぬ存在へと堕ちたかのようであった。
アルベルトは、痛みと屈辱の中で、必死に助けを求めようとしたが、周囲には彼を助ける者はおらず、ただ無情に彼の悲鳴だけが路地裏に響いていた。
「誰か……助けてくれ……!」
しかし、答えるものはなく、彼はそのまま、深い闇に呑まれていった。
野盗たちの手によって、彼の名は、歴史の片隅に消される運命となった。
王太子としての誇りも、未来への希望も、すべては彼自身の狂気と誤った選択の結果であった。
民衆の中では、彼の存在はもはや伝説すらも語られることはなく、ただ一人、道端で朽ち果てた姿が、いつしか忘れ去られていった。
国王や重臣たちの改革は、彼の廃嫡とともに新たな時代を迎える一方で、アルベルトの破滅は、王家の誤った選択がもたらした悲劇として、後世に語り継がれることとなった。
「すべては、私の選択の結果だ……」
その言葉は、アルベルト自身が、異国の暗い路地裏で、痛烈な後悔と共に呟く最後の叫びとなった。
そして、彼の姿は、時の流れの中に静かに消え、もはや誰の記憶にも留まることはなかった。
一方、ルーシュエ・フォン・リヒトは、王宮のしがらみから解放され、自由な冒険者としての生き方を貫いていた。
彼女は、広大な大地を駆け抜け、山々や川を越え、誰にも縛られることなく、自らの意思で未来を切り拓く決意を胸に刻んでいた。
「私は、自由だ。どんな逆境も、必ず乗り越えてみせる。」
その言葉は、広々とした草原や、輝く太陽の下で、彼女の心に確かな光を与えていた。
そして、ルーシュエは、新たな仲間と共に、未知なる冒険の旅へと歩み出すのだった。
王宮での混乱と、アルベルトの破滅が国全体に波紋を広げる中、民衆の間では、王族への不信感が増し、改革への期待が高まっていた。
新たな体制の下で、国王は、王家の伝統と国の未来を守るため、厳しい改革を断行し、民衆の信頼を回復するための政策を打ち出した。
その結果、王家の中で、真の指導者として第二王子エドワードが台頭し、国の新たな希望として位置づけられることとなった。
しかし、アルベルトの破滅とともに、かつての輝かしい王太子としての姿は、もはや誰の記憶にも留まることはなかった。
彼の狂気と後悔は、歴史の闇に埋もれ、時とともに消え去っていった。
「なぜ……私は報われなかったのか……」
その叫びは、異国の荒野で、風に舞う塵のように、永遠に残ることはなかった。
こうして、王宮の門が閉ざされ、アルベルトは国外追放の身となり、野盗に襲われ、名も残さぬまま、この世から静かに消え去っていった。
国民の間では、かつての王太子の存在は、ただの悲劇として語られ、教訓として後世に伝えられることとなった。
ルーシュエは、そのすべてのしがらみから完全に解放され、自由な冒険者として、新たな未来へと歩み出す。
彼女は、過去の痛みや裏切りを胸に抱きながらも、その全てを糧として、自らの道を突き進む覚悟を固めた。
「私は、もう誰にも縛られない。未来は私自身の手で創り上げるのだ。」
その決意は、広大な大地に響き渡り、彼女の心に燃える希望の炎となって、次なる冒険へと続く道を照らしていた。
こうして、第三部 第3章「王太子の陰謀発覚と廃嫡」は、王家の誤った選択と、それに伴う国家の混乱、そして個々の運命が激しく交錯する中で幕を閉じた。
国の未来は、改革と新たな体制の下で再び動き出し、かつての悲劇は、改めて教訓として国民の記憶に刻まれることとなった。
アルベルトの後悔は、時の彼方に埋もれ、彼の名前は歴史の中で消え去っていったが、ルーシュエは自由への歩みを止めることなく、未来への希望を胸に、新たな冒険の世界へと旅立っていった。
「すべては、私の選択の結果……」
その言葉は、荒野に吹く風のように、虚しくも確かに、彼の苦悶の証として記憶され、永遠に消えることはなかった。
一方で、ルーシュエは、今後も数々の試練と出会いながら、自らの力で未来を切り拓く決意を新たに、自由な魂として生き続けるのであった。
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