『魔女狩り?魔女裁判?狩られるのも裁かれるのもお前らだ!』

鍛高譚

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2-4. 処刑の日の決定

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2-4. 処刑の日の決定

翌朝、冷たい霧が王都の広場を覆う中、即席の審問壇が組み上げられた。石畳に敷かれた緋色の絨毯は、血の儀式を予感させる。壇上には審問官や高位聖職者、貴族の役人たちが列を成し、その背後には大勢の兵士が槍を構えて並ぶ。人いきれが湧き上がる広場には、市井の民が耳目を集めるために押し寄せ、ざわめきと胸の高鳴りが混ざり合っていた。

裁判長を務める大審問官が杖を一振りすると、喧騒は一瞬で凍りつく。重々しい声が石壁に反響する。
「被告――リリス・オルナティス並びに同房の四名。お前たちは魔術を用い、人々に災いをもたらし、『魔女』として裁かれる。審問はすでに尽くされた。陳述、証拠は十分。判決を言い渡す」

検事役の聖職者が進み出て、厳かに書類を広げる。そこに記されたのは、魔術行使の痕跡、村の支配者からの通報、そして何より「リリスが無償で配った薬草には人の魂を絡め取る呪いが込められている」という噂の数々だった。聴衆の多くはこれを「魔女の証拠」として頷き、凍りついたまなざしで牢獄を見つめる。

「被告人は、いかなる拷問にも耐え、異端の魔術を隠し持っている疑いは深い。村人救済の名目で無垢の者を操り、国家秩序を揺るがした罪は、極めて重大である」

裁判官席からうなずきが漏れ、貴族らが声高に同意を示す。ついには裁判長が小槌を打ち鳴らし、決定的な言葉を下す。

「よって、リリス・オルナティス及び同犯の四名は、明朝の火刑に処す。神の御手に委ねられよ」

その瞬間、広場は歓声と拍手に揺れた。誰もが「正義が下された」と確信し、炎が悪を浄化すると信じて疑わなかった。だが、聴衆の中には微かな動揺を隠せない者もいた。若い軍務官が顔を青ざめ、レオン神官は瞳を伏せてしまう。

そのとき、審問壇の最前列で見守っていたエミリアたち少女四人が、不安げに肩を寄せ合った。リリスを信じたい気持ちと、国家の命令に従わねばならない現実との間で揺れる。ひとりが小さな声で囁く。
「……リリス、本当に大丈夫かな」
だが返事はない。リリスは堂々と顔を上げ、穏やかに世界を見つめていた。目に悲痛や恐怖はなく、むしろどこか楽しげな微笑がその唇を彩っているかのようだった。

だが広場の石畳を踏む兵士の音が、嘲笑にも似たざわめきをもたらす。火刑台の脇には、支柱に固定された十字架状の枠組みが用意され、薪が積まれている。絵に描いたような処刑の舞台からは、もはや逃れられない運命が漂っていた。

審問官が再び声を張る。
「被告、何か最後に言い残すことがあれば述べよ」

広場の喧騒が一瞬、すべてを飲み込まれたかのように静まり返る。人々の視線が、牢獄の鉄格子に縛られたリリスだけに注がれる。彼女は静かに口を開いた。

「……いよいよ、ですね」

その言葉は、異様な静謐を生み出した。囚人の常ならぬ落ち着きと余裕が、聴衆の胸に不安を呼び覚ます。言い回しに嘲りや侮蔑はなく、まるで舞台の幕開けを告げるかのような予告めいた響きだった。

聴衆の中から、誰もが同時に囁き合う。
「本当に、そんな言い方をするのか……?」
「これが、魔女の余裕というものか」
「まさか逆襲が待っているのでは――」

人々が戸惑うその隙を突くように、リリスは視線を高く掲げた。その目は遠くの青空を映しこむように澄み渡り、誰にも見せたことのない威厳を宿していた。少女たちの手を軽く握りしめ、炎を迎える覚悟を整えるかのように肩を張る――その姿は、はるか彼方の朝を確信しているかのようだった。

誰もが「必要以上に怯えるな」と審問官の言葉を聞き流す中、レオン神官だけは視線を外せずにいた。彼の胸中には、信仰と正義、そして慈悲への迷いが渦巻き、処刑の決定がもたらした衝撃は、広場全体を震わせる前兆のように秘められていた。

こうして、リリスと少女たちの“火刑決定”は、王都とエウロリア大陸全土に知れ渡ることとなる。誰もが炎の浄化を信じて疑わない運命の日――だがその裏側には、誰も予測できない“本物の魔女の怒り”が静かに燃え広がっていた。

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