追放される前に、迷宮を支配しました ~聖女は王国を見限る~

鍛高譚

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15話:王子の懇願

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15話:王子の懇願


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 エクシード王子は、サラの姿を目の前にして硬直していた。

 死んだはずの女が、今ここに立っている。

 それだけではない。

 彼女の背後には、巨大な影が揺らめいている。

 その正体は、三つ首の魔獣・ケルベロスだった。

 地を這うような低い唸り声が響き渡り、王宮の広間の空気が張り詰める。

 「ま……待て……! 俺は……俺は……!」

 エクシードは震える唇で言葉を紡ぐが、思考が追いつかない。

 この状況が理解できなかった。

 「お前は……死んだはずでは……!?」

 必死の問いかけに、サラは冷たい笑みを浮かべる。

 「死んでいたら、よかったの?」

 「……っ!」

 エクシードの顔が青ざめる。

 心臓が早鐘のように打ち始めるのが自分でも分かった。


---

崩れゆくプライド

 「待ってくれ……! 話を……話を聞いてくれ……!」

 つい先ほどまで、彼は余裕のある王子でいられたはずだった。

 国王の長子として生まれ、順当にいけば王位を継ぐはずの存在。

 だが今、そんな誇りも何もかも崩れ去り、ただの一人の男として恐怖に震えていた。

 サラの視線が突き刺さる。

 「話を聞け? どの口がそれを言うのかしら?」

 「お、俺は……!」

 エクシードは喉を鳴らしながら、必死に弁解しようとする。

 「ち、違うんだ! 俺は……ただ、国のために……そう、そうだ! 俺は国のためにお前を……!」

 「国のため?」

 サラの声が嘲笑に染まる。

 「私を迷宮に捨てたのが、国のためだと?」

 「そ、そうだ……! 俺は……っ!」

 「あなたはただ、自分の都合のために私を排除しようとしただけでしょう?」

 サラの言葉は鋭い刃のように、エクシードの心をえぐった。

 彼は言い返すこともできず、ただ口をパクパクと動かすだけだった。


---

王子の懇願

 ついに、エクシードは耐えられなくなった。

 「頼む、許してくれ……!」

 彼は床に膝をつき、サラの足元に縋りついた。

 「俺が悪かった……! 俺が間違っていた……!」

 王宮の豪奢な絨毯の上で、王子が情けなく土下座する姿に、サラの表情は微動だにしない。

 「だから、お願いだ……俺を許してくれ……!」

 その声は涙交じりだった。

 だが、サラは無言のまま、それを見下ろしていた。

 かつて彼女が慕った王子。

 かつて王国の未来を担うと期待された男。

 その姿は、今や見る影もなかった。

 王冠をかぶることを夢見た男が、こうして彼女の前で跪き、命乞いをしている。

 ——しかし、彼女の心に湧き上がる感情は、憐れみではなかった。

 「あなたを許すつもりはないわ。」

 「そ、そんな……!!」

 エクシードは絶望の声を上げた。

 「お前がいなければ、王国は崩れるんだ……!」

 「それは……あなたの責任でしょう?」

 サラは冷たく笑った。

 「あなたが選んだのよ、"偽聖女"を。今さら、私に泣きつくなんて、都合が良すぎると思わない?」

 エクシードは愕然とした。

 彼の未来は、完全に閉ざされたのだ。


---

逃げられぬ運命

 「ま、待ってくれ……!」

 エクシードは必死にしがみつく。

 しかし——

 サラの後ろに立つ影が、ゆっくりと動き出した。

 「が……!」

 エクシードの喉が凍りつく。

 そこに立っていたのは、巨大な三つ首の魔獣——ケルベロス。

 「お前は……っ!」

 エクシードは後ずさる。

 「こ、こっちに来るな……!!」

 ケルベロスは低く唸り、じりじりとエクシードに迫る。

 その圧倒的な威圧感に、エクシードは耐えられなくなった。

 「やめろおおおお!!!」

 彼は絶叫しながら、必死に逃げようとする。

 しかし、王宮の扉はいつの間にか閉ざされていた。

 彼は、逃げられない。

 「さあ、"新しい聖女"と一緒に、王国を守りなさい。」

 サラは静かに言った。

 「あなたが望んだ未来よ。」


---

王子の最後の叫び

 「違う……! こんなはずじゃ……!」

 エクシードは絶叫した。

 「俺は……俺は王になるはずだったんだ……!!」

 しかし、その声は虚しく響くだけだった。

 サラは静かに背を向ける。

 エクシードの運命に興味はなかった。

 彼がどうなろうと、もう関係ない。

 彼は、自らの選択の責任を取るしかないのだから。

 サラは、静かにその場を去った。

 背後で聞こえるのは、エクシードの絶望的な叫びだけだった。
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