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第1章:婚約破棄と屈辱の夜
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王都ベルヴァールの中心部にある壮麗な宮廷は、歴代の王たちの手によって増改築を繰り返されてきた。高くそびえる白亜の塔、美しく連なる回廊、そして四方を囲む中庭には季節ごとに異なる花が咲き誇る。その夜、宮廷では年に一度の大舞踏会が催され、招待された貴族たちが各々の華やかな衣装に身を包み集結していた。
エミリア・ウィンスレットが到着したのは、夜会が始まって間もない頃。彼女はしっとりと落ち着いた深紅のドレスに身を包んでおり、肩までの金の髪をやや上にまとめ、うなじを艶やかに見せている。スカートの裾にはさりげない刺繍が施され、光の加減によって薔薇の模様が浮かび上がる仕立てだ。ゴテゴテと装飾を盛り過ぎず、それでいて上品な存在感を放つ――まさにエミリアらしい装いだった。
彼女は公爵家の令嬢でありながら、自慢げに振る舞うことは決してしない。ゆえに社交界では「優雅で穏やかな薔薇」と称されていた。生まれついての階級の高さと美貌に、周囲からは少なからず妬みや羨望が向けられるが、それ以上に彼女の柔らかな笑顔と公平な物腰が人々を魅了している。
もっとも、彼女にとってこの夜会は心から楽しめる場ではなかった。なぜなら、彼女には正式に婚約している相手――アルバート・ロンズデールがいるのだが、最近どうもその態度がおかしい。その兆候はここ数週間の間にじわじわと見え始めていた。以前ならばエミリアのために馬車を手配し、華やかな花束を贈り、何かと気遣いを見せてくれたアルバート。しかし、近頃はまるで意図的に距離を置くように、手紙もそっけなく、面会の約束すら先延ばしが続いている。
「いったい、どういうつもりなのかしら……」
舞踏会が始まる前、エミリアはウィンスレット公爵家の自室で侍女たちに手伝ってもらいながら、鏡の前で小さくため息をついた。だが、だからといっておろそかに振る舞うことは彼女の性分ではない。婚約者と冷え切った空気にあるとしても、公の場に出るからには公爵家の名に恥じない立ち居振る舞いをしなければならない。エミリアは自分を奮い立たせるように頬を軽く叩き、ドレスの裾を整えたのだった。
夜会へ到着すると、宰相家や伯爵家などの貴族がエミリアに挨拶を交わしてくる。彼女は丁寧な笑顔で応じ、しばらくは談笑を楽しんだ。周囲の貴族たちは彼女の美貌と気品に少なからず感嘆の声をあげている。だが、彼女の心中にはどこか落ち着かない感覚がくすぶっている。「アルバートは今どこにいるのか?」――そればかりが気になって仕方がない。
そんな彼女に声をかけてきたのは、幼なじみでもある侯爵家の娘、リリアン・メイフィールドだった。ふわふわとした淡いピンク色のドレスを身にまとい、栗色の髪をカールさせたリリアンは、エミリアの親友というよりは、どこか妹のように可愛らしい雰囲気を持つ。
「エミリア様、今宵も本当にお美しいですわ。……でも、お顔がどこか浮かないように見えます。アルバート様のことが気になりますの?」
リリアンは小声で心配を口にした。周囲に聞かれないようにするための配慮だ。エミリアは一瞬言葉に詰まるが、リリアンには隠しきれないと思い正直に答える。
「ええ、最近ずっとあの方の様子がおかしくて……。以前はこんなこと、なかったのに」
「うちの兄が言ってましたの。アルバート様、王宮に出入りする頻度がやけに増えているみたいだって」
「王宮に……」
アルバートは公爵子息とはいえ、官職を得てはいない。しかし近ごろは、王宮で要職につく貴族に顔を売ろうとしているのか、頻繁に王宮へ通っているという話をエミリアも耳にした。それがただの社交の一環であればまだ理解もできる。だが、明らかに彼女を避けていると思われる行動が続くため、胸の奥に不安が募っていた。
リリアンはエミリアの手をそっと握り、慰めるように語りかける。
「どうかあまりご自分を責めたりなさらないでくださいませ。何か事情があるのかもしれませんし……。エミリア様は何も悪くありませんわ」
「ありがとう、リリアン」
エミリアはリリアンに礼を言いつつも、不安は拭えない。そんななか、会場の奥で何やら喧騒が起こっているのに気づいた。ちらりと視線をやると、王家の者たちが揃って入場してきたらしい。白金のティアラを戴いた王女クラリッサが、スポットライトを浴びるように人々の視線を一身に受けている。
王女クラリッサは今年十八歳になったばかり。整った顔立ちと豊かな金髪を持ち、いかにも「高嶺の花」といった雰囲気を纏っている。気位の高さが彼女の美しさをさらに際立たせており、さすがは王家の一員と言わんばかりの圧倒的な存在感だった。
(あの王女殿下とアルバートは、どれほど関わりがあるのかしら――)
浮かんだ疑問は、ほどなくして答えを得ることになる。王女クラリッサのそばには、まるで当然のようにアルバート・ロンズデールが控えていたのだ。
「アルバート様……」
王宮の廊下で王女をエスコートする姿は、あまりにも親密そうで、どこか夫婦のような雰囲気さえ漂わせている。普段ならば、アルバートもエミリアの存在を見つければ会釈の一つでもするはずだが、今の彼はまるでエミリアなど目に入らぬとばかりに王女の方へ視線を向け続けている。それがエミリアの胸にチクリとした痛みを走らせた。
会場にいた多くの貴族が、アルバートと王女の並びに目を奪われ、ひそひそと噂を始める。――「いまさらだけれど、ロンズデール公爵家の跡取りって王女殿下とどういう関係なのかしら?」――「いつからあんなに親密に?」――「エミリア様はどう思っていらっしゃるのか」――といった具合に、好奇心と羨望、そして興味本位の揶揄が入り混じった声が飛び交っていた。
エミリアは平静を装いながら、できるだけ気品をもってその場をやり過ごそうとする。しかし、内心は嫌な予感ばかりが膨れあがる。彼女にとって、アルバートこそが幼い頃から「将来を誓い合った相手」であり、ウィンスレット公爵家との縁談は既に国王も承認していたはずなのだ。ところが、今の様子から推測するに、王女クラリッサとアルバートの関係はただの公的な繋がり以上のものがあるとしか思えない。
やがて音楽隊による華やかな演奏が始まり、舞踏会は一気に佳境へと移行する。男女がペアを作り、円形の舞踏フロアに出て優雅にステップを踏み始めた。エミリアも王宮の舞踏会では何度も踊った経験がある。周囲の貴族からは「エミリア様、一曲ご一緒にいかがでしょう?」と誘いもあるのだが、彼女はどこか落ち着かない気分のまま礼儀正しく断り続けた。なぜなら、彼女はどうしてもアルバートと話がしたかったからだ。
(まさか……婚約破棄なんてことはないわよね? でも、こうしている間にもアルバートは王女殿下の手を取って踊っている――)
視線を向けると、王女とアルバートが華麗にステップを踏みながら笑いあっている。見ていられない光景だった。王女の美貌と、アルバートの立ち居振る舞いは確かに絵になる。周囲の貴族たちも「あら、素敵なカップル」「本当にお似合い」などと口々に賞賛を送っている始末だ。
エミリア・ウィンスレットが到着したのは、夜会が始まって間もない頃。彼女はしっとりと落ち着いた深紅のドレスに身を包んでおり、肩までの金の髪をやや上にまとめ、うなじを艶やかに見せている。スカートの裾にはさりげない刺繍が施され、光の加減によって薔薇の模様が浮かび上がる仕立てだ。ゴテゴテと装飾を盛り過ぎず、それでいて上品な存在感を放つ――まさにエミリアらしい装いだった。
彼女は公爵家の令嬢でありながら、自慢げに振る舞うことは決してしない。ゆえに社交界では「優雅で穏やかな薔薇」と称されていた。生まれついての階級の高さと美貌に、周囲からは少なからず妬みや羨望が向けられるが、それ以上に彼女の柔らかな笑顔と公平な物腰が人々を魅了している。
もっとも、彼女にとってこの夜会は心から楽しめる場ではなかった。なぜなら、彼女には正式に婚約している相手――アルバート・ロンズデールがいるのだが、最近どうもその態度がおかしい。その兆候はここ数週間の間にじわじわと見え始めていた。以前ならばエミリアのために馬車を手配し、華やかな花束を贈り、何かと気遣いを見せてくれたアルバート。しかし、近頃はまるで意図的に距離を置くように、手紙もそっけなく、面会の約束すら先延ばしが続いている。
「いったい、どういうつもりなのかしら……」
舞踏会が始まる前、エミリアはウィンスレット公爵家の自室で侍女たちに手伝ってもらいながら、鏡の前で小さくため息をついた。だが、だからといっておろそかに振る舞うことは彼女の性分ではない。婚約者と冷え切った空気にあるとしても、公の場に出るからには公爵家の名に恥じない立ち居振る舞いをしなければならない。エミリアは自分を奮い立たせるように頬を軽く叩き、ドレスの裾を整えたのだった。
夜会へ到着すると、宰相家や伯爵家などの貴族がエミリアに挨拶を交わしてくる。彼女は丁寧な笑顔で応じ、しばらくは談笑を楽しんだ。周囲の貴族たちは彼女の美貌と気品に少なからず感嘆の声をあげている。だが、彼女の心中にはどこか落ち着かない感覚がくすぶっている。「アルバートは今どこにいるのか?」――そればかりが気になって仕方がない。
そんな彼女に声をかけてきたのは、幼なじみでもある侯爵家の娘、リリアン・メイフィールドだった。ふわふわとした淡いピンク色のドレスを身にまとい、栗色の髪をカールさせたリリアンは、エミリアの親友というよりは、どこか妹のように可愛らしい雰囲気を持つ。
「エミリア様、今宵も本当にお美しいですわ。……でも、お顔がどこか浮かないように見えます。アルバート様のことが気になりますの?」
リリアンは小声で心配を口にした。周囲に聞かれないようにするための配慮だ。エミリアは一瞬言葉に詰まるが、リリアンには隠しきれないと思い正直に答える。
「ええ、最近ずっとあの方の様子がおかしくて……。以前はこんなこと、なかったのに」
「うちの兄が言ってましたの。アルバート様、王宮に出入りする頻度がやけに増えているみたいだって」
「王宮に……」
アルバートは公爵子息とはいえ、官職を得てはいない。しかし近ごろは、王宮で要職につく貴族に顔を売ろうとしているのか、頻繁に王宮へ通っているという話をエミリアも耳にした。それがただの社交の一環であればまだ理解もできる。だが、明らかに彼女を避けていると思われる行動が続くため、胸の奥に不安が募っていた。
リリアンはエミリアの手をそっと握り、慰めるように語りかける。
「どうかあまりご自分を責めたりなさらないでくださいませ。何か事情があるのかもしれませんし……。エミリア様は何も悪くありませんわ」
「ありがとう、リリアン」
エミリアはリリアンに礼を言いつつも、不安は拭えない。そんななか、会場の奥で何やら喧騒が起こっているのに気づいた。ちらりと視線をやると、王家の者たちが揃って入場してきたらしい。白金のティアラを戴いた王女クラリッサが、スポットライトを浴びるように人々の視線を一身に受けている。
王女クラリッサは今年十八歳になったばかり。整った顔立ちと豊かな金髪を持ち、いかにも「高嶺の花」といった雰囲気を纏っている。気位の高さが彼女の美しさをさらに際立たせており、さすがは王家の一員と言わんばかりの圧倒的な存在感だった。
(あの王女殿下とアルバートは、どれほど関わりがあるのかしら――)
浮かんだ疑問は、ほどなくして答えを得ることになる。王女クラリッサのそばには、まるで当然のようにアルバート・ロンズデールが控えていたのだ。
「アルバート様……」
王宮の廊下で王女をエスコートする姿は、あまりにも親密そうで、どこか夫婦のような雰囲気さえ漂わせている。普段ならば、アルバートもエミリアの存在を見つければ会釈の一つでもするはずだが、今の彼はまるでエミリアなど目に入らぬとばかりに王女の方へ視線を向け続けている。それがエミリアの胸にチクリとした痛みを走らせた。
会場にいた多くの貴族が、アルバートと王女の並びに目を奪われ、ひそひそと噂を始める。――「いまさらだけれど、ロンズデール公爵家の跡取りって王女殿下とどういう関係なのかしら?」――「いつからあんなに親密に?」――「エミリア様はどう思っていらっしゃるのか」――といった具合に、好奇心と羨望、そして興味本位の揶揄が入り混じった声が飛び交っていた。
エミリアは平静を装いながら、できるだけ気品をもってその場をやり過ごそうとする。しかし、内心は嫌な予感ばかりが膨れあがる。彼女にとって、アルバートこそが幼い頃から「将来を誓い合った相手」であり、ウィンスレット公爵家との縁談は既に国王も承認していたはずなのだ。ところが、今の様子から推測するに、王女クラリッサとアルバートの関係はただの公的な繋がり以上のものがあるとしか思えない。
やがて音楽隊による華やかな演奏が始まり、舞踏会は一気に佳境へと移行する。男女がペアを作り、円形の舞踏フロアに出て優雅にステップを踏み始めた。エミリアも王宮の舞踏会では何度も踊った経験がある。周囲の貴族からは「エミリア様、一曲ご一緒にいかがでしょう?」と誘いもあるのだが、彼女はどこか落ち着かない気分のまま礼儀正しく断り続けた。なぜなら、彼女はどうしてもアルバートと話がしたかったからだ。
(まさか……婚約破棄なんてことはないわよね? でも、こうしている間にもアルバートは王女殿下の手を取って踊っている――)
視線を向けると、王女とアルバートが華麗にステップを踏みながら笑いあっている。見ていられない光景だった。王女の美貌と、アルバートの立ち居振る舞いは確かに絵になる。周囲の貴族たちも「あら、素敵なカップル」「本当にお似合い」などと口々に賞賛を送っている始末だ。
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