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第4章:最高の婚約者と婚約破棄された男の末路
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5.新たな婚約と、未来への一歩
王女クラリッサとアルバートが拘束されたあの日から、数日が経過した。彼らは宮廷内で取り調べを受け、やがて“王命の偽造”を主導したことが明らかになる。もっとも、クラリッサは王族であるがゆえ厳しい処罰こそ免れるものの、摂政の地位は剥奪され、遠方の離宮で謹慎の身となった。アルバートに至っては“婚約破棄”はもちろん、公爵子息としての立場も危うく、ロンズデール公爵家の継承権を失う形で事実上の追放処分を下される見通しだ。
こうして、婚約破棄を言い渡され侮辱された令嬢エミリア・ウィンスレットは、逆転を果たす。アルバートとクラリッサは自業自得の末路を迎え、社交界で大きく顔向けできなくなったのだ。
それからさらに幾日か経ったある日、エミリアは王宮の庭園へ足を運んでいた。美しい緑と色とりどりの花に囲まれながら、彼女は一人、静かに物思いに耽っている。――アルバートへの復讐は果たされたはずなのに、胸の奥にあるのは虚しさではない。むしろ、やっとすべてに決着がついたという安堵と、未来への希望だった。
すると、不意に背後から足音が近づき、声がかかる。
「エミリア。……こんなところにいたのか。探したよ」
振り返ると、そこには皇太子アレクシスがいた。近衛を伴わず一人で来たのか、ラフな衣装に身を包み、どこかくつろいだ雰囲気を漂わせている。エミリアは軽く頭を下げ、「失礼いたしました、殿下」と微笑んだ。
「謝らなくてもいい。君はいつだって、こうして花を眺めるのが好きだったろう。……私も一緒にいいか?」
「ええ、もちろん」
二人は並んで庭園の小径を歩き出す。爽やかな風が頬を撫で、木漏れ日が淡く照らす中、アレクシスが口を開いた。
「王女とアルバートの件は、ひとまず決着がついた。父上(国王陛下)は彼らの処遇を最終的に決めるらしいが、もう以前のように権力を握るのは不可能だろう。……これで、一連の混乱は収束に向かうはずだ」
エミリアは小さく頷き、視線を落とす。
「はい。私が望んでいた“彼らに後悔させる”という目的も、果たせたと思います。――それでも、なぜでしょう。今はただ……心が静かで、ホッとする感覚です」
アレクシスはそんな彼女の横顔を慈しむように見つめる。
「エミリアは強いな。並大抵の女性なら、あれほどの侮辱を受けたら泣き崩れて立ち直れないだろうに。……君は見事に乗り越え、逆に勝利した。さすがはウィンスレット公爵家の令嬢だよ」
その言葉に、エミリアはくすりと笑う。
「強い……そう見えますか? 自分では、まだまだ未熟だと感じます。あの夜会で婚約破棄を宣言された時は、本当に心が引き裂かれる思いでしたから。――でも、きっと、殿下が手を差し伸べてくださったからこそ、私は前を向けたのでしょうね」
「……私のほうこそ、感謝している。君がいなければ、クラリッサとアルバートの不正を暴くのはもっと難航しただろう。ウィンスレット家の支援と君の社交術があったからこそ、私はここまで来られたんだ」
二人は自然と視線を交わし合う。そのまましばし沈黙が続き、やがてアレクシスがエミリアの手をそっと取り、優しく握りしめた。
「エミリア・ウィンスレット。――私がこの国の王となったとき、君を隣に迎えたい。……いや、君が望むなら、今すぐにでも私の婚約者になってほしい」
突然の申し出に、エミリアの胸は大きく揺さぶられる。もちろん、アレクシスの想いを感じ取っていないわけではなかった。だが、改めて“婚約”という言葉を聞かされると、過去の傷が一瞬疼く。それでも彼女は顔を上げ、アレクシスの碧眼を真正面から見つめた。
(この方は、アルバートとは違う。……私をただの飾りではなく、対等なパートナーとして見てくれている。私も彼の力になりたい。――ならば、答えは決まっている)
エミリアは微笑みながら、そっと息をつく。
「ありがとうございます、殿下。……私でお力になれるのでしたら、喜んでお受けいたします。ウィンスレット公爵家の名に懸けて、あなたのお傍に仕えたい」
その瞬間、アレクシスの表情がぱっと輝き、穏やかな笑みを浮かべる。しっかりとエミリアの手を握り直し、彼女を引き寄せるようにして抱き寄せた。
「嬉しいよ、エミリア。……必ず君を幸せにしてみせる。君が二度と悲しい思いをしないよう、この手で守ると誓おう」
エミリアの胸に、熱いものが込み上げてきた。かつてアルバートからも“守る”という言葉を聞いたことはある。だが、今この瞬間に感じる安心感は、あの時とはまるで違う。本当に心から信じられる相手を得た――そう確信できるのだ。
柔らかな風が吹き、庭園の花々が揺れる。エミリアは瞳を閉じ、アレクシスの温もりを感じながら、静かに呟く。
「……ありがとう、殿下。私も、あなたと共にこの国を支えていきたい。どうか、よろしくお願いいたします」
こうして、エミリアは再び“婚約”という形で未来を描くことになった。今度は王族、それも皇太子であるアレクシスとの婚約であり、将来的に国を率いる立場となる。かつて“捨てられた令嬢”と揶揄された彼女が、最終的には“次期王妃”の最有力候補へと登り詰めるのだ。社交界がこの事実を知れば、今さらながらに“エミリアを無視していた者たち”が慌てて掌を返し、彼女に媚びへつらうに違いない。だが、エミリアはもうそんなことに振り回されない。
アルバート・ロンズデールは婚約を破棄した先で、結局は自らの野心に溺れて破滅の道を進んだ。王女クラリッサもまた、王族としての地位を乱用しようとして失墜し、これから先の人生は窮屈な“隠居”に甘んじるしかないかもしれない。
エミリアは一度は傷つき泣き崩れたが、そこから立ち上がり、ついに最高の相手と結ばれるに至った。これはまさに“婚約破棄ざまぁ”の物語。彼女が披露する“優雅で強かな逆襲”は、多くの人々に語り継がれるだろう。
――そして、エミリアが皇太子妃として戴冠する日が来れば、その優雅な微笑みに心を奪われる者は数知れない。そう遠くない未来、王都ベルヴァールは“気高き薔薇”の王妃を迎え、新たな繁栄の時代を迎えることになるのだから。
王女クラリッサとアルバートが拘束されたあの日から、数日が経過した。彼らは宮廷内で取り調べを受け、やがて“王命の偽造”を主導したことが明らかになる。もっとも、クラリッサは王族であるがゆえ厳しい処罰こそ免れるものの、摂政の地位は剥奪され、遠方の離宮で謹慎の身となった。アルバートに至っては“婚約破棄”はもちろん、公爵子息としての立場も危うく、ロンズデール公爵家の継承権を失う形で事実上の追放処分を下される見通しだ。
こうして、婚約破棄を言い渡され侮辱された令嬢エミリア・ウィンスレットは、逆転を果たす。アルバートとクラリッサは自業自得の末路を迎え、社交界で大きく顔向けできなくなったのだ。
それからさらに幾日か経ったある日、エミリアは王宮の庭園へ足を運んでいた。美しい緑と色とりどりの花に囲まれながら、彼女は一人、静かに物思いに耽っている。――アルバートへの復讐は果たされたはずなのに、胸の奥にあるのは虚しさではない。むしろ、やっとすべてに決着がついたという安堵と、未来への希望だった。
すると、不意に背後から足音が近づき、声がかかる。
「エミリア。……こんなところにいたのか。探したよ」
振り返ると、そこには皇太子アレクシスがいた。近衛を伴わず一人で来たのか、ラフな衣装に身を包み、どこかくつろいだ雰囲気を漂わせている。エミリアは軽く頭を下げ、「失礼いたしました、殿下」と微笑んだ。
「謝らなくてもいい。君はいつだって、こうして花を眺めるのが好きだったろう。……私も一緒にいいか?」
「ええ、もちろん」
二人は並んで庭園の小径を歩き出す。爽やかな風が頬を撫で、木漏れ日が淡く照らす中、アレクシスが口を開いた。
「王女とアルバートの件は、ひとまず決着がついた。父上(国王陛下)は彼らの処遇を最終的に決めるらしいが、もう以前のように権力を握るのは不可能だろう。……これで、一連の混乱は収束に向かうはずだ」
エミリアは小さく頷き、視線を落とす。
「はい。私が望んでいた“彼らに後悔させる”という目的も、果たせたと思います。――それでも、なぜでしょう。今はただ……心が静かで、ホッとする感覚です」
アレクシスはそんな彼女の横顔を慈しむように見つめる。
「エミリアは強いな。並大抵の女性なら、あれほどの侮辱を受けたら泣き崩れて立ち直れないだろうに。……君は見事に乗り越え、逆に勝利した。さすがはウィンスレット公爵家の令嬢だよ」
その言葉に、エミリアはくすりと笑う。
「強い……そう見えますか? 自分では、まだまだ未熟だと感じます。あの夜会で婚約破棄を宣言された時は、本当に心が引き裂かれる思いでしたから。――でも、きっと、殿下が手を差し伸べてくださったからこそ、私は前を向けたのでしょうね」
「……私のほうこそ、感謝している。君がいなければ、クラリッサとアルバートの不正を暴くのはもっと難航しただろう。ウィンスレット家の支援と君の社交術があったからこそ、私はここまで来られたんだ」
二人は自然と視線を交わし合う。そのまましばし沈黙が続き、やがてアレクシスがエミリアの手をそっと取り、優しく握りしめた。
「エミリア・ウィンスレット。――私がこの国の王となったとき、君を隣に迎えたい。……いや、君が望むなら、今すぐにでも私の婚約者になってほしい」
突然の申し出に、エミリアの胸は大きく揺さぶられる。もちろん、アレクシスの想いを感じ取っていないわけではなかった。だが、改めて“婚約”という言葉を聞かされると、過去の傷が一瞬疼く。それでも彼女は顔を上げ、アレクシスの碧眼を真正面から見つめた。
(この方は、アルバートとは違う。……私をただの飾りではなく、対等なパートナーとして見てくれている。私も彼の力になりたい。――ならば、答えは決まっている)
エミリアは微笑みながら、そっと息をつく。
「ありがとうございます、殿下。……私でお力になれるのでしたら、喜んでお受けいたします。ウィンスレット公爵家の名に懸けて、あなたのお傍に仕えたい」
その瞬間、アレクシスの表情がぱっと輝き、穏やかな笑みを浮かべる。しっかりとエミリアの手を握り直し、彼女を引き寄せるようにして抱き寄せた。
「嬉しいよ、エミリア。……必ず君を幸せにしてみせる。君が二度と悲しい思いをしないよう、この手で守ると誓おう」
エミリアの胸に、熱いものが込み上げてきた。かつてアルバートからも“守る”という言葉を聞いたことはある。だが、今この瞬間に感じる安心感は、あの時とはまるで違う。本当に心から信じられる相手を得た――そう確信できるのだ。
柔らかな風が吹き、庭園の花々が揺れる。エミリアは瞳を閉じ、アレクシスの温もりを感じながら、静かに呟く。
「……ありがとう、殿下。私も、あなたと共にこの国を支えていきたい。どうか、よろしくお願いいたします」
こうして、エミリアは再び“婚約”という形で未来を描くことになった。今度は王族、それも皇太子であるアレクシスとの婚約であり、将来的に国を率いる立場となる。かつて“捨てられた令嬢”と揶揄された彼女が、最終的には“次期王妃”の最有力候補へと登り詰めるのだ。社交界がこの事実を知れば、今さらながらに“エミリアを無視していた者たち”が慌てて掌を返し、彼女に媚びへつらうに違いない。だが、エミリアはもうそんなことに振り回されない。
アルバート・ロンズデールは婚約を破棄した先で、結局は自らの野心に溺れて破滅の道を進んだ。王女クラリッサもまた、王族としての地位を乱用しようとして失墜し、これから先の人生は窮屈な“隠居”に甘んじるしかないかもしれない。
エミリアは一度は傷つき泣き崩れたが、そこから立ち上がり、ついに最高の相手と結ばれるに至った。これはまさに“婚約破棄ざまぁ”の物語。彼女が披露する“優雅で強かな逆襲”は、多くの人々に語り継がれるだろう。
――そして、エミリアが皇太子妃として戴冠する日が来れば、その優雅な微笑みに心を奪われる者は数知れない。そう遠くない未来、王都ベルヴァールは“気高き薔薇”の王妃を迎え、新たな繁栄の時代を迎えることになるのだから。
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