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第2章 完璧なはずの生活と、夫の変化
17話
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静かに揺れる心
それからしばらく、公爵夫妻の日常は表面上何も変わらずに続いていた。
レオポルドは政治的・軍事的な仕事に追われ、カーテンリンゼは館の管理や慈善事業の窓口を担う。二人は必要な場面では連絡を取り合い、公爵夫人と公爵として、周囲から見れば申し分のない夫婦の役割を果たしている。
使用人たちも「公爵様と夫人様はうまくいっている」と噂するほどだ。並んで出かける姿など滅多に見られないが、不仲というわけでもなく、かといって愛に溺れる様子もない。ただ、必要な時にだけ互いを支え合う、無駄のない関係――まさに“契約結婚”の究極形といえた。
けれども、本人たちの胸の内には、少しずつ亀裂にも似た感情の変化が生まれている。夜の廊下でのすれ違い、子供たちの前で見せる優しさ、突然の求婚者に対する怒り……。そんな些細な出来事のひとつひとつが、二人の内面に小さな波紋を広げていくのだ。
愛を否定し、互いに干渉しない関係だからこそ、相手の無意識な言動が妙に心を揺さぶる。これは本当に契約通りの平穏な生活なのか、それとも――。
まだ誰も、その結末を知らない。唯一わかっているのは、契約の形だけでは抑えきれないものが確かに存在するということ。冷たいはずの心が、じわじわと温度を持ち始める。それが喜びなのか、恐れなのか、カーテンリンゼは判断できずにいた。
こうして、完璧を装う公爵夫妻の日常は、ゆっくりと、しかし確実に変化へと向かっていく。静かな揺れが、いつか大きな波となって二人の絆を試す時が来るかもしれない。
それは、愛を不要とする契約の破綻か。それとも、本物の愛へと至る始まりなのか――。
深い夜の中、誰もいない廊下を歩くレオポルドは、再びカーテンリンゼの部屋の前で足を止める。ドアの向こうで眠る彼女の存在を確かめるかのように、しばし静止するが、結局ノックをすることはないまま、その背中は闇へと溶け込んでいった。
遠い空に浮かぶ月が、まるで二人の行く末を見守るかのように、ひっそりと優しい光を降り注いでいた。
それからしばらく、公爵夫妻の日常は表面上何も変わらずに続いていた。
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まだ誰も、その結末を知らない。唯一わかっているのは、契約の形だけでは抑えきれないものが確かに存在するということ。冷たいはずの心が、じわじわと温度を持ち始める。それが喜びなのか、恐れなのか、カーテンリンゼは判断できずにいた。
こうして、完璧を装う公爵夫妻の日常は、ゆっくりと、しかし確実に変化へと向かっていく。静かな揺れが、いつか大きな波となって二人の絆を試す時が来るかもしれない。
それは、愛を不要とする契約の破綻か。それとも、本物の愛へと至る始まりなのか――。
深い夜の中、誰もいない廊下を歩くレオポルドは、再びカーテンリンゼの部屋の前で足を止める。ドアの向こうで眠る彼女の存在を確かめるかのように、しばし静止するが、結局ノックをすることはないまま、その背中は闇へと溶け込んでいった。
遠い空に浮かぶ月が、まるで二人の行く末を見守るかのように、ひっそりと優しい光を降り注いでいた。
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