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20話
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王国で起こる混乱
一方、その頃の王国では、あからさまな混乱が広がっていた。
第一の原因は、王太子 アルベルト とその正妃に迎えられた カトリーナ の無能ぶりが、すでに目に余る状態になっていたことだ。
アルベルトは表向きこそ「新しい王太子妃を得た」「フローラを捨ててカトリーナを選んだ」と堂々と口にしていたものの、その実態はまったくのデタラメだった。カトリーナは平民出身で宮廷教育もなく、貴族社会のマナーや政治の知識にはまるで縁がない。夜会や行事のたびに失態を繰り返し、王侯貴族たちから苦々しい視線を浴び続けていた。
さらに、アルベルト本人も「フローラは何もできない」と嘲ったわりには、まともな政務を行っていない。彼は若い頃から王子として甘やかされ、実質的に政治に関わることなく過ごしてきた結果、何をどう改革していいかも分からないのだ。
そのため、王国は過去の慣例や旧来的な政治体制に固執する一方で、隣国ラグナ帝国が軍事力・経済力ともに成長を遂げているのを傍観するしかない状況に陥りつつあった。
第二の原因は、王国の 国王夫妻 がすでに高齢で、アルベルトのやり方を強く諫める力がないこと。表立ってはアルベルトをフォローするふりをしているが、実際には「早く王位を譲って安泰な老後を送りたい」と願っているようにも見える。アルベルトの失態を真正面から正そうとせず、曖昧にやり過ごしているうちに、宮廷内の権力闘争や腐敗が加速していた。
かつて「フローラが王太子妃になる」ことで得られるはずだったリヴェール公爵家との政治的安定や、大貴族同士の協力関係は、婚約破棄によって崩れ去ったままだ。そこを立て直すどころか、アルベルトはカトリーナにのぼせ上がって、王国の将来をまるで見ていない状態に陥っている。
第三の原因は、王国とラグナ帝国の間に再燃しつつある国境紛争だ。元々両国の国境付近では衝突が絶えなかったが、ラグナ帝国が近年になって圧倒的な軍事的優位を確立し、その勢いのまま王国との休戦協定を見直そうと仕掛けてきている。
王国は領土や交易路の安全を守る手立てを急いで打たねばならないが、アルベルトには有効な対策を講じる力も意欲もない。大貴族たちは焦燥感を募らせるものの、結局どの勢力も「王太子を説得する」あるいは「クーデターじみた動きをする」など大胆な行為に踏み切れず、刻々と情勢は悪化しているのだった。
そんな王国の事情を表すかのように、リヴェール公爵家もまた、きな臭い動きを見せていた。
公爵本人――つまりフローラの実父は、フローラをラグナ帝国に送り出した当初、「あちらから有利な話を引き出せるかもしれない」と淡い期待を抱いていたものの、その後まったく音沙汰はない。むしろ、こちらが一方的に連絡を送っても、ラグナ帝国からは何の反応も得られない状況が続いていた。
さらに、国内においては「フローラを敵国に渡した公爵家は失敗だったのでは」「結局、アルベルトとカトリーナを擁立したがうまくいっていない。ならばフローラを呼び戻したほうがよかったのではないか」などという噂が絶えない。
公爵の継妻や異母妹に至っては、フローラが敵国でどう扱われているのか知らないまま、「まさかこのまま皇太子妃になるなんてあるわけない」「身ぐるみ剥がされて、遠からず王国に戻ってくるわよ」などと侮っていた。だが、実際にフローラから戻ってくる連絡は一切なく、逆に不安ばかりが募っている。
誰もが、この王国の行く末にうっすらと暗い影を感じ始めていた。しかし、アルベルトも公爵も、その本質的な危機に向き合おうとせず、曖昧なまま時間を浪費する。
――そして、ある出来事をきっかけに、王国はラグナ帝国に対して「和平交渉」という名目で“哀願”を迫らざるを得ない状況へと転がり落ちるのだった。
一方、その頃の王国では、あからさまな混乱が広がっていた。
第一の原因は、王太子 アルベルト とその正妃に迎えられた カトリーナ の無能ぶりが、すでに目に余る状態になっていたことだ。
アルベルトは表向きこそ「新しい王太子妃を得た」「フローラを捨ててカトリーナを選んだ」と堂々と口にしていたものの、その実態はまったくのデタラメだった。カトリーナは平民出身で宮廷教育もなく、貴族社会のマナーや政治の知識にはまるで縁がない。夜会や行事のたびに失態を繰り返し、王侯貴族たちから苦々しい視線を浴び続けていた。
さらに、アルベルト本人も「フローラは何もできない」と嘲ったわりには、まともな政務を行っていない。彼は若い頃から王子として甘やかされ、実質的に政治に関わることなく過ごしてきた結果、何をどう改革していいかも分からないのだ。
そのため、王国は過去の慣例や旧来的な政治体制に固執する一方で、隣国ラグナ帝国が軍事力・経済力ともに成長を遂げているのを傍観するしかない状況に陥りつつあった。
第二の原因は、王国の 国王夫妻 がすでに高齢で、アルベルトのやり方を強く諫める力がないこと。表立ってはアルベルトをフォローするふりをしているが、実際には「早く王位を譲って安泰な老後を送りたい」と願っているようにも見える。アルベルトの失態を真正面から正そうとせず、曖昧にやり過ごしているうちに、宮廷内の権力闘争や腐敗が加速していた。
かつて「フローラが王太子妃になる」ことで得られるはずだったリヴェール公爵家との政治的安定や、大貴族同士の協力関係は、婚約破棄によって崩れ去ったままだ。そこを立て直すどころか、アルベルトはカトリーナにのぼせ上がって、王国の将来をまるで見ていない状態に陥っている。
第三の原因は、王国とラグナ帝国の間に再燃しつつある国境紛争だ。元々両国の国境付近では衝突が絶えなかったが、ラグナ帝国が近年になって圧倒的な軍事的優位を確立し、その勢いのまま王国との休戦協定を見直そうと仕掛けてきている。
王国は領土や交易路の安全を守る手立てを急いで打たねばならないが、アルベルトには有効な対策を講じる力も意欲もない。大貴族たちは焦燥感を募らせるものの、結局どの勢力も「王太子を説得する」あるいは「クーデターじみた動きをする」など大胆な行為に踏み切れず、刻々と情勢は悪化しているのだった。
そんな王国の事情を表すかのように、リヴェール公爵家もまた、きな臭い動きを見せていた。
公爵本人――つまりフローラの実父は、フローラをラグナ帝国に送り出した当初、「あちらから有利な話を引き出せるかもしれない」と淡い期待を抱いていたものの、その後まったく音沙汰はない。むしろ、こちらが一方的に連絡を送っても、ラグナ帝国からは何の反応も得られない状況が続いていた。
さらに、国内においては「フローラを敵国に渡した公爵家は失敗だったのでは」「結局、アルベルトとカトリーナを擁立したがうまくいっていない。ならばフローラを呼び戻したほうがよかったのではないか」などという噂が絶えない。
公爵の継妻や異母妹に至っては、フローラが敵国でどう扱われているのか知らないまま、「まさかこのまま皇太子妃になるなんてあるわけない」「身ぐるみ剥がされて、遠からず王国に戻ってくるわよ」などと侮っていた。だが、実際にフローラから戻ってくる連絡は一切なく、逆に不安ばかりが募っている。
誰もが、この王国の行く末にうっすらと暗い影を感じ始めていた。しかし、アルベルトも公爵も、その本質的な危機に向き合おうとせず、曖昧なまま時間を浪費する。
――そして、ある出来事をきっかけに、王国はラグナ帝国に対して「和平交渉」という名目で“哀願”を迫らざるを得ない状況へと転がり落ちるのだった。
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