『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚

文字の大きさ
20 / 24

21話:秘書課の中心としての新たな一歩

しおりを挟む
21話:秘書課の中心としての新たな一歩

椎名理香の降格処分が正式に発表されてから、もう数週間が経っていた。
あれほど不穏だった社内の空気はすっかり和らぎ、秘書課にはいつもの活気が戻っている。

その中心にいるのは――相沢結衣だった。

噂と疑念を乗り越えた彼女は、以前にも増して仕事に情熱を注ぎ、
「西園寺蓮を支える秘書」としての自覚を強く持つようになっていた。


---

■ 秘書課に頼られる存在へ

「相沢さん、この書類お願いしてもいい?」

長谷川が迷いなく声をかけてくる。
その響きには、以前よりもずっと“信頼”がこもっていた。

「もちろんです。すぐ対応しますね。」

結衣が返す笑顔は、どこか自信を帯びている。

資料作成、スケジュール管理、会議準備――
どれも一つひとつが丁寧で、無駄がない。
結衣の仕事ぶりは、秘書課の標準を一段も二段も引き上げていた。

「相沢さんってさ、前から誠実だったけど……最近はすごいよね。」

「うん、社長の動きを一番理解してるのって、たぶん相沢さんだよ。」

そんな声が自然と耳に届くようになった。


---

■ 西園寺蓮が見せる“変化”

その日の午後。
社長室から蓮が姿を見せ、結衣のデスクまでまっすぐ歩み寄った。

「相沢、例のプロジェクトの進捗は?」

蓮の目が結衣を捉えた瞬間、
柔らかく、しかし確かな信頼が宿る。

「こちらが最新のスケジュールです。予定どおり進行しています。」

手渡された資料に目を通しながら、蓮は静かに言った。

「――完璧だ。いつも助かっている。」

その自然な感謝に、結衣の胸が温かくなる。

「社長の期待に応えられるよう、これからも努めてまいります。」

蓮はふっと微笑み、ほんの一瞬だけ彼女を見つめた。
その短い視線が――結衣の心をざわつかせた。


---

■ 社外での評価も変わる

ある日、重要取引先との会議が行われた。

蓮のプレゼンは圧倒的で、場を掌握する力に満ちていた。
結衣は資料配布、タイムキープ、質疑応答のサポートなどを完璧にこなす。

会議後、取引先の担当者が結衣に話しかけた。

「相沢さん、あなたのサポートは非常に優秀ですね。
西園寺社長があれほどスムーズに話せるのは、あなたの力があってこそでしょう。」

「ありがとうございます。社長の力になれるよう日々努力しています。」

結衣が丁寧に答えると、蓮は横から低く言った。

「彼女がいなければ、今日の会議は成立しなかった。」

その言葉に、結衣の頬は熱を帯びた。
蓮は一言だけ結衣に向かって言う。

「よくやった。」

その声は、誰よりも優しかった。


---

■ 静かな夜、結衣が見つけた答え

夜遅く。
秘書課にはもう誰の姿もない。

結衣は翌日のスケジュールを確認しながら、
ふと手を止めて、小さく息を吸った。

――自分がここまで変われた理由。

噂に泣き、疑いに傷つき、それでも立ち上がれた理由。

「……社長が、信じてくれたから。」

蓮の言葉ひとつ、視線ひとつが、
結衣を支え、強くしてくれた。

胸が熱くなり、結衣はそっと目を閉じる。

「もっと……蓮社長の力になりたい。」
それは、もう隠しきれない願いだった。


---

■ 秘書課朝礼――公式の評価

数日後。
秘書課の朝礼で、課長が全員を前にして言った。

「相沢さんには、これから秘書課の中心としてさらに活躍してもらいます。
彼女の姿勢と働きは、皆の良いお手本になるはずです。」

一瞬、場が静まり――
すぐに温かい拍手が広がった。

結衣は驚き、そして心の底から嬉しかった。

「これからもよろしくお願いします!」

深く頭を下げると、長谷川がにっこり笑って言った。

「頼りにしてるよ、相沢さん。」

その声は、祝福そのものだった。


---

■ 秘書課の中心へ――そして蓮のそばへ

こうして結衣は、公式に“秘書課の柱”として認められた。

仕事への誇り。
蓮との信頼関係の深まり。
芽生えた想いの確信。

それらが彼女の背を押していた。

そして――
蓮のそばで働く中で、結衣の胸に宿った感情は
静かに、確かに、深まっていくのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

数合わせから始まる俺様の独占欲

日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。 見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。 そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。 正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。 しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。 彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。 仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。

君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

松本ユミ
恋愛
デザイン事務所で働く伊藤香澄は、ひょんなことから副社長の身の回りの世話をするように頼まれて……。 「君に好意を寄せているから付き合いたいってこと」 副社長の低く甘い声が私の鼓膜を震わせ、封じ込めたはずのあなたへの想いがあふれ出す。 真面目OLの恋の行方は?

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして

七転び八起き
恋愛
社畜として働く女、川崎七海(なみ)は居酒屋でイケメン大学生店員、林勇凛(ゆうり)と出会う。 彼は私と恋がしたいと言った。 恋なんてしてる余裕はない七海。 ──なのに その翌日、私たちは夫婦になっていた。 交際0日婚から始まるラブストーリー。

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

処理中です...