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4-3 SP体操服地獄回、体育の時間に限界突破
しおりを挟む「……え?」
目の前の黒板に書かれた文字を見て、未来は一瞬目を疑った。
『今日の体育:50m走 → 障害物リレー』
そして、それに続くひと言が、さらに彼女の心を凍りつかせる。
『※グループ分け済:3人1組』
「……3人1組……ってことは……」
「はい! 未来さんと同じチームになっております!」
「よろしくお願いします、お嬢様」
――その両脇に立つのは、当然のように真田真子と服部倉子だった。
未来は思わず叫んだ。
「だからなんで毎回毎回、そんな自然な流れで入ってくるの!?」
「任務ですから」
「仕事ですので」
「いやもう、これ体育の授業だよ!? どう考えても任務じゃないよね!? むしろ“羞恥プレイ”だよね!?」
着替えの時間。
女子更衣室の片隅、未来はロッカーに体操服を押し込みながら、ふたりを見た。
「ねぇ、ほんとに……着るの?」
「はい。生徒として授業に出るのは当然です」
「ま、まだ抵抗はありますが……逃げたらクビになりそうなので……」
真子はぶかぶかの半袖体操服に身を包み、まだ制服よりは“いけそう”だった。
問題は――
「倉子さん、それ……サイズ合ってないどころか、露出の圧がすごい……」
「指定サイズのMです」
「身体がMじゃないからぁぁぁぁ!!」
倉子はピッタリとフィットした半袖シャツとブルマ風ショートパンツを装備していた。
全体的に仕立ての良すぎる身体が強調され、もはや“体育教師がふざけて生徒のジャージを借りてみた”レベルの違和感が漂っていた。
「……ちょっと、さすがにこれは……犯罪の香りがするよ……」
「ギリギリ合法です」
「ギリの問題じゃないから!!」
そしてグラウンド。
未来の願い虚しく、彼女たちは並んで立っていた。
クラスメイトの視線が一斉に集まる。
「……え、あの転入生……本当に走るの……?」
「っていうか、あの人ヤバくない? なんか筋肉のバランスが一般人じゃない……」
「明らかに教官か何かだよね……?」
「目立たないでって言ったのにぃぃぃぃ!!」
未来はグラウンドの真ん中で膝をつきたい衝動を必死で堪えていた。
しかも、コーチ役の体育教師が妙に乗り気だった。
「おーし! 今日は記録計るぞー! お前ら気合い入れろよ! 特に転入生! お前らの本気見せてみろ!」
「見せちゃダメぇぇぇぇ!! “本気”を出したら色々終わるぅぅぅ!!」
未来の叫びもむなしく、50m走が始まる。
「位置について――よーい……ドン!」
ピストルの音と共に、3人1組のチームが順番に走り始める。
そして――
「……は?」
教師がタイムを読み上げて、絶句した。
「い、今の……6秒……切った……?」
「走った……? ていうか……跳ねた……よね……?」
――それは、倉子だった。
直線を走るというより、**地面を“蹴って飛ぶ”**ようなフォーム。
軽やかで無駄のない動作は、明らかに陸上選手のそれだった。
「次、真田」
「ひぃぃ……やります、やりますけど……!」
こちらも驚異のスピードで駆け抜けたが、倉子よりはまだ“人間らしさ”が残っていた。
未来はそのあと、いつも通りの“平凡な女子高生の走り”でゴールした。
だがそれが逆に目立ってしまう。
「有川さん、めっちゃ遅く見えるけど……普通に速くない?」
「っていうかあの二人が速すぎるんだよ!」
「なに? なに? このクラスの平均速度おかしくない!?」
未来は、見事に**“足を引っ張るチームメイト”**の扱いを受けることになった。
「くっ……これが……SPの実力……!」
「お嬢様、お怪我がなくてよかったです」
「よくないから!! 精神的ダメージMAXです!!」
その後の障害物リレーでも、ふたりは安定の“本気モード”を発揮。
ハードルは飛び越えず、“手を使わずに跳躍”。
網くぐりでは「頭を使って省エネルートを発見」し、マットの上では「完璧な前転→バク転着地」まで披露した。
未来のクラスメイトたちは、もはや“驚き”を通り越して、“呆れ”と“納得”の目で彼女たちを見ていた。
「なるほどね……うん、やっぱ普通の転校生じゃないよね」
「でも、だとしたらあの未来って……」
――そして未来は、耐え切れずにトイレに逃げ込んだ。
個室の中、便座に座り込んで天井を見上げる。
「……神様……せめてジャージにしてください……あのふたりの半袖体操服は……見てるこっちがキツいです……」
その声は、天に届いたかどうか分からない。
けれど、その日の夕方。
「お嬢様、来月の体育はジャージ着用期間に入るそうです」
「やったぁぁぁぁぁあ!!」
嬉々として叫ぶ未来の声が、校舎の廊下にこだましたという。
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