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第三章:氷の令嬢、王宮の晩餐会で微笑む
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それから数時間後。
夜の帳が降り始めた頃、いよいよ王宮の大広間で晩餐会が開かれる。ヨーロピアン風の豪奢なシャンデリアが天井にいくつも吊るされ、床は鏡のように磨き上げられている。壁際には高級家具が並び、歴代の王や女王の肖像画が厳かに飾られていた。
国内外の賓客、そして貴族たちが次々と入場し、オーケストラの演奏が始まるころには、会場は華やかな喧騒に包まれていた。
王太子エドワードは、いつもの軍服風の正装を身にまとい、胸を張って壇上に立つ。隣にはシエナが控え、まるでアイドルのように手を振っている。
ヴァレリーは会場の端のほうに控え、できるだけ目立たないようにしていたが、周囲の人々がやたらと彼女に視線を送ってくるのを感じる。
――「あれが噂の公爵令嬢か……」
そんな声が聞こえてくるかのようだ。だが、それも仕方ない。いまや王太子に捨てられた被害者として、あるいは違約金をせしめた公爵家として、彼女は何かと注目されているのだ。
やがて、エドワードが魔道具を手に、声を張り上げる。
「皆様、本日はこのようにお集まりいただき、ありがとうございます。ささやかではありますが、我々が用意した晩餐をご堪能いただきながら、盛大に親睦を深めていただければ幸いです」
会場から拍手が起こる。
続けて彼は、傍らにいるシエナへ手を差し出した。彼女はにこやかに応え、その手を握る。
「そして本日は、特別な儀式を用意しております。私の最愛の聖女シエナが、皆様に神の恵みをもたらすべく、ここで奇跡を披露してくださるのです!」
どよめきが起こる。ざわつく会場の中で、ヴァレリーは眉をひそめた。
「やはり、何かパフォーマンスをする気なのね……」
シエナは胸の前で手を合わせ、まるで祈りを捧げるような格好をとる。彼女が合図すると、従者らしき人物が壇上に祭壇のようなものを運んできた。どうやら、そこに聖水を満たした杯が用意されているらしい。
「皆さま……どうか、お静かに……。いまより、神の御業をご覧にいれましょう……」
オーケストラが一旦演奏を止め、会場は張り詰めた空気に包まれる。
王太子は「さあ、見守って」とばかりに意気揚々とシエナの肩を支えている。
シエナは目を閉じ、やがて低い声で何か呪文めいた言葉をつぶやき始めた。会場の照明が微かに揺れるように見えるが、これは演出なのか、単なる偶然か――傍目には区別がつかない。
次の瞬間、彼女は大きく両腕を広げ、声高に叫ぶ。
「これが……神の力ですわッ!」
その瞬間、ぱぁん、という音がして、壇上の祭壇に置かれていた杯から水しぶきが飛び散った。会場の前列にいた貴族たちが思わずのけぞる。
驚きの声が上がるが、すぐに誰かが小さく呟いた。
「……ただの水じゃないか?」
夜の帳が降り始めた頃、いよいよ王宮の大広間で晩餐会が開かれる。ヨーロピアン風の豪奢なシャンデリアが天井にいくつも吊るされ、床は鏡のように磨き上げられている。壁際には高級家具が並び、歴代の王や女王の肖像画が厳かに飾られていた。
国内外の賓客、そして貴族たちが次々と入場し、オーケストラの演奏が始まるころには、会場は華やかな喧騒に包まれていた。
王太子エドワードは、いつもの軍服風の正装を身にまとい、胸を張って壇上に立つ。隣にはシエナが控え、まるでアイドルのように手を振っている。
ヴァレリーは会場の端のほうに控え、できるだけ目立たないようにしていたが、周囲の人々がやたらと彼女に視線を送ってくるのを感じる。
――「あれが噂の公爵令嬢か……」
そんな声が聞こえてくるかのようだ。だが、それも仕方ない。いまや王太子に捨てられた被害者として、あるいは違約金をせしめた公爵家として、彼女は何かと注目されているのだ。
やがて、エドワードが魔道具を手に、声を張り上げる。
「皆様、本日はこのようにお集まりいただき、ありがとうございます。ささやかではありますが、我々が用意した晩餐をご堪能いただきながら、盛大に親睦を深めていただければ幸いです」
会場から拍手が起こる。
続けて彼は、傍らにいるシエナへ手を差し出した。彼女はにこやかに応え、その手を握る。
「そして本日は、特別な儀式を用意しております。私の最愛の聖女シエナが、皆様に神の恵みをもたらすべく、ここで奇跡を披露してくださるのです!」
どよめきが起こる。ざわつく会場の中で、ヴァレリーは眉をひそめた。
「やはり、何かパフォーマンスをする気なのね……」
シエナは胸の前で手を合わせ、まるで祈りを捧げるような格好をとる。彼女が合図すると、従者らしき人物が壇上に祭壇のようなものを運んできた。どうやら、そこに聖水を満たした杯が用意されているらしい。
「皆さま……どうか、お静かに……。いまより、神の御業をご覧にいれましょう……」
オーケストラが一旦演奏を止め、会場は張り詰めた空気に包まれる。
王太子は「さあ、見守って」とばかりに意気揚々とシエナの肩を支えている。
シエナは目を閉じ、やがて低い声で何か呪文めいた言葉をつぶやき始めた。会場の照明が微かに揺れるように見えるが、これは演出なのか、単なる偶然か――傍目には区別がつかない。
次の瞬間、彼女は大きく両腕を広げ、声高に叫ぶ。
「これが……神の力ですわッ!」
その瞬間、ぱぁん、という音がして、壇上の祭壇に置かれていた杯から水しぶきが飛び散った。会場の前列にいた貴族たちが思わずのけぞる。
驚きの声が上がるが、すぐに誰かが小さく呟いた。
「……ただの水じゃないか?」
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