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第四章:偽りの聖女、そして真実の結婚
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王宮に張りつめた空気は、前日よりもさらに重くなっていた。
廊下を行き交う侍従たちは足音を忍ばせ、重臣たちは互いの表情を探るように視線を交わす。
誰もが理解している――今日、何かが決まる。
王の私室に、主要な重臣たちが集められたのは、午前の早い時間だった。
呼び出しの理由を、あえて口にする者はいない。だが、その沈黙こそが、事態の深刻さを物語っていた。
玉座ではなく、簡素な椅子に腰掛けた王は、いつもより一段と老いて見えた。
長年、国を治めてきたその背中には、疲労と迷いが滲んでいる。
「……報告は、すでに受けておる」
低く、かすれた声が室内に響く。
「聖女シエナが偽りであり、闇の術を用いていたこと。
外国勢力と通じ、王都を混乱に陥れたこと。
そして――それを見抜けず、止められなかった者がいることも、だ」
その言葉に、重臣たちは一斉に頭を垂れた。
誰もが、次に続く言葉を待っている。
沈黙を破ったのは、老練な宰相だった。
「陛下。恐れながら申し上げます。
今回の件は、王太子殿下の資質そのものが問われる事態でございます」
慎重に選ばれた言葉。
だが、その意味はあまりにも明確だった。
「王太子殿下は、個人的な感情に流され、虚偽を見抜くことができず、
結果として国民の命と安全を危険に晒されました。
これは……次期国王として、看過できる過失ではございません」
王はゆっくりと目を閉じた。
宰相の言葉を否定する理由は、どこにもなかった。
別の重臣が続ける。
「すでに王太子派の貴族は瓦解しております。
このまま殿下を継承者として残せば、国内外に弱体を示すことになりましょう」
誰も、エドワードを庇おうとはしなかった。
それ自体が、すでに答えだった。
長い沈黙の後、王は深く息を吸い、そして吐いた。
「……わしは、父として失格かもしれぬな」
その言葉に、重臣たちは息を呑む。
「だが、王としては――この国を守らねばならぬ」
王は、静かに、しかし揺るぎない声で告げた。
「王太子エドワードを、王位継承権から外す。
即刻、廃嫡とする」
それは、感情ではなく、責任として下された決断だった。
室内に広がる沈黙は、やがて深い安堵へと変わっていく。
誰も声を上げない。
だが、誰もが理解していた――これ以上に妥当な結論はない、と。
廃嫡の決定は、即日、王宮内に通達された。
表向きは「健康上の理由」とされ、詳細は伏せられる。
だが、貴族社会では瞬く間に真相が共有された。
――王太子は、自らの愚かさで王位を失った。
エドワード本人は、その決定を知らされたとき、何の反応も示さなかったという。
呆然と虚空を見つめ、ただ一言。
「……そうか」
それだけだった。
もはや怒りも、反論もない。
彼の中で、何かが完全に壊れてしまっていた。
一方、王宮の別の場所では、第二王子が静かに呼び出されていた。
王は彼に向き直り、ゆっくりと告げる。
「……お前が、次だ」
第二王子は一瞬、目を伏せ、そして深く頭を下げた。
「身に余る大任ですが……陛下のご期待に背かぬよう、全力を尽くします」
その姿に、王はわずかに安堵の色を浮かべたという。
こうして、王国の行方は定まった。
もはや揺らぐことはない。
そしてこの決断の裏で、
静かに評価を高めていた存在がある。
ヴァレリー・リチャードソン。
彼女が感情に溺れず、冷静に身を引き、
そして正しい側に立ったことが、
結果としてこの国を救った。
誰もそれを公には語らない。
だが、王宮の奥深くでは、すでに共通認識となっていた。
――彼女は、間違えなかった。
そして次に動くのは、
「公的な婚姻」という名の、新たな一手である。
廊下を行き交う侍従たちは足音を忍ばせ、重臣たちは互いの表情を探るように視線を交わす。
誰もが理解している――今日、何かが決まる。
王の私室に、主要な重臣たちが集められたのは、午前の早い時間だった。
呼び出しの理由を、あえて口にする者はいない。だが、その沈黙こそが、事態の深刻さを物語っていた。
玉座ではなく、簡素な椅子に腰掛けた王は、いつもより一段と老いて見えた。
長年、国を治めてきたその背中には、疲労と迷いが滲んでいる。
「……報告は、すでに受けておる」
低く、かすれた声が室内に響く。
「聖女シエナが偽りであり、闇の術を用いていたこと。
外国勢力と通じ、王都を混乱に陥れたこと。
そして――それを見抜けず、止められなかった者がいることも、だ」
その言葉に、重臣たちは一斉に頭を垂れた。
誰もが、次に続く言葉を待っている。
沈黙を破ったのは、老練な宰相だった。
「陛下。恐れながら申し上げます。
今回の件は、王太子殿下の資質そのものが問われる事態でございます」
慎重に選ばれた言葉。
だが、その意味はあまりにも明確だった。
「王太子殿下は、個人的な感情に流され、虚偽を見抜くことができず、
結果として国民の命と安全を危険に晒されました。
これは……次期国王として、看過できる過失ではございません」
王はゆっくりと目を閉じた。
宰相の言葉を否定する理由は、どこにもなかった。
別の重臣が続ける。
「すでに王太子派の貴族は瓦解しております。
このまま殿下を継承者として残せば、国内外に弱体を示すことになりましょう」
誰も、エドワードを庇おうとはしなかった。
それ自体が、すでに答えだった。
長い沈黙の後、王は深く息を吸い、そして吐いた。
「……わしは、父として失格かもしれぬな」
その言葉に、重臣たちは息を呑む。
「だが、王としては――この国を守らねばならぬ」
王は、静かに、しかし揺るぎない声で告げた。
「王太子エドワードを、王位継承権から外す。
即刻、廃嫡とする」
それは、感情ではなく、責任として下された決断だった。
室内に広がる沈黙は、やがて深い安堵へと変わっていく。
誰も声を上げない。
だが、誰もが理解していた――これ以上に妥当な結論はない、と。
廃嫡の決定は、即日、王宮内に通達された。
表向きは「健康上の理由」とされ、詳細は伏せられる。
だが、貴族社会では瞬く間に真相が共有された。
――王太子は、自らの愚かさで王位を失った。
エドワード本人は、その決定を知らされたとき、何の反応も示さなかったという。
呆然と虚空を見つめ、ただ一言。
「……そうか」
それだけだった。
もはや怒りも、反論もない。
彼の中で、何かが完全に壊れてしまっていた。
一方、王宮の別の場所では、第二王子が静かに呼び出されていた。
王は彼に向き直り、ゆっくりと告げる。
「……お前が、次だ」
第二王子は一瞬、目を伏せ、そして深く頭を下げた。
「身に余る大任ですが……陛下のご期待に背かぬよう、全力を尽くします」
その姿に、王はわずかに安堵の色を浮かべたという。
こうして、王国の行方は定まった。
もはや揺らぐことはない。
そしてこの決断の裏で、
静かに評価を高めていた存在がある。
ヴァレリー・リチャードソン。
彼女が感情に溺れず、冷静に身を引き、
そして正しい側に立ったことが、
結果としてこの国を救った。
誰もそれを公には語らない。
だが、王宮の奥深くでは、すでに共通認識となっていた。
――彼女は、間違えなかった。
そして次に動くのは、
「公的な婚姻」という名の、新たな一手である。
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