婚約お断り令嬢ですわ ~奇行で縁談を潰していたら本命騎士に再会しました~

鍛高譚

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19話

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 日々続く“賛美の歌”要求、心の準備を試される

それからというもの、アレクシオス殿下はことあるごとに私を呼び出しては、**“賛美の言葉”**を求めるようになった。
その日のうちに私が王城に赴けない場合は、書簡で「早く私を讃える詩を書いて送れ」と催促してくるほど。

「……面倒くさ……いえ、失礼しました、サラ」

私が愚痴をこぼすと、侍女のサラは苦笑いを浮かべて肩をすくめる。
「でもお嬢様、これはある意味チャンスかもしれませんよ。
 王子殿下はナルシストと噂されていますが、それならば“狙った形で怒らせる”こともできるのでは?」

「……ええ、私もそう思う。
 殿下の自尊心を満たすフリをしつつ、さりげなく嫌味を織り交ぜてみたり、ちょっとした挑発をしてみるとか……」

当面は、王子の“賛美の歌”要求に大人しく応じながら、その中で少しずつ王子の神経を逆撫でする表現を入れてみる。
“わからない人にはわからないが、当人が敏感ならカチンと来る”ような言い回しを意図的に潜ませるのだ。

(うまくいけば、王子自らが「こんな女は侮辱的だ、婚約解消だ!」と叫んでくれるかもしれないわね)

とはいえ、まだ殿下の逆鱗に触れるほどの文言を入れるにはリスクが高い。
やり方を誤れば、私だけでなく公爵家も国家への反逆とみなされかねない。

「……慎重に、ちょっとずつ刺激を加えていかないとね。
 そして、決定的な場面で一気に爆発させる。
 それも、人前で。絶対に取り返しのつかない形で、アレクシオス殿下の自尊心をズタズタにしてあげる……!」

自分の口から出た言葉に、自分で驚く。
まるで悪役の策略みたいだが、ここまでしなければ“私の幸せ”は守れない。

「お嬢様、覚悟はよろしいですか?」

サラが問いかける。その瞳には、私を心配する気持ちが色濃く宿っている。

「ええ、もちろん。……私には、どうしても譲れない想いがあるから。
 このまま王子に振り回されて、誰かの操り人形として生きるなんて耐えられないわ」

その“譲れない想い”――それは、かつて私の命を救ってくれた平民の青年……エドガーへの気持ち。
彼といまだ大きな進展があるわけではないが、私はいつか必ず、彼にこの想いを伝えたいのだ。

(そのためにも、こんな婚約は絶対にイヤ……。
 私だって、ただ従うだけの人形じゃない。恋も人生も、自分で選ぶんだから……!)

――そう誓いを新たにし、私は次に訪れるであろう“舞踏会”を、決戦の舞台に据えることにした。
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