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第3章――動き出す日常と、変わりゆく想い
11話
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淡い朝の光が、レースのカーテン越しに差し込んでくる。私はいつものようにゆっくりと目を開け、少し伸びをしてみた。大人の身体にまだ慣れきっていない私にとって、朝のストレッチは日課になりつつある。
目覚めてからというもの、体調は日に日に良くなっている。リハビリの効果もあってか、簡単な散歩や階段の上り下り程度なら、そこまで苦労を感じなくなってきた。
――だけど、心はまだ不安定だ。
ベッドから起き上がり、鏡の前に立つ。長く伸びた髪をサラに手伝ってもらいながらまとめる習慣も、だいぶ板についてきた。もともと髪は長めだったけれど、10年分伸び切ってしまった髪の扱いに、最初は苦労したものだ。
「アーシア様、おはようございます。今日はよく眠れましたか?」
いつも通り、部屋をノックしてから入ってきたサラが明るい声をかけてくれる。私も鏡越しに微笑み返す。
「おはよう、サラ。昨日はぐっすり眠れたよ。……最近は、少しずつ寝付きが良くなってきたみたい」
「それはよかったです。前は、夜更けまでいろいろ考え込んでいらしたから……やはり、リリアナ様とレオン様、それぞれとお話をして、一旦気持ちの整理がついたのかもしれませんね」
そう言われると、少し照れくさくなる。確かに、私はリリアナとの率直な対話や、レオンからの「きちんと向き合いたい」という言葉を受け、心に何か変化を感じている。
――答えはまだ見つからない。けれど、もう一歩踏み出す勇気は湧いてきた。
サラは手際よく私の髪をまとめ、柔らかな布で頭を覆ってくれた。
「さて、本日もリハビリの予定がございますが、その前に……ロウェル伯爵ご夫妻が、アーシア様に少しお話があると仰っていました。朝食後に応接室へお越しくださいとのことです」
「お父さまが? 何だろう……また検査の話とかかしら」
首をかしげる私に、サラは小さく肩をすくめて微笑んだ。
「さあ、私も詳しくは。ですが、アーシア様が体力を取り戻されてきたので、そろそろお披露目の場……いえ、社交的な集まりのお話ではないかと使用人の間では噂です」
「社交的な集まり……」
子供の頃、私は貴族の子女として最低限の礼儀作法を習っていた。でも、それが通用するのはせいぜい10歳までの知識。大人になった身として、社交界の場に立つことなど想像もつかない。
「そういえば、私の同年代の人たちはもう、とっくに社交界に出ているんだよね……。10年というブランク、どう取り戻せばいいんだろう」
不安げに呟く私を、サラは明るい声で励ましてくれる。
「大丈夫ですよ。アーシア様には十分な素養がありますし、きちんとお母さまと私どもがサポートいたします。何より、無理に正式な大きいパーティーに出るわけではないでしょう。まずは小さな集まりから……というのが定石ですから」
「そっか……。そうだといいんだけど……」
深呼吸をして、鏡に映る自分の姿を見つめる。子供の頃の顔立ちのまま成長したとはいえ、やはり見慣れない“大人の女性”がそこにいる。
――私は、本当にこの姿で社交界を歩けるのだろうか。
朝の不安を抱えつつも、私はサラの助けで身支度を整え、一度ダイニングで軽い朝食を摂ってから、両親の待つ応接室へと向かった。
目覚めてからというもの、体調は日に日に良くなっている。リハビリの効果もあってか、簡単な散歩や階段の上り下り程度なら、そこまで苦労を感じなくなってきた。
――だけど、心はまだ不安定だ。
ベッドから起き上がり、鏡の前に立つ。長く伸びた髪をサラに手伝ってもらいながらまとめる習慣も、だいぶ板についてきた。もともと髪は長めだったけれど、10年分伸び切ってしまった髪の扱いに、最初は苦労したものだ。
「アーシア様、おはようございます。今日はよく眠れましたか?」
いつも通り、部屋をノックしてから入ってきたサラが明るい声をかけてくれる。私も鏡越しに微笑み返す。
「おはよう、サラ。昨日はぐっすり眠れたよ。……最近は、少しずつ寝付きが良くなってきたみたい」
「それはよかったです。前は、夜更けまでいろいろ考え込んでいらしたから……やはり、リリアナ様とレオン様、それぞれとお話をして、一旦気持ちの整理がついたのかもしれませんね」
そう言われると、少し照れくさくなる。確かに、私はリリアナとの率直な対話や、レオンからの「きちんと向き合いたい」という言葉を受け、心に何か変化を感じている。
――答えはまだ見つからない。けれど、もう一歩踏み出す勇気は湧いてきた。
サラは手際よく私の髪をまとめ、柔らかな布で頭を覆ってくれた。
「さて、本日もリハビリの予定がございますが、その前に……ロウェル伯爵ご夫妻が、アーシア様に少しお話があると仰っていました。朝食後に応接室へお越しくださいとのことです」
「お父さまが? 何だろう……また検査の話とかかしら」
首をかしげる私に、サラは小さく肩をすくめて微笑んだ。
「さあ、私も詳しくは。ですが、アーシア様が体力を取り戻されてきたので、そろそろお披露目の場……いえ、社交的な集まりのお話ではないかと使用人の間では噂です」
「社交的な集まり……」
子供の頃、私は貴族の子女として最低限の礼儀作法を習っていた。でも、それが通用するのはせいぜい10歳までの知識。大人になった身として、社交界の場に立つことなど想像もつかない。
「そういえば、私の同年代の人たちはもう、とっくに社交界に出ているんだよね……。10年というブランク、どう取り戻せばいいんだろう」
不安げに呟く私を、サラは明るい声で励ましてくれる。
「大丈夫ですよ。アーシア様には十分な素養がありますし、きちんとお母さまと私どもがサポートいたします。何より、無理に正式な大きいパーティーに出るわけではないでしょう。まずは小さな集まりから……というのが定石ですから」
「そっか……。そうだといいんだけど……」
深呼吸をして、鏡に映る自分の姿を見つめる。子供の頃の顔立ちのまま成長したとはいえ、やはり見慣れない“大人の女性”がそこにいる。
――私は、本当にこの姿で社交界を歩けるのだろうか。
朝の不安を抱えつつも、私はサラの助けで身支度を整え、一度ダイニングで軽い朝食を摂ってから、両親の待つ応接室へと向かった。
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